【福岡ラーメン物語 のぼせもん|89杯目 絶好鳥】
「美味い豚骨は福岡にたくさんある。僕は鶏白湯を究めていきたいです」
親の反対を押し切って料理人になった。中華料理の世界で腕を磨いていたが、大好きなラーメンの世界に魅せられた。大好きな鶏を使って豚骨ラーメンを超えたい。
福岡ならではの鶏白湯を作りたい。

『鶏ワンタン麺』(1150円)/地元福岡の『華味鶏』を丁寧に炊き上げたスープは、臭みがなく、クリーミーな味わい。人気のワンタンは長年の中華での経験が生かされた逸品。6割のオーダー率を誇る一番人気のラーメンだ

「将来の夢としては子ども食堂をやりたいんです。もっとお客様に来ていