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【福岡ラーメン物語 のぼせもん|58杯目 博多文福】

「日本の食文化をラーメンで表現したい。そのラーメンを持って海外に行きたいんです」

人生にはいくつもの出逢いと別離がある。そしてそれによって人生が決まることがある。格好良い先輩との出逢いと、かわいい後輩との別離。人生とは偶然と必然によって紡がれていくものなのかも知れない。

 

博多文福

島津 智明(Tomoaki Shimazu)

1980年、 福岡県大野城市生まれ。学生の時に『博多一風堂』ヘアルバイトとして入り、その後社員へ。店長、マネージャーを歴任し国内外の立ち上げや商品、業態開発などで尽力。 2021年に退職し『博多文福』を創業。

 

福岡には味噌ラーメンの専門店が数えるほどしかない。言うまでもなく古くから豚骨ラーメンが日常食として愛されている街であり、そこで味噌ラーメンを出すというのは勇気が要ることだ。

春日市の県道沿いに新しく出来た『博多文福』は、味噌ラーメンの専門店。古民家を改装した店舗に入れば、信楽焼の狸がお出迎え。スタイリッシュな雰囲気の中で、にこやかに接客をしながらラーメンを作る店主の島津智明さん。若い頃は音楽の夢を追いかけていた。

「高校を卒業してから音楽の専門学校に通って、ドラムを叩いていました。その時にアルバイトとして入ったのが『一風堂』だったんですが、そこで出会った大人たちが生き生きと働いていて、ものすごく格好良く見えたんですよね」。

『かしわ飯セット』(200円)/手作りの蒸したて焼売とかしわ飯のおにぎりのセット。ラーメンの味を邪魔しないよう優しい味付けになっている。それぞれ単品でもオーダーは可能だ

音楽をやりながら『一風堂』でアルバイトをして2年が経った頃、社員として一緒に働かないかと誘われた。音楽も楽しいしラーメンも楽しい。人生で最初の大きな決断。悩んだ島津さんが出した結論は、ラーメンの世界に飛び込むことだった。

「どっちを選んだら後悔しないだろうか、と真剣に考えました。『一風堂』で働いていて、とても充実感があったんです。ラーメンって一杯で人を笑顔に出来る食べ物じゃないですか。ドラムスティックを麺上げ棒に持ち替えようと思いました」

風味を損なわないように、中華鍋は使わずに敢えて丼の中でスープと味噌を合わせる

どうせやるなら極めたい。格好良い大人になりたい。島津さんは最年少で店長になり、マネージャーになった。国内の店舗を次々と立ち上げ、アメリカニューヨークへ乗り込んだ。さらに韓国や台湾、香港、さらにはオーストラリア、シンガポール、イギリスと、7年半にわたり海外展開の陣頭指揮を執った。『一風堂』を大きく広げて、いつかは独立することが島津さんの夢だった。

丁寧に取ったスープは日々改良を重ねている

しかし、そんな時に海外で苦楽を共にした、一番可愛がっていた後輩が急逝した。それはあまりにも突然の別れだった。

「独立する夢を持っていた彼が亡くなって『人生は長くない』ということを強烈に感じたんです。なぜ独立したいのか、自分の理念は何なのかを自問自答した結果、日本の食文化を自分のラーメンで表現したいと思い、独立を許して貰いました」。

青木食産製の麺は太麺が基本だが、福岡の細麺文化に合わせて細麺も用意。好みで選ぶことが出来る

いずれは海外で自分のラーメンを出したいと考えている島津さんは、日本ならではの食文化である「味噌」を使ったラーメンで勝負しようと決めた。毎日でも食べられるような、老若男女に愛されるような、優しい味わいの味噌ラーメン。

「ラーメンは人と人を繋ぐものだと思うんですよ。自分がゼロから考えたラーメンで、お客様や仲間を笑顔に出来る喜びを日々感じています」。

『味噌らーめん』(800円)/豚骨、鶏ガラの動物系スープに昆布や煮干しなどの和出汁を合わせたダブルスープ。味噌は地元福岡や長崎の他、北海道や信州など5種類の味噌をブレンドして深みを出している

オープンして間もない店ながら常連客もついて来た。家族連れなど幅広い年齢層の人たちがやってくるようになった。島津さんの味噌ラーメンが福岡の人たちの日常に根付きつつある。

「まずはこの店をしっかりとやって、3年以内には海外に行きたいですね。次は僕のラーメンで日本と海外を繋いでいきたいと考えています」。

『こってり味噌らーめん』(850円)/若いお客さんの要望から生まれた新メニュー。通常の味噌らーめんよりも味噌が強く油も多めで、パンチが効いたバランスの一杯が生まれた

 

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●取材を終えて

店主の人柄が反映された味噌ラーメン

店主の島津さんとの出会いは、彼が店長になったばかりの頃なので、今から20年近く前にまで遡ります。22歳で店長になり、25歳でマネージャーに。彼は一風堂の中で次々と最年少記録を更新し続ける若手のホープで、未来の一風堂を率いていくのは彼しかいないと誰もが思っていました。会社を辞める時にも相談を受けたのですが、自分の夢を熱く語る島津さんの姿を見て、20代の頃に熱くお店やラーメンのことを語っていた彼の姿が重なりました。いつも笑顔を絶やさずにこやかで、誰にでも愛される男。それでいてしっかりとした芯があってブレない姿勢。それはまさに彼が作る味噌ラーメンそのものだと思うのです。

【ラーメン評論家 山路力也】
テレビ・雑誌・ウェブなど様々な媒体で情報発信するかたわら、ラーメン店のプロデュースなど、その活動は多岐にわたる。「福岡ラーメン通信」でも情報発信中

 

 

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掲載の内容は取材時のものです。取材日と記事公開日は異なる場合があり、メニューや価格、営業時間、定休日など取材時と異なる場合がありますので、事前に公式HPやお問い合わせにてご確認をお願いします。

 

博多文福

【所】春日市須玖北9-62
【☎】なし
【営】11:00~21:00
【休】水曜
【席】26席
【P】8台
カード/不可
※2階席はインスタグラムのDMにて前日までの要予約。昼夜一組ずつ。

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