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【インタビュー】映画『ゆきてかへらぬ』より、広瀬すず&木戸大聖が福岡へ!「泰子、中也、小林の3人は全員奇人なんです」

 モントリオール世界映画祭で最優秀監督賞を受賞した『ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~』(’09)以来、16年ぶりとなる根岸吉太郎監督の最新作は、日本を代表する名脚本家・田中陽造によって約40年前に書かれたオリジナル脚本を映画化した、愛し愛され傷つきながらも生きていく3人の男女の物語だ。その舞台は大正から昭和初期。主人公の新人女優・長谷川泰子を広瀬すずが、天才詩人として後世に名を残す中原中也を木戸大聖が、中也の才能を高く評価する稀代の文芸評論家・小林秀雄を岡田将生が演じる。この3人の若者たちの愛と青春、そして唯一無二で特殊な三角関係を描いた『ゆきてかへらぬ』について、上映付きティーチインイベントで西南学院大学を訪れた広瀬すずと木戸大聖に話を聞いた。

 

時代が違っても、男と女の求めている
愛情や関係性は変わらない。
でも、表現の仕方が違うから
今の時代の人にどう届くのか聞いてみたい

 

左から広瀬すず、木戸大聖

――最初に脚本を読まれた時はどんな印象を持たれましたか?

広瀬:40年前の台本というのもあって、言葉選びだったり言い回し、ト書きの書いてある文章とかが面白くて。あの時代だからこその危うさみたいな、今の時代とはちょっと違う、まっすぐな脆さがちゃんと入っているような関係性がすごく面白いなと思いました。人間らしいぶつかり方や生き方みたいなものが今の時代はあまり見られないからこそ魅力的に思えて、「いいな。やりたいな」と思いました。

木戸:泰子、中也、小林の関係性というか、その三角関係みたいなところがただの恋愛じゃなくて、その人にないものを他の2人が支えていたり埋めているといった、この3人にしか成し得ない関係なんだろうなというのがあって。だから単純に純愛とか恋愛ではないというのがまず読んでいて感じたことです。それによって僕は中也を演じる中で、泰子といる時に生まれているものだったり、泰子が離れてから生まれているものがすべて詩に直結してる人なんだなと、改めて、中也の詩人としての天才具合みたいなものを感じました。

 

――お2人とも、実在の人物を演じる面白さや難しさを感じるところはありましたか?

広瀬:資料や情報がいっぱい残っているからこそ、合わせに行くと言ったら変ですけど、その世界観を知っている人もいるというのは、オリジナルでやるよりも難しいだろうなとは感じます。

木戸:中也の詩だったり彼自身を今でも好きでいる人がいるので、やっぱり演じるプレッシャーみたいなものと、あと、なぜ中也の詩をいまだに好きでいるのか、「今に通ずることが何かあるのかな」みたいな、そういうことをすごく考えました。

 

 

――中原中也は詩人としてすごく有名で知ってはいるんですが、中也のキャラクターまで考えたことはないなと思いました。

木戸:そうですよね。本や資料をいろいろ読んでいると、他の偉人に噛みついていたりとか、そういう記録も残っていたりして。もう年齢関係なく誰にでも噛みついてくことがあったそうです。その資料だけ読むと最初はそういうイメージなのかなと思ったんですけど、この映画で演じると、そのイメージを忘れるぐらい、彼が詩に向ける姿勢だったり泰子や小林に見せる姿みたいなものは、すごく純粋で真っ直ぐなものだったんだなというのを感じました。

 

――これは広瀬さんにお聞きしたいんですが、泰子はすごく奔放で、掴めない女性で、でも不思議な魅力がある目の離せない人だなと思いました。泰子をどのように解釈して、どう演じようと考えていましたか?

広瀬:まっすぐ彼女なりに思う素直な生き方ではあるけど、素直だからこそ中也に今いてほしい瞬間、彼が欲しい瞬間みたいな、今で言うかまってちゃんみたいな部分が所々で垣間見えたらいいなとは思っていて。その面倒くささがちゃんと相手に伝わっていて、それが愛情に繋がっている、みたいな。でも、それっていい意味で想像ができない感情だから、解釈する方もそうだし発信する方も、周りから見たら「なんなんだろう」「難しいな」と理解されにくい2人の繋がりが、“繋がっちゃってる”、“わかっちゃってる”みたいなことなのかなと思います。「こう言ったら中也はきっとこう返してくるだろうな」というのも、多分お互いにわかっているとは思うんですよ。そういう関係性があるから自由にできている。いろんな解釈の仕方が場面場面によって結構あるので、そのばらつきが奔放さとか掴めない感じにいったらいいなと演じながら思いましたね。

 

――観ていても泰子が気になってしまうというか、そういった色気のようなものもすごく感じたのですが、そこは意識されたんですか?

広瀬:色気という色気は意識していないですけど、泰子はちゃんと欲みたいなものがある人で、中也や小林の中に自分が存在していることが認識できる時間や表現があって、満たされたり、愛情表現になったり、安心したりします。色気というより、欲が強いみたいなことの方が正しい気がします。そこに品があったら色気だなと思うんですけど、品のある色気というよりかは、欲が漏れて人に伝わっているぐらい素直に出すし、その道に進むし、欲を求めるみたいな人なのかなって演じながら感じました。相手が一緒にいるだけでもいいし、存在に依存するじゃないけど、そういう存在を欲している時間が人間としてというよりは、“女として”みたいな生き方が強いんだろうなって。でも、それできっと彼女は自分を保っている。そんな感覚でしたね。

 

 

――なるほど。木戸さんにお聞きしたいのは、中也は小林に泰子を奪われてもまっすぐ彼女を求め続けますね。詩に対する没入も含め、彼の生き様みたいなものから何か感じ取れたことはありますか?

