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~エディターOの読書録~ 立ち読み気分でどうぞ。♯2『人生パンク道場』 

♯2『人生パンク道場』  町田康 著  720円/KADOKAWA

 仕事柄、話を聞くことには多少自信があるが(そう思い込んでいないとやっていられない)、意見を求められる立場になるとまったくだ。これは由由しき事態である。編集者だからといって、誰かの話に頷いているだけでは済まされない場面があるのだ。例えば、当社の編集部には時折、他媒体からの取材依頼が舞い込む。そういった類の問い合わせ電話を受ける度、私は「自らの拙い話術によって不特定多数の人を困惑させる可能性」を察知し、冷や汗をかく。幸いなことに、私の席の正面には編集者としての経験と類まれなトーク力を兼ね備えたFさんがいるので、彼の目を「慈悲・自責・感謝」やその他諸々の感情を込めた目で見つめ、電話を代わってもらうことで、事態を回避できているのだが…。周囲の人の優しさに甘え続けるわけにもいかず、一刻も早く、思いを言語化するための能力を身につけねばならない。

 

 手始めに、「言語化力向上」のための実用書を手に取った。それらのおかげで能力向上のためのプロセス=“To”を学ぶことができたが、どうもその先の“How”まで辿り着かない。模索する中で手に取ったのが、小説家が読者の悩み相談に答えた連載を、一冊にまとめた本である。小説家を小説家たらしめる言語力や表現力の中に、著者の人柄や優しさ、時に厳しさがにじみ出ていて、読み物として単純に面白い。中でも、特に私の心に最も深く残ったのが本書『人生パンク道場』である。小説家であり元・ロックミュージシャンの町田康が恋愛、金、酒、家族、人生…ありとあらゆる悩みに向き合うのだが、そのアンサーは目から鱗の内容ばかり。

 

 例えば「バンドメンバーの一人と付き合っているが、別のメンバーのことを好きになってしまった」という悩みに対し、町田はかく答える。「EXILE的な感じでバッグダンサーを大量に加え、バンドメンバーを増やすべし。メンバー内恋愛で生じる決まずさが薄れるであろう」。また、「頼まれごとを角を立てずに断りたい」という相談には、「有能だから頼まれるのだ、無能になりなさい」。おそらく相談者の想定とは異なるであろう、とんちんかんなアンサーに笑い、時に真摯な言葉に胸を打たれ…本を読み終える頃には、町田自身のロックな生き様に共鳴している自分がいる。相手が求めている内容をくみ取り、適切な表現で伝えることだけが、果たして上手な言語化だろうか? そうだ、私はもっとロックに生きていくのだ―――。こうしてまた、言語化の会得から遠く離れる私であった。

 

 以降余談。小説家と相談者による数多くのQ&Aに触れてきた私だが、日常において誰かから相談を受けることは非常に稀なことであり、今後も受けそうな気配はない。それがなぜかを言語化するのは、悲しくなりそうなのでやめておく。

Illustration 画像生成AI:ChatGPT 画像は単行本に見えますが、私は文庫版を購入しました。「Q&A」系の本だと、『中島らもの明るい悩み相談室』もおすすめです。読むと気分が晴れますよ!

 

 

●エディターO 
千葉県千葉市出身、埼玉県川越市育ち。’21年に突如思い立って福岡へ移住し、シティ情報ふくおかに入社。趣味は読書。大好きなオクトーバーフェストの季節がやってきて、ハッピー!(執筆時)

 

第一回☞https://www.fukuoka-navi.jp/382843
第三回はこちら☞https://www.fukuoka-navi.jp/382969

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