~エディターOの読書録~ 立ち読み気分でどうぞ。♯5『女二人のニューギニア』

♯5 『女二人のニューギニア』
有吉佐和子 著 990円/河出文庫
埼玉から福岡に移住して、4年半が過ぎようとしている。土地勘も芽生え、街に対する新鮮味は薄れてきたものの、心のどこかに「旅の道中」にいるような感覚が残っているのも事実だ。だからだろうか、福岡を離れて地元へ帰省すると、途端に旅情が掻き立てられるのを感じる。元来の旅好き、移動好きな性分が、ホームタウンに戻ることで顔を出すのだ。それ自体に大きな問題はないのだが、帰省時に友人に会うと、片っ端から「旅行に行こう」と誘ってしまうものだから、福岡に戻ってからが大変である。その気になった友人から「旅行のことだけど」と連絡が入る頃には、誘った当人はすっかり旅心を失っているのだから…。移り気な友(私)を持ってしまった幼馴染各位には、心の底から同情を寄せたい。ごめ〜ん。
だがしかし、今年の私は一味違う。去る年末年始の帰省を終えてもなお、旅への意欲が衰えていないのだ。その背景には、年始に出合った一冊の影響が大きいだろう。

『女二人のニューギニア』は、小説家・有吉佐和子によるニューギニア滞在記である。時は1968年。当時36歳ですでに売れっ子作家だった有吉を、ニューギニア奥地のヨリアピへ誘ったのは、現地でフィールドワークを行っていた文化人類学者であり友人の畑中幸子氏だった。「ニューギニアは、ほんまにええとこやで、有吉さん」。そんな言葉に好奇心を刺激され、旅先の地理や文化をろくに調べることもなく、彼女は旅を決めてしまう。目的地へはセスナを降りた後、道なきジャングルを三日間歩き続けなければたどり着けないこと。ヨリアピの狩猟民族にとって、人間の女性は野豚三頭と同価値であること——そうした至極重大な事実を、有吉は現地に着いてから初めて知るのである。 「なぜ誰も止めてくれなかったのか」と嘆きながらジャングルを歩き、ついには「仕留めた野豚をかつぐのと同じ要領で担ぎ上げられ」て目的地を目指す様子は、さながら冒険譚のようで驚きの連続だ。ヨリアピでの一カ月間に及ぶ二人の生活の記録。唐突な別れ、そして帰国後に待ち受ける波乱——。
「事実は小説より奇なり」という言葉は、まさにこの本のためにあるのではないかと思うほどの珍道中である。読み終えたとき、文明と情報に覆われた現代人の心の奥で、眠っていた冒険心が目を覚ますはずだ。
さて、多大な冒険心を秘めるに至った現在の私だが、今のところジャングルの奥地へ誘い出してくれそうな知人はいない。それどころか、年始の帰省時に自ら蒔いた種が芽吹き、今年中に異なる友人と三度ほど沖縄へ赴くことになりそうである。なぜ埼玉の友人は、こうもそろって沖縄を目指すのか。面識のない友人同士の親交をどうにか深め、ツアー形式の旅行に仕立てられないものかと思案しているところである。
●エディターO 千葉県千葉市出身、埼玉県川越市育ち。’21年に突如思い立って福岡へ移住し、シティ情報ふくおかに入社。地元では電車移動の機会が多く乗車時間も長いため、読書がはかどります。通学に往復3時間を要していた大学時代、寝てばかりいないでもっと本を読めばよかった…
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