【福岡ラーメン物語 のぼせもん|90杯目 長浜市民球場 】
「野球も屋台も楽しめる福岡。 そんな福岡が大好きなんです」
大阪で生まれた男が福岡に魅せられた。玄界灘の潮風に鍛えし球場の熱狂に負けじと、長浜の夜風が抜ける場所に屋台を構えた。ドームに負けない歓声と興奮を。今夜も 長浜 に「プレイボール!」の声がこだまする。

『長浜スタミナラーメン』 (850円) / 店主の出身である関西の『スタミナラーメン』 をイメージしたオリジナルの ラーメン。ピリ辛のスープには野菜の甘味が溶け込んでまろやかな味わいに。 飲んだ締めにピッタリの一杯だ

「屋台の期間が終わった後のことはまだ考えていませんが、 ホークスも福岡も大好きなので、きっと福岡にいると思います。 この長浜やドームのある百道エリアはゴミゴミしてなくて落ち着いた地域なので好きですね」
長浜市民球場
店主 松清貴広 /Matsukiyo Takahiro
1978年大阪府大阪市生まれ。アルバイトから飲食の世界に入り、その後東京でマッサージ店を起業。数店舗展開したのちに福岡へ移住。 2022年に福岡市の屋台公募に応募して合格。 2023年、復活した「長浜屋台街」で『長浜市民球場』を創業する
長浜ラーメン発祥の地、長浜。 魚市場で働く人たちのために作られたラーメンが人気を集め、 市場周辺には多くの屋台が軒を連ねていた。その後、店主の高齢化や事業継承が出来ないことから屋台の数は激減。長浜の屋台は風前の灯となっていた。
その後「長浜の屋台を再び盛り上げたい」という思いを持った多くの人たちが、市の屋台事業者の公募に名乗りを挙げ、屋台周辺の環境 なども整備されて、2023年6月 『長浜屋台街』は復活を果たした。

長浜市民球場
【所】福岡市中央区長浜3-14【☎】070-4342-3363【営】 18:00~翌1:00
【休】不定 【席】12席 【P】 なし カード/不可、QRコード決済可
「プレイボール!」 屋台には似つかわしくない掛け声で乾杯をしている『長浜市民球場』は、2023年 に新たに開業した屋台の一つ。ホークスのユニフォーム姿で店を仕切る店主の松清貴広さんも、長浜の屋台街の賑わいを取り戻したいと、 事業者公募に応募した一人だ。

「長浜の屋台は野球を観に来た時 に良く来ていたんです。どんどん屋台の数が減ってきて寂しくなって、 なんとか出来ないかと未経験なが らも応募したら受かってしまって、 屋台を始めることになりました」。
大阪生まれ大阪育ちの松清さんと福岡を結びつけたのはプロ野球 のホークスの存在だ。ホークスが福岡のチームになったのは今から36 年前のこと。その前は大阪のチーム だったということもあり、大阪には 今も多くの熱狂的なホークスファンがいる。松清さんも小学生の頃か らのホークスファン。年に何度も応援のために福岡を訪れ、福岡の魅力 に惹かれて40歳になるまでには福岡へ移住すると決めていた。「28歳の時に東京でマッサージ店を起業して店舗展開もして順調だったんです。その後同業者も増えて厳しくなってきた時に震災が来て、そろそろ潮時かなと計画よりも前倒しして38歳の時に福岡に来ました」。

「屋台は設営や準備、片付けが大変なので、 楽しいというよりもまだ大変さの方が勝るかもしれませんね。ドームで試合のある日は基本的に屋台は開けていますので、試合帰りにぜひ長浜の屋台に立ち寄っていただきたいですね」
屋台が決まった松清さんは、大阪 の鉄板焼き店で修業した。修業先の店主もホークスファンで長浜の屋台で知り合った。営業で使っている年季が入った屋台も、松清さんが常 連だった屋台の店主から譲り受けた。ホークスや長浜の屋台が繋いだいくつもの縁によって「長浜市民球場』は生まれたのだ。

麺は福岡の人気製麺所『製麺屋慶史』から取り寄せる。スタミナラーメンの味の決め手になるのは豆板醤など複数の調味料と、注文を受けてから鉄鍋で野菜とスープを一気に煽るスピード感。 手際良く調理する音が食欲をさらに掻き立てる
「大阪人なので大阪の味を出したいなと、大阪の鉄板焼き屋のお父さ んにお願いをしました。ラーメンは出していなかったのですが、お客様からのラーメンが食べたいという声 が多くて。でも豚骨ラーメンは作れ ないし、それならば関西らしいラーメンをお出ししようと思い、スタミナラーメンを作り始めました」。 スタミナラーメンとは 奈良県天理市の屋台で生まれ、関西で親しまれているご当地ラーメン。白菜などたっぷりの野菜の旨味 があふれるピリ辛スープ は、さっぱりとした味わい で飲んだ締めにピッタリ。 今では多くのリピーターを生む名物メニューになっている。


『長浜どすこい焼』 (750円) / 鉄板で焼いた麺の上にあんかけが乗った、 焼きラーメンや皿うどんをモチーフにした新メニュー。『ホルモン味噌炒め』(700円) / 鉄板で熱々に焼き上げたホルモンを秘伝の味噌ダレで仕上げた、 ビールが思わず進む一品
「屋台の営業期間が10年間限定なので、まずはその期間を全うしたいですね。もちろん僕だけの 力ではなく屋台の皆と協力しながら、この長浜屋台街をこれからもっと盛り上げていきたいなと思っています」。
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■取材を終えて
野球ファンじゃなくても楽しく過ごせる場所
昨年復活した『長浜屋台街』を初めて訪れた時、 野球好きの私はこちらの屋台の名前を見て迷うことなく飛び込みました。 ドリンクを頼んで他のお客さんと一緒に 「プレイボール!」と乾杯すれば、一気に距離が縮まる屋台ならではの雰囲気にな り、初めてでも楽しい時間を過ごすことが出来ました。 屋台が開業して一年あまりで この屋台独特の空気感がしっかりと出せているのは、長年屋台に客として通って いた松清さんだからこそでしょう。 ちなみに取材の日はホークスが優勝を決める大事な日で、私も松清さんも試合の行方が気になってしまい、取材に集中出来なかったのはここだけの話。無事にこの日にリーグ優勝を決めてくれてホッとしました。

ラーメン評論家
山路力也 / Rikiya Yamaji
テレビ・雑誌・ウェブなど様々な 媒体で情報発信するかたわら、 ラーメン店のプロデュースなど、 その活動は多岐にわたる。「福岡ラーメン通信」でも情報発信中
掲載の内容は取材時のものです。取材日と記事公開日は異なる場合があり、メニューや価格、営業時間、定休日など取材時と異なる場合がありますので、事前に公式HPやお問い合わせにてご確認をお願いします。
