【福岡ラーメン物語 のぼせもん|86杯目 煮干専門あたふた 】
「仕事というより趣味の延長ですね。 ラーメンを作るのが毎日楽しいんですよ」
麺を上げて一杯のラーメンを作る。
その楽しさに魅せられてラーメンの世界に足を踏み入れた。
どうせやるなら他人の真似はしたくない。豚骨だらけの福岡で煮干オンリーの一杯を作りたい。

『醤油そば』(880円) / 厳選した 千葉県産煮干しや厚削り節、 羅臼昆布、椎茸などを使ったスープは動物系素材も化学調味料も不使用。 地元福岡の老舗醤油 「蔵『大久』 の再仕込醤油をベースにしたカエシ。素材の旨味があふれる煮干醤油ラーメンだ

「旨味100%を煮干で表現したいんです。 素材は生き物ですから味を安定させるのがとても難しいのですが、その分やりがいもありますね。お客様 には素材の複雑な旨味や味の変化も含めて楽しんでいただきたいです」
煮干専門あたふた
店主 三浦祐葵 / Miura Yuuki
1985年大分県大分市生まれ。大学卒業後、企業への就職を経てラーメンの世界へ。 数々の人気店で経験を積んだのちに、 2023年に独立し『煮干専門あたふた』を創業
豚骨ラーメンの街福岡に「非豚骨」の潮流が生まれて久しい。
ここ数年は豚骨ラーメン店よりも非豚骨ラーメン店の開業が増 えているが、「煮干専門」を謳う非常に稀有な存在の店が登場した。店の名は『煮干専門あたふた』。

店主の 三浦祐葵さんは大学卒業後にサラリーマンとなったが、あまりにも劣悪な労働環境に嫌気がさして退職。 ラーメン好きだったことから、「賄いでラーメンが食べられる」と軽い 気持ちでラーメン屋にアルバイト で入ったことが人生を変えた。
「最初はもちろん何もできませんでしたけれど、だんだん仕事を任せて頂けるようになって、麺上げをするようになったんですね。それがとても嬉しくて、ラーメンを作るのって楽しいな、ラーメン屋っていいなと思うようになりました」。

「すべて自分でやりたいので、 人に任せるとか店舗展開はまったく考えていません。 やりたいことや作りたいラーメンがまだまだたくさんあるので、夜の営業でそんなチャレンジをしても良いかなと思っています」
仕事が楽しく充実した日々を過ごしていた三浦さんだったが、ある先輩に「違う店で働くのも勉強になる」とアドバイスを貰ったことから 他の店で働くようになり、ますますラーメンの世界の奥深さにのめ込んでいった。
「食べ歩きをしたりラーメンに関 する本を読み漁る中で、神奈川にある『支那そばや」店主の佐野実さん の存在を知ったんです。佐野さんの 麺へのこだわりや素材への探究心、 スープとタレの緻密な割合などに 衝撃を受けて。そんなラーメンは九州にはなかったですから、僕もそういうラーメンを作ってみたいと思うようになりました」。

小麦の香りがする太麺は 『博多製麺処』 と共同開発。福岡県産「ラー麦」を使ったオリジナル麺だ。味の決め手となる煮干は千葉県産のカタクチイワシを厳選し、旨味を徹底的に抽出する。 醤油ダレは地元福岡の老舗醤油蔵 『大久』 の再仕込醤油を使う
豚骨ラーメンではなく透明な清 湯スープで、素材を生かした化学調味料に頼らないラーメン。しかしそれだけでは増えつつある他の非豚 骨ラーメンとの違いが打ち出しにくい。動物系素材を使わずに煮干オンリーのラーメンを作ろう。自分の進むべき道が見つかった。
千葉県産のカタクチイワシの煮 干や羅臼昆布などで出汁を取る。 化学調味料はもちろん、豚骨や鶏ガラなどの動物系素材も使わない。これは一般的なラーメンのセオリーとは異なる作り方で、厳選された 素材と高度な技術を要する。あえて難しいラーメン作りに三浦さんはチャレンジしているのだ。


『汁なし』(980円)/しっかりと乳化したスープやタレが絡んだ麺が食べ応え満点の人気メニュー。『ミニステーキ丼』 (380円) / 分厚くカットされた豚肉が乗った、 常連客は必ず頼む売り切れ必至の逸品。 残っていたら迷わずオーダーすべし
「ハマったらとことんやりたい性格なんですよ。しかしお客様にとってはそのラーメンが美味しいかどうかじゃないですか。なのでうちの店では化学調味料を使わないとか、 煮干は良いものを使っているとか 謳ってはいないんです。自分がどこ まで出来るのか試したいからそう しているだけなので」。 豚骨ラーメン好きの福岡の人たちに挑んだ、動物系素材不使用の醤油ラーメン。

煮干専門あたふた
【所】 福岡市博多区千代4-29-51河野ビル【営】11:00-18:00【休】日曜 【席】8席
【P】なし カード/不可
オープンして 一年足らずの新店ながら、早くも地元客やラーメンファンなどの支持を集める人気店になった。 福岡の非豚骨ラーメンの中でも、その存在感は着実に大きくなっている。 「仕事というよりも、もはや趣味の延長のようなものですね。人には任せたくないのでこれからもずっと厨房に立ってラーメンを作り続けていると思います。とにかく 毎日ラーメンを作るのが楽しいんですよ」。
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■取材を終えて
マニアックな視点を持つラーメン求道者
こういう仕事をしていると多くのラーメン店主さんとお話をする機会があるのです
が、意外にもラーメン屋さんは自分のラーメンのことしか知らない人が多いと感じます。しかし三浦さんは東京や県外にも足を運んでラーメンを食べ歩いたり、ラーメン に関する書籍を読んだりと、なかなかの「ラーメンマニア」だなと感じました。良質なアウトプットをするには良質なインプットが不可欠。 世の中にどんなラーメンがあるの
か、時代が欲するラーメンは何なのか。それを知らなければ人々に刺さる一杯は作れ
ません。三浦さんは多くの経験と引き出しをお持ちの方なので、 まだまだこれから
皆が喜んだり驚いたりするようなラーメンをきっと作ってくれることでしょう。

ラーメン評論家
山路力也 / Rikiya Yamaji
テレビ・雑誌・ウェブなど様々な 媒体で情報発信するかたわら、 ラーメン店のプロデュースなど、 その活動は多岐にわたる。「福岡ラーメン通信」でも情報発信中
掲載の内容は取材時のものです。取材日と記事公開日は異なる場合があり、メニューや価格、営業時間、定休日など取材時と異なる場合がありますので、事前に公式HPやお問い合わせにてご確認をお願いします。
