【福岡ラーメン物語 のぼせもん|87杯目 やひろ屋 】
「もっと美味しくしたいという思い。 自分が納得出来る味を追い続けます」
博多で愛されている身近な食材とは何か。豚骨ラーメンばかりの博多で他とは違う一杯を作りたい。ラーメンと向き合い続けてまだ五年。
長くて終わりのない戦いの真っ只中にいる。

『鶏そば』(840円) / 良質な九州産の丸鶏などを丁寧に長時間炊き上げた鶏白湯は、 臭 みがまったくなくクリーミーな味わい。人気製麺所『製麺屋 慶史』による縮れ麺がスープと絶妙に絡み合う。 鶏のふくよかな旨味があふれる一杯だ

「もっと多くの人にこのラーメンを食べて頂きたいですね」と語る店主の八尋正修さんと奥様の千佳さん。 明るく笑顔が絶えないアットホームな接客にファンも多い
やひろ屋
店主 八尋正修 /Yahiro Masanobu
1983年福岡県福岡市生まれ。高校卒業後、飲食の世界へ。 鉄板焼き店の開業を経て、2019年に間借りで『やひろ屋』を創業。 2023年に移転して実店舗を構える
ラーメンは作り手の数だけ味がある自由な料理だ。真っ白なキャンバスに絵を描くように、丼の中に想いを閉じ込める。ラーメンを作る人は誰しも、自分だけの一杯を求めて日々寸胴と向き合っている。 博多座の裏手、網場町で人気を集めるラーメン店『やひろ屋』。提供しているのは白濁した鶏スープの 『鶏そば』と、透明な醤油味の『中華そば』。店主の八尋正修さんは長年飲食業界に携わってきたがラーメン経験はなく、まったくの独学でこの味に辿り着いた。


『中華そば』(800円) / どこかノスタルジックな雰囲気の漂うすっきりとした味わいの醤油ラーメン。スープの美味しさをシンプルに味わいたい。 『ふくやの明太ごはん』 (600円)/ サイドメニューは定期的に新しいものが登場するので要チェック
「元々は鉄板焼き屋を営んでいたのですが、色々なものを作ってお出しするのが好きで、そこでラーメンも作っていたんです。お客様の中にはラーメンが目的で来られる方もい たりして、手前味噌ですが人気だったんです。その時のラーメンが今のラーメンの原型にはなっています」。
お好み焼きや鉄板焼きを中心に提供するメニューも増えていき、忙しい店だったゆえに昼夜営業で疲弊してしまった八尋さんは、一旦店を閉めることを決意。新たなスタ―トに選んだのがラーメン店だった。

義兄の店の2階を間借りする形でラーメン店を開業するやいなや評判を呼び、一躍人気店になった。 その後、物件探しをしている最中にコロナ禍となって一時休業を余儀なくされた。自分の生まれ育った場所にお店を出したいと物件探しを続け、地元である綱場町にようやく物件を見つけて店舗を構えた。提供するラーメンは九州産の鶏を使っ たオリジナルの鶏白湯だ。

「ラーメン屋さんはやり甲斐がありますが、楽しいことよりも辛いことの方が多いですね。ラーメンは準備や仕込みの 時間が営業する時間の何倍もかかるんです。 自分でやってみてラーメン屋は大変な仕事なのだと感じました」
「ラーメンをやるなら他とは違うことをやりたかったんです。博多はどうしても豚骨ばかりじゃないですか。だから豚骨以外の味にしようと。博多で身近な食材は何かと考え た時に、鶏を使って美味しいラーメンを作ろうと決めました」。

麺は福岡の人気製麺所『製麺屋慶史』によるもの。 メニューによって2種類の麺を使い分けている。 自慢のチャーシューはしっとり柔らかに仕上げる。九州産の丸鶏を丁寧に炊き上げたスープはしつこさは一切なく最後の一滴まで飲み干せる
使用する鶏は九州産のものを厳選し、醤油も地元のものを使う。麺は地元の製麺所にオーダーする。 八尋さんが今考える理想の味を形にすべく、日々改良を重ねることでラーメンの味は進化し続けているのだ。 「基本的に目指している方向は変わっていないんです。 どこかで食べたことのある味というよりも、他にはない味。自分が美味しいと思う、頭の中にイメージしている味を作っているのですが、それもその時々で段々変わっていくんですよね。今はこれが美味しいと思っていたとしても、自分の感覚も変わっていくのでまたそれに近づけていく。自分の納得がいくまで作り続ける、終わりのない戦いのようなものですね」。 ラーメン屋を始めて5 年が経った。豚骨好きの福岡の人たちにもしっかりと刺さる鶏白湯。老若男女幅広い人たちに受け入れられ、常連客も日に日に増えている。

やひろ屋【所】福岡市博多区綱場町4-14【営】11:30~14:30【休】土曜、日祝日
【席】13席【P】なし カード/不可
「お好み焼き屋の時とは違って提供するものがラーメンしかない、逃げられないという厳しさはありますね。しかし一つのことを突き詰めて極めていく、研ぎ澄ましていくというのは自分の性格にも合っているように感じます。 もっと多くの人に喜んで頂けるよう、これからも納得がいくまで作り続けていきます」。
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■取材を終えて
小さな積み重ねから生まれた美味しさ
「非豚骨」ブームが久しい福岡ですが、こちらのお店はブームの先駆けとして
鶏白湯や醤油ラーメンを提供していました。間借り時代のオープン時にも頂いてい
ますが、5年が経ってより磨きがかかった隙のない味わいに進化していると感じま
す。脇目も振らずに同じラーメンをひたすら作り続けるというのは、簡単なようでいて なかなか出来ることではありません。 昨日よりも今日、今日よりも明日。日々美味しくなるはずだと小さな改良を積み重ねていった結果の今のラーメンが、美味しくないはずがありません。そしてこのラーメンもまた過去の味になっていく。 次にこの店を訪れ た時にどんな風に進化しているのかが、 今から楽しみでなりません。

ラーメン評論家
山路力也 / Rikiya Yamaji
テレビ・雑誌・ウェブなど様々な 媒体で情報発信するかたわら、 ラーメン店のプロデュースなど、 その活動は多岐にわたる。「福岡ラーメン通信」でも情報発信中
掲載の内容は取材時のものです。取材日と記事公開日は異なる場合があり、メニューや価格、営業時間、定休日など取材時と異なる場合がありますので、事前に公式HPやお問い合わせにてご確認をお願いします。
