【福岡ラーメン物語 のぼせもん|85杯目 ほったて小屋 】
「独学だからこそ固定観念がない。 鶏の魅力あふれる一杯を作り続けます」
豚骨ラーメンに負けない鶏白湯ラーメンを作りたい。
鶏が大好きで鶏に魅せられた男がラーメンと出逢ったのは運命だった
のかもしれない。豚骨の街福岡で鶏にこだわり真っ向勝負をかける。

「濃厚鶏塩白湯ラーメン(煮卵入り)」(900円)/鶏を丸ごと丁寧に炊き上げた鶏白湯はなめらかで奥深い味わい。2種類の鶏油がさらなるコクを加えている。 豚骨ラーメンの人気店『風靡』による細ストレート麺が濃厚なスープにしっかりと馴染む

「鶏が好きなので鶏白湯ラーメンを作っていますが、 この鶏白湯で水炊きを 作っても面白いと思いますし、いつかは豚骨ラーメンにも挑戦してみたいですね。これから先もずっとチャレンジしていこうと思っています」
ほったて小屋
店主 境 寿仁 /Sakai Nobuhito
1975年長崎県五島市生まれ。2005年に兄と居酒屋を開業。2013年に独立し居酒屋『ほったて小屋』を創業、 2018年にラーメン店へ。 2023年『ラーメンスタジアム』に出店
どのようにしてラーメンと出会い、ラーメンを作り始めるのか。福岡市西区野方の人気店 「ほったて小屋」の店主、境寿仁さんは様々な仕事を経て飲食の世界へと飛び込んだ。
ほったて小屋
【所】福岡市西区野方6-730-8【☎】092-776-8419【営】11:00-15:00 /17:30-21:00 【休】火曜 【席】 16席【P】あり カード/不可
しかし当初ラーメン屋になるつもりはまったくなかった。 「元々はサラリーマンだったんですが、飲食店をやらないかと兄に誘われて大名で居酒屋を始めました。 その後バ ーやイタリアンなど点々とするのですが、その中で鶏の魅力に 惹かれて、いつか鶏を使った店をやりたいと思うようになりました」。
警固で地鶏を使った居酒屋を立ち上げて人気店にした後に独立。 野方で鶏焼肉を看板メニューに据えた居酒屋『ほったて小屋』を創業したが、客足はあまり伸びることが なかった。しかし一人の客との出会いが境さんの人生を大きく変えた。

「僕が好きで通っていたラーメン店『風靡』の社長さんがお客さんとして来られたんです。店が流行っていないのならラーメン屋をやってみてはどうかとアドバイスして下さり、風靡さんの麺を持ってきて下さったんです」。
以前から『ほったて小屋』では鶏 白湯を使ったオリジナルの五島うどんを出していた。そのスープを応用したら美味しいラーメンになるのではないか。社長との出会いは チャンスなのではないか。境さんの ラーメン作りの日々が始まった。

「ラーメンの修業経験がまったくないですが、それを自分の強みにしていこうと思っています。ラーメンはこういうものだという固定観念がないので、自由な発想でラーメンを作り続けていきたいですね」
「ラーメンの修業はまったくして いないので、本当に一からのスター トで試行錯誤を重ねました。そこを 風靡の社長に聞くのはダメだと思ったんですね。自分の力で絶対に美味いラーメンを作ろうと決めました」。 うどんに合わせた鶏白湯ではラー メンにならない。スープの取り方を 変えても味が決まらない。ある時、 自分の感覚よりも少し多めの塩を入れたら味がビシッと決まった。

鶏油は親鶏と若鶏から取ってブレンドすることで深みが増す。丸鶏や鶏ガラ、鶏頭に鶏首などを巧みに組み合わせて理想の鶏白湯を作り上げた。 麺は店主も好きな博多ラーメンの人気店『風靡』のストレート 麺と縮れ麺を使用。 好みで選ぶことも可能だ
丸鶏や鶏ガラ、鶏頭など鶏の様々 な部位を使ってじっくり丁寧に炊き上げた黄金色のスープは、しつこさはないのに濃厚な味わいに仕上がっている。香りとコクを加える鶏油は親鶏と若鶏をブレンドして深 みを演出。ラーメン職人のアプローチとは違った、鶏を知り尽くしている境さんの経験と技術がなければ 生み出せなかった、唯一無二の鶏白湯ラーメンが完成した。


「レモンラーメン」 (900円) / 爽やかなレモンスライスの酸味が濃厚な鶏白湯にマッチする新作メニュー。「ぞうすい」 (+300円)/ラーメンの残ったスープを使い雑炊に仕上げてくれる。 ラーメンとは違った鶏白湯の味わいを楽しむことが出来る
「鶏の持つ旨味や骨の味をどこまで出せるか。鶏ってやっぱりあっさりしている食材なので、どうやったら豚骨に負けないスープを作れるのかに苦心しました。風靡さんの濃 厚で旨味の強い豚骨スープを鶏で表現出来たらと思っています」。 豚骨ラーメンの街だからこそ豚骨に負けない鶏白湯ラーメンを作りたい。境さんの熱い思いが詰まったラーメンは評判を呼び、ラーメンファンのみならず多くの人に愛されるようになった。県内外の人気ラーメン店が集結する『ラーメンスタジアム』 からもオファーを受けて出店を決めた。
「大切なご縁から生まれたこのラーメンをもっと多くの方に知って欲しいので、今後は店舗を増やしていきたいですね。そしていずれは県外や海外にも出て勝負していきたいですね」。
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■取材を終えて
ありそうで他にはない唯一無二の鶏白湯
ラーメン評論家という仕事柄、これまでにたくさんの鶏白湯ラーメンを食べてきましたが、良くも悪くも鶏白湯はどこも似通った味わいになりがちで、正直食傷気味になっていました。しかし初めて『ほったて小屋』のラーメンを食べた時に、今まで食べた鶏白湯とは違う味わいでちょっと驚きました。 それはラーメン経験のない境さんだからこそ生み出せた味なのでしょう。 本来ラーメンとは決まりきった形があるわけでは なく、もっと自由な発想で作ることが出来る料理なのですが、 最近のラーメンはどこかで食べたようなものばかりになっています。 境さんにはこれからもラーメンの常識を壊すような、美味しくて面白いラーメンを作り続けていって欲しいなと思います。

ラーメン評論家
山路力也 / Rikiya Yamaji
テレビ・雑誌・ウェブなど様々な 媒体で情報発信するかたわら、 ラーメン店のプロデュースなど、 その活動は多岐にわたる。「福岡ラーメン通信」でも情報発信中
掲載の内容は取材時のものです。取材日と記事公開日は異なる場合があり、メニューや価格、営業時間、定休日など取材時と異なる場合がありますので、事前に公式HPやお問い合わせにてご確認をお願いします。
