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OITA ART TRIP(大分県)大分のアートとカルチャーを巡る旅。~国東市・豊後高田市編~

大分ってどんなとこ?

そう聞かれたら、真っ先に「アートの街だよ」と答えよう。
未知の感覚を味わうアートも、日常の延長線上にある土着のカルチャーも、
アートが誘う、見たことない大分の旅へ。

今回は、国東市・豊後高田市をご紹介。

 


|国東半島でアートが生まれる理由。

NPO法人BEPPU PROJECT代表理事、アーティスト 山出 淳也さんに聞く

アントニー・ゴームリー『ANOTHER TIME XX』 撮影:久保貴史 ©国東半島芸術祭実行委員会

 

大分県の北東部に位置する国東半島は、『六郷満山文化』と呼ばれる山岳仏教が根付く土地であり、神と仏が融合した信仰『神仏習合』の発祥地です。地域の土着の文化は多くの場合、自然環境によって形成されますが、そうした意味で国東半島という場所はとても特殊な場所と言えます。国東半島は火山性の土壌であるため、水が留まらずに海へと流れてしまい、土地が肥えにくい地域でした。だからこそさまざまな信仰が根付き、祭りや生活の中における”祈り”が今もなお受け継がれているのだと考えられます。

 

淀川テクニック『国東半島のラクダ』 撮影:久保貴史

 

2014年に国東市と豊後高田市で『国東半島芸術祭』を開催した一番の目的は、都市一極集中が加速する中で、“国東半島”という場所と、この土地独自の文化を伝え、形として残したいと思ったからです。イベントを開催することによる即時的な経済効果を期待していたわけではなく、地域の人たちの思いを汲み、形にすることに意味があると考えたのです。

 

そこで、作品制作は、アーティストとともに国東半島を丁寧に周ることからはじまりました。その中でアーティストが出会った地域の人々の思いや歴史、記憶、未来への願いのようなものが込められた、“サイトスペシフィック”な作品が誕生しました。僕らはそれらを“道祖神”と呼んだりもしますが、芸術祭が終わっても、思いを込めた作品たちがこの場所に根付き、この地域を巡るための道標のような存在となっていくことを願っています。

 

島袋道浩『首飾り ー 石を持って山に登る』 撮影:島袋道浩

 

それからもう一つ、近代において水上交通から陸上交通に変わったことは、人々の暮らしに大きな変化をもたらしました。関西が商いの中心だった時代、瀬戸内海が交通の要所だった頃は、九州の玄関口といえば国東半島でした。かつては入り口だったにもかかわらず、今は中心から遠い場所として“陸の孤島”と言われる場所になっています。陸上交通を成立させるには道を歩き易く整地することから始まりますが、『国東半島芸術祭』で作品を設置した場所のほとんどが山の奥地だったり、谷の斜面だったりと行きづらい場所ばかりです。

 

芸術のコンセプトを「歩く」というひと言にしたのは、作品に辿り着くまでに自分自身でバランスを取りながら大地を踏み締めて歩いていくということ自体、現代人が知らず知らずのうちに失いつつある行為だと感じたからです。最近はSDGsも盛んに叫ばれていますが、国東半島は訪れるだけで、人と自然が共生するために必要なたくさんのことを学べます。作品群は、この地域の物語を知るための入り口でもあるし、なおかつ作品を観ようとする行為自体が、私たちが今の時代に忘れてはならないことを思い出させてくれるきっかけになると思います。

 

宮島達男『Hundred Life Houses』 撮影:久保貴史 ©国東半島芸術祭実行委員会

 

アートにできることは、それぞれの内なる声に丁寧に耳を傾け、そこから目指したい未来や本来の個性を見出していくことなんだと思います。それは国東半島という地域に限ったことではありません。さらにいうと、1人の人間でも同じこと。一つひとつ丁寧に向き合っていくことなんですよね。

 

チームラボ『花と人、コントロールできないけれども、共に生きる ‒ Kunisaki Peninsula』 撮影:久保貴史 ©国東半島芸術祭実行委員会

 

山出 淳也さん

1970年大分県生まれ。文化庁在外研修員としてパリに滞在(2002~04)。アーティストとして国際的に活躍した後、2004年に帰国。2005年にBEPPU PROJECTを立ち上げ現在にいたる。混浴温泉世界実行委員会総合プロデューサー(2009~)、第33回国民文化祭・おおいた 市町村事業 アドバイザー、文化庁 審議会 文化政策部会 委員(第14期~16期)、グッドデザイン賞 審査委員(2019年~)、山口ゆめ回廊博覧会コンダクター(2019年~)、平成20年度 芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞(芸術振興部門)

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