木戸:詩を捕まえるということが本当に生半可なものじゃないというか、彼はそれが人生であり、呼吸をすることと同じぐらいなくてはならない、そして掴まないと気が済まない部分だったりするんですね。そういうところからまっすぐな生き様を感じていたんですけど、さっきの泰子の話で、相手を求めながらも結局自分の存在を自覚している。その要素は泰子はすごく強いなと思っていたけど、中也自身も、泰子がいなくなってその喪失感を後に詩にしていたりするから、そういうところが中也自身にもあったんだろうなと思います。結果的にそういう詩が今もなお支持されていますが、そのような感情を詩として作ることで自分の今の状態を理解するというか、自分で自分を理解するみたいなところは、中也の中では生き方としてあったのかなと。

 

――泰子と中也、そして小林を含んでのいびつな三角関係は本当に奇妙な関係性だと思うんですが、あの3人の関係というのは、ありだと思いますか?

広瀬:なしではないですけど、あんな情熱的にはならないかも(笑)。男女の関係性というより、小林と中也の関係性が一番奇妙なんですよ。

木戸:そうだね。

広瀬:男女ってなんか成り立つじゃないですか。それがよかれひどかれ、どんな形でも。でも、小林は泰子を通して中也を見ているというのが……なんだか気持ち悪い(笑)。多分、それに対して泰子はちゃんと寂しさを感じていて。

木戸:3人の三角形が点と点で繋がっていない感じがする。泰子は中也と小林に矢印を向けているけど、その矢印は中也と小林の点にたどり着いていない。ちゃんと見たら線が繋がってない。そうやって解釈すると面白いなって。

広瀬:「自分事じゃないといいな」と思います。

木戸:たしかに。人のことだからこうやって面白がれるというか。

広瀬:面白そうだよね。本当そう思う。

 

――何があっても3人の縁が切れないというか、決して離れはしないというのが、すごく不思議だなと思いました。ちょっと怖さも感じるぐらいで。

広瀬:……全員奇人です(笑)。

木戸:そうだね(笑)。

 

――撮影外での、岡田将生さんを含めたお三方の空気感はどんなものだったんですか?

広瀬:ずっと穏やかでマイペースでした。なにを話したのか本当におぼえていなくて。なんだっけ?みたいな。

木戸:なんかずっとフラットでしたね。別に芝居の話をすることもなく。でも、多分みんなどこかしら現場の緊張感もちゃんと体にあって。

広瀬:役がね、エネルギッシュだから。カメラがない時ぐらい休憩していました(笑)。

木戸:ハハハ!

 

――「奇人」という言葉もあったように、観ていてちょっと変わった感覚になる作品だと思います。「観客はこういったものをこの映画からキャッチできるんじゃないか」と思う部分を、それぞれ最後に教えていただきたいです。

広瀬:時代が今と違うけれども、男と女の求めている愛情だったり関係性って変わらないんだなって。でも、時代が違うから表現の仕方が違ったりするので、それが今の人たちにはどう受け取ってもらえるのかなと。文学的な表現がすごく多いからこそ、これが何に見えるのかなというのは楽しみでもありつつ、ドキドキもしつつ。今の時代の人にどう届いたのか、聞いてみたいです。

木戸:人が持っている愛だったり欲みたいなところは現代を生きている僕らでも持っているものですよね。それの放出の仕方が、この3人は想像もできない放出のされ方というのは感じると思うんですけど、でもそれが実在したという面白さがあって。そういう関係性で生きていた人たちが本当にいたということを、令和の時代にこの映画を通して感じてもらえると思うので、そこにぜひ注目していただきたいです。

 

広瀬すず / ’98年生まれ。静岡県出身。’12年、「Seventeen」の専属モデルとして芸能界デビュー。近年の主な出演作は『流浪の月』(’22)、『水は海に向かって流れる』(’23)、『キリエのうた』(’23)など。公開待機作に『片思い世界』、『宝島』、『遠い山なみの光』(すべて’25年公開予定)などがある。

木戸大聖 / ’96年生まれ。福岡県出身。’17年に俳優デビュー。Netflixオリジナルシリーズ「First Love 初恋」で佐藤健扮する主人公の若き頃を演じ、一躍注目を集める。近年の主な出演作は『きみの色』(’24)、ドラマ「9ボーダー」(’24)、「海のはじまり」(’24)など。NHK夜ドラ「バニラな毎日」が現在放送中。

映画『ゆきてかへらぬ』

© 2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会

ゆきてかへらぬ  /  2月21日(金)全国ロードショー

 大正後期の京都。20歳の新進女優・泰子(広瀬)は17歳の中原中也(木戸)と出会い、惹かれ合う。共に暮らし始めた東京の2人の家を、中也の詩人としての才能を認める批評の達人・小林秀雄(岡田)が訪ね、中也と秀雄の仲睦まじい様子に泰子は置いてけぼりのような感情を抱く。しかし、評論家の秀雄は泰子にも本物を感じ、3人の関係性は複雑化していく。

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