【インタビュー】映画『架空の犬と嘘をつく猫』より、森ガキ侑大監督が登場。「映画を通して、時の流れを感じ取れること自体が豊かで有意義だと実感してもらえたら」

――今作は原作の舞台に沿って佐賀で全編が撮影されています。田舎特有の閉塞感であったり、ポジティブじゃない側面も映し出されているように感じましたが、佐賀の景色をどのように撮ろうと思いましたか?
森ガキ:やっぱり田舎の独特な街並みみたいなものはすごくあるなと思っていて。佐賀って決して都会ではないけれど、昔ながらの歴史的建造物は残っていて、自然と古いものが融合して重なり合っているところがすごく魅力的だと感じています。そういった雰囲気や、その場のコミュニティでしか生きていけない閉塞感は佐賀で撮っていれば出てくる空気感だと思っていました。実際に佐賀で撮影できたことは作品への影響として大きかったですね。
――キャストについても聞かせてください。主演の高杉真宙さんは役柄ともマッチする誠実な印象ですが、素の高杉さんはどんな方でしょうか?
森ガキ:作品に対してすごく真面目で紳士で、本当に山吹って役は高杉くんじゃなかったら誰がやるんだろうと思います。ピュアな一面も、芯がある感じも、柔らかい優しい雰囲気もあるし、そういったものが総合的に混ざっているのが山吹にぴったりだなと思いました。

――そんな高杉さん演じる山吹を取り巻く2人の女性を、伊藤万理華さんと深川麻衣さんが演じています。対照的な役柄の2人ですが、それぞれどんな演技を求めましたか?
森ガキ:深川さんが演じたかな子は結構破天荒な感じで、呪縛にずっと追われていて、男がいないと自分自身をコントロールできないというか、感情を維持できない弱い子なんですよ。流されてしまうから、誰かに依存しないと生きていられない。それが母親との関係性だったり、寂しさがそうさせているんだというところから肉付けしてみてくださいと話をしました。伊藤さんが演じた頼は黙っているんだけど、本当は芯が強い子です。優しくて静かな子に見えるけど、しっかりと自分の足で立っているような感覚の人として演出をつけていきました。「彼女は山吹も救うし、いろんな人を救うんだけど、自分の行動とか、周りの人の行動を正直に見つめている素直さみたいなのもあるんです」と伝えた記憶があります。

――かな子と頼が同じ画面に映った時のスリリングさが……。
森ガキ:真逆の2人が山吹を取り合うみたいな雰囲気がありましたよね。
――もう一つ、映画の中の大切な問いとして、「嘘をつくことはいいことか悪いことか」という是非について、監督にもお聞きしてみたいです。
森ガキ:哲学的ですごく難しいですね。是か非か、どちらでもないんです。物事って全部表裏一体だと思うので、嘘はよくないけど、嘘をつくことで助けられることがたくさんあると。嘘をつかないと成り立たないこともいっぱいある。是か非かという問題では片づけられないですよね。ジレンマと表裏一体であらゆる出来事はできているのかなと僕は感じています。『愛に乱暴』の時も「表裏一体」というワードはよく出たのですが、それが結構人間というものを作っている気がします。
――本作の1月9日(金)という公開日は、年末や年始に家族と過ごした後というベストなタイミングだと思うのですが、映画を観た人はどんなものを受け取れる作品だと思いますか?
森ガキ:家族って厄介だけど手放せないし、もう1回家族に会いたくなるような物語になっていると思います。もう一つは、忙しく生きている人々にとって、時が過ぎていっていること自体を実感できる作品です。間とか、そういうことを贅沢に取れるということ自体が豊かであるんだよ、有意義なんだよと、実感してもらえたら嬉しいなと思うんですよね。
映画『架空の犬と噓をつく猫』(PG12)

架空の犬と噓をつく猫 / 1月9日(金)全国ロードショー
’88年、小学3年生の羽猫山吹(高杉真宙)は、事故で子を失った現実を受け止められず、空想の世界に生きる母・雪乃(安藤裕子)のために亡き弟になりすまして手紙を書き続ける。父・淳吾(安田顕)はそんな妻を受け入れられず愛人の元へ逃げ、祖母・澄江(余貴美子)は骨董屋の仕事で“嘘”を扱い、姉・紅(向里祐香)は「嘘と噓つきが嫌い」と反抗。不都合な真実から目を逸らす家族は、それでも寄り添い合っていく。
