福岡ラーメン対談! |『長浜ナンバーワン』✕『博多だるま』老舗二代目が本音をぶっちゃける!
長浜ラーメンの老舗『長浜ナンバーワン』と、博多ラーメンの老舗『博多だるま』。
半世紀以上続く老舗を受け継ぐ二代目であり福岡のラーメンシーンを牽引する二人が、本音で語る、ラーメンの今と未来。

右/
『長浜ナンバーワン』
株式会社 テイクワン
代表取締役 種村 剛生
Tanemura Takeo
1965年、長崎市に生まれ島原市で育つ。学生時代にアルバイトで飲食業の面白さに触れ、福岡市内での就職後も、飲食業の魅力が忘れられず人気屋台『ナンバーワン』で修行。2005年に独立し、祇園に『長浜ナンバーワン』を開業。先代から引き継いだ屋台を2015年、条例によって閉業。現在は、福岡市内のほか東京、香港などにも店舗を構える。
左/
『博多だるま』『秀ちゃんラーメン』
有限会社ディアンドエッチ / 有限会社ディアンドケイ
代表取締役会長 河原 秀登
Kawahara Hideto
1966年、福岡市生まれ。大学時代に家出同然で料理修行に大阪へ。23歳で帰郷し両親が営む『博多だるま』の手伝いを始める。27歳で、自らの屋号『秀ちゃんラーメン』を開業。福岡ラーメン界の若き旗手として注目される。2000年には『博多だるま』の二代目店主に就任。創業60年以上を誇る老舗を率いながら、国内外で20店舗以上を展開中

時代と共に変化する
豚骨ラーメンの現在地

河原 種さんと初めて会ったのは、ラーメン協会の会合でしたよね。種さんは長浜ラーメンで、僕は久留米系の博多ラーメン。そのルーツや考え方の違いも面白くて、今では一番よく話す店主かもしれません。
種村 秀ちゃんは、俺の知らんことをよう知っとるから、話しよって楽しいんよ。昔はラーメン屋同士が仲良くするなんて考えられんかったけどね。みんなライバルやし。
河原 福岡って昔はもっと閉鎖的でしたもんね。東京もんには、こいつツヤつけつけとうなって斜に構えて(笑)
種村 それが変わってきたのは、やっぱ成美さん(一風堂の河原成美氏)のおかげ。成美さんがラーメン協会を作って、みんなが話せる場ができた。今は60歳の俺にも、若い職人が普通に声かけてくれる。俺が若い頃は考えられんことやね。
河原 若手同士の交流も増えて、コラボやイベントも活発ですよね。「令和維新会」とか、面白い流れもある。
種村 ただ最近は、昔みたいな大きな「ラーメンブーム」がなくなって、業界自体が縮小しとる気がする。
河原 いまブームを作ってるのは、インフルエンサーですもんね。芸能人が通ってるとか、見た目が映えるとか、話題性だけが先行してる。
種村 どんなに裏路地でも、スマホひとつで人が集まる時代やけんね。情報が先で、味は後。どんなに仕込みに時間をかけて美味しいラーメンを作ろうが、写真じゃ伝わらんのがもどかしくもあるね。
河原 受け手もリアリティより情報量に満足して、一回行ければいいって人が増えている気がしますね。
種村 それでも、豚骨ラーメンは、博多の名物やけん。どんなに時代が変わろうと、それは変わらんよ。
河原 でも、今あえて豚骨ラーメンで勝負しようとする若い人が少ないのも事実。開業したての豚骨専門店って、数えるくらいしかない。
種村 豚骨は、燃料費とか材料費がかかるイメージがあるもんね。それに、深夜営業の店が減った。飲んだあとに締めのラーメンを食べようと思っても、行ける店が減っとるのも影響しとるような気がする。
河原 そもそも、深夜まで働きたい若い子が少ないですもんね。
種村 従業員の生活を考えたら、深夜営業は現実的じゃなかもん。コロナ禍で働き手が一気に離れたしね。
河原 修行や根性でどうにかなる時代じゃないですもんね。これからは、ラーメン屋って面白そう、楽しそうって思ってもらえる仕掛けを考えないと、人も集まりませんよ。だから最近は、若い子や他業態の飲食店が非豚骨で勝負するんだと思います。昔ながらの豚骨ラーメンをやろうとすると、コストもかかるし、既存の有名店を超えるのが難しい。

