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【インタビュー】MOSHIMO・岩淵紗貴「〝バンドしながら生きて死にたい”というのが私の人生」

※この取材は福岡県の緊急事態宣言が発表される前に実施しました。

4ピースから2人組のバンドへと変化を遂げた福岡出身のロックバンド・MOSHIMO。バンドの勢いを止めることなくプライベートレーベルを設立し、「世の中に負けずに噛みついて生きていきたい」という思いを込めたアルバム『噛む』をリリースした。「本当は凄く不安だった」と話すフロントマンの“ポチ”こと岩淵紗貴に胸の内を聞いた。

 

「バンドしながら生きて死にたい」というのが私の人生。
凄く素敵なことをやれているなって誇りに思ってるんです。

 

―まずはプライベートレーベル立ち上げについて聞かせてください。
岩淵:今後なにをするにしても、自分たちでやっていける力がないとダメだろうなと思ったのもあったし、居場所がないなら作ればいいというシンプルな考えで立ち上げちゃいました。今って凄くたくましい時代だなと思っていて。たとえば大学生の子が服を好きでブランドを立ち上げようと思えばすぐできるし、インスタとかのフォロワーさんがいればバイト代ぐらいは稼げたりするし、オリジナリティが凄く大事な時代ですよね。お客さんとより深いところで繋がっていなきゃやっていけないなと思って立ち上げて、責任も自分たちですけど、やりがいはあるし凄くワクワクしています。
―メンバーの脱退を機に、バンドの歩みを止めることがよぎることはあったのでしょうか?
岩淵:なかったですね。「バンドしながら生きて死にたい」というのが私の人生なので。メンバーから「バンドを抜ける」という話が出て、MOSHIMOを止めずに、今私たちを好きと言ってくれている人たちとどう這い上がっていこうかなって考えの方が強かったです。
―大きな決断をする時は誰しも不安になると思いますが、岩淵さんの背中を押してくれた存在はなんだったのでしょう?
岩淵:その当時相談できた人と、バンド仲間ですかね。本音で話せる人がいたのは凄く良かったです。「めっちゃ不安や」とかも正直に伝えましたし、せっかく次のツアーファイナルでは自分たち史上一番大きな会場でライヴするって決めていて、「それ決めてるんだから、やれるだろ?」って後押しは凄くしてもらったし。後からKEYTALKとかが「MOSHIMOの音楽好きだから辞めるという決断をしないでくれて嬉しかったよ」って言ってくれたりしたのはでかかったです。仲の良いアパレルの人が客観的な意見をくれたり、意外とピンチの時に見てくれている人たちもいるなって思いましたね。
―そんな不安を跳ね返す力強さが今作『噛む』からは感じられますし、1曲目の『もっと』はバンドとしての決意表明のようでもありますね。