価格と価値に揺れる
職人としての矜持

種村 中華そばの900円は当たり前でも、豚骨ラーメンの800円は高いって言われるのが不思議よね。材料費も燃料費もめちゃくちゃかかるのに。最近はライト豚骨も増えてきたけど、やっぱり濃度を出すには、それなりのコストがかかるもん。
河原 これからは、お客さんに価格の根拠を開示して、納得して支払ってもらう時代が来るかもしれませんね。「粗利がこれ位だからこの値段になります」って。利益が出ないと次の展開もできないし、スタッフの給料も上げられませんから。
種村 固定費を削ってスタッフや業者を苦しめたら本末転倒やけんね。うちの祇園店は今、ラーメン一杯700円やけど、この前、計算してみたら純利益が3%しかなくてショックやった。俺、どんぶり屋やけん、どんぶり勘定やったんよ(笑)
河原 でもそれ、誇っていいことじゃないですか。お客さんにも、スタッフにもちゃんと還元できてるっとことですよ。大事なのは数字の裏側で何を守ってるかってことですから。
種村 最近の風潮で、値段だけ先行して高くする店が増えてるけど、大事なのは自分自身が、自分のつくるラーメンに値段分の価値を見出せているかってこと。それがやっぱり先やと思う。努力して高くするのはいい。でもそれでお客が来んとなら、それは間違いだったってことでね。俺は、長浜ラーメンの「安くてうまい庶民の味」という文化は守りたい。ラーメン一杯1000円の店が100人の来店でうまくいくんやったら、俺は700円で150人のお客さんに来てもらいたい。それで喜んでもらえるのが一番うれしいけん。
河原 一方で、福岡って“安くて旨い”が定着しすぎてる気もするんですよ。もっと高くていいものがあることもアピールしていかないと。僕はラーメンも、価格の幅があっていいと思っていて、2000円、3000円のラーメンがあってもいい。職人の技術にきちんと値段をつける時代が来てると思います。
種村 確かに、有名シェフが作った超旨いラーメンは、安売りしたらいけんよね。でもそれを、俺たちがしよるみたいに、一日に何千杯も作って売ることは難しいやん。はじめから領域が違うけん。だから一日50杯限定の高級ラーメン店があってもいいし、安くて旨いラーメンを追求する店があってもいいよね。

継承と挑戦。
ラーメンの未来とは?

種村 俺は最近、子ども食堂をやってみたいと思っとるんよ。ただ食べるだけじゃなくて、つくってみる体験も同時に提供して、食を通じた記憶が残る場を作りたい。
河原 それいいですね。僕も子どもの頃、仕事終わりの親にバイクの後ろに乗せてもらって行った近所の飲食店のこと、今でも覚えてます。
種村 今はもう作って終わりの時代じゃないけんね。アレルギーのある子でも安心して食べられるラーメンとか、カロリーを気にせずにスープまで飲み干せる豚骨ラーメンを、どうにかして作れんかと思っとる。
河原 うちもビーガンラーメンやグルテンフリーのラーメンに挑戦してます。骨粉の再利用も進めてるし、ラーメン屋も環境への配慮や社会貢献を考える時代ですよ。
種村 でもよく無化調って言うけど、やっぱり化学調味料は旨い(笑)
河原 確かに(笑)。うちも『秀ちゃん』は無化調で『だるま』は使っています。添加物の一つってだけで、使うのが悪いわけではないですもんね。
種村 それに、20年前の屋台時代に比べたら、今使ってる量は10分の1以下。減らしても美味しくなるように工夫してきたし、いずれはゼロにしたいとも思っとる。
河原 今は、塩分も少なくなっていますよね。うちの場合は、「伝統」の『だるま』と「革新」の『秀ちゃん』両方のブランドの間で、いかに古いものを守りつつ新しいことに挑戦できるか常に考えています。一方では、光熱費も人件費もかけまくる。一方では、DX化やフードロス削減など、先進的なことにも取り組んでいます。最近は、M&Aの話も多いけど、企業には売らないと決めてるんですよ。昔は、父ちゃん母ちゃん僕ちゃんって言って「3ちゃん」って笑われていたけど、今は逆に価値があるし、かっこいいと思うんです。どれだけ海外展開やFC化が進んでも、本店だけは家業でいく。お金でブランドは買えても、教育や大切にしたい精神は買えませんからね。
種村 昔は料理人の中でも、ラーメン職人って下に見られとったやん。それが今は、寿司や天ぷらと並ぶ日本の代表料理になった。うちは今年創業52年で、事業継承の真っ最中。息子たちが受け継ぐ100年後の世界を想像しながら、味はもちろん、築かれてきた文化を次に渡すこと。それが俺たち二代目の役目やね。
屋台の味を今に伝える
長浜ラーメンの老舗

『煮たまごラーメン』(850円)
まろやかでトロミのある豚骨スープに、歯切れのいい細麺、とろける半熟煮たまごが合わさった人気の一杯。すっきりとした後味で、誰もがほっとする、飽きのこないラーメンだ

屋台で修業を積み、庶民に愛される味を貫く長浜ラーメンの担い手。実直で飾らない人柄が、ラーメンの味にもにじみ出ている。

長浜ナンバーワン 祇園店
福岡市博多区祇園町4-64
092-263-0423
11:30~23:00(日曜(~22:00)
休:なし
席:18席
P:なし
カード/不可、QRコード決済可
https://nagahama-no1.com/
博多ラーメンを牽引する
伝統と革新の一杯

『月見チャーシューワンタンメン』(1350円)
人気トッピング全部のせで『だるま』の魅力が詰まった贅沢な一杯。泡立つ濃厚豚骨スープと自家製極細ストレート麺が織りなす温故知新の一杯。月見で味変も楽しめる

老舗『博多だるま』を継ぎつつ、自らの名前を屋号にした『秀ちゃんラーメン』で挑戦を続ける。伝統と革新の間で揺れながらも、軸はブレないラーメン職人


博多だるま 総本店
福岡市中央区渡辺通1-8-25
092-761-1958
11:30~OS翌1:30
休:不定
席:38席
P:なし
カード/不可、QRコード決済可
https://ra-hide.com/
https://www.instagram.com/hakata_daruma_honten/
※2025年4月30日発売「福岡麺本2025」掲載分より転用しております。
「ふくナビストア」「AMAZON」にて好評発売中
ふくナビストア https://fukunavi.stores.jp/items/6809d8f9ae8e9e5ffa6a9f9d
AMAZON https://amzn.asia/d/5JvhSG0