岩淵:この曲は関わってくれる人がガラッと変わった時に作った曲で、ライヴバンドとしてMOSHIMOが生き抜くためにも、音源のアタシとライヴのアタシをイコールにしたいと思って詞や曲を作って。ネガティブなことを言うのが凄く嫌だったりする自分が昔はいたんですけど、人間ってそんなにポジティブだけで生けていけないし、自分の弱い部分をちゃんと自分なりに処理した上で次に進まないとなにも生まないなと思ったんです。過去を振り返った上で前向きなパワーに変える曲を作りたいなと。
―これまでは音源とライヴの自身がイコールになっていない感覚があったんですか?
岩淵:なかったんですけど、それを感じたのが、初めてMOSHIMOのライヴに来てくれたお客さんから「話しやすいし明るいし、MOSHIMOのボーカルってこんな感じの人だったんだ」「ライヴの時のポチちゃんが好き」っていう声が多くて、それって音源とライヴのアタシがイコールになってないんだろうなと思ったんです。特にライヴバンドとして生きていきたいということを’18年の末ぐらいから強く思うようになって突っ走ってきたのに、これはよくないな、寂しいなと思って。ライヴでめちゃくちゃテンション上がった時は「クソったれが!」とか言ってるのに、綺麗にしようと思ってそういう言葉を歌詞に入れていない自分にハッとしたんです。これまで作ったCDがアタシじゃないかと言うとそうではなくて、当時の自分は詰まっているんですけど、人に言われて気づいたことは多かったですね。
―2曲目『熱帯夜』でも「fight アタシ」「ありのままの自分で生きろ」という言葉があったりして、自分自身を鼓舞する強い言葉が並んでいます。
岩淵:「頑張れ」という言葉は自分自身に対して使う言葉じゃないと思うんですよ。「ガンガン頑張れ fight アタシ」の部分は最初書くかどうか悩んだんですけど、いざ踏ん張らなきゃという時、自分に「頑張れ、頑張れ」って言い聞かせてる時があって。東京って頑張って当たり前の世界だけど、その中で踏ん張りがきかない時って絶対にあって。もう少し自分に優しくなって、そういう言葉をかけてあげてもいいんじゃないかなと思って入れたワードです。
―後半の『シンクロ』、『バンドマン』、『誓いのキス、タバコの匂い』は雰囲気が変わって、危うい恋の雰囲気がする恋愛の楽曲もあります。
岩淵:危うくしかないですよね(笑)。
―「バンドマンを好きになりました」から始まる『バンドマン』などはめちゃくちゃストレートな気持ちですよね。
岩淵:自分の中の好きな音だったり、フレーズを弾いているギタリストとか見ると「え~!! 無条件にカッコいい!」とかどうしても思っちゃうんですよ。ステージマジックですね。わかってるんですけど、その魅力にどこかしら惹かれちゃう。美容師、バーテンダー、バンドマンの「3B」を声を大にして歌ってますけど、自分がバンドをやっていて、凄く素敵なことをやれているなって誇りに思ってるんです。だから、本当にダメなどうしようもない奴もいっぱいいるんですけど、その中でファンの多い人たちって、どこかしら言葉だったり発信するものに対して責任感もあるし、人としてもしっかりしてる人もたくさんいて。
―同業の岩淵さんでもバンドマンに対してそう感じるわけですね。
岩淵:それっていいですよね。自分のやってることも悪くないんだなと思ったし。
―全体を通してなにかを渇望する姿が印象的ですが、バンドにとってどんな1枚になったと思いますか?
岩淵:ライヴバンドとして生きていきたいという思いが詰まった、なりたい自分への第一歩となる作品じゃないかと思います。ここからどんどん進化していきたいし、もっと柔軟に新しいことを取り入れてトライしていきたいんですけど、今の自分自身と向き合えた作品ですね。
―新体制としてのツアーも楽しみですね。
岩淵:なにかに行き詰まったり、決断するのが不安だったり怖いことってたくさんあると思うんですけど、それを失敗したところで案外周りは気にしてねぇよって思うんです。そういうことを不安がる人はぜひ来てもらいたいし、一緒にぶっ飛ばして前向きに次に進めるライヴにしたいと思います。

 

【プロフィール】
’15年4月に4ピースバンドとして福岡で結成し、’16年5月にデビューシングル『猫かぶる』を、同年9月に1stミニアルバム『命短し恋せよ乙女』をリリース。’19年3月には地元福岡で屋内型ロックフェス・MOSHIFES.2019を開催。’20年1月より岩淵紗貴(vo、g)と一瀬貴之(g)の2人体制となり、下北沢の老舗レーベル・KOGA RECORDS内にプライベートレーベル「Noisy」を設立した。

LIVE / RELEASE

◎チケット発売中
日時:9月1日(火)19:00
会場:DRUM Be-1
料金:スタンディング3500円 ※整理番号付 ※要1ドリンクオーダー ※未就学児入場不可
発売:チケットぴあ / ローソンチケット / イープラス
問い合わせ:キョードー西日本(0570-09-2424)
http://band-moshimo.net/schedule/

◎発売中
ALBUM『噛む』
●Noisy / KOGA RECORDS / 2200円

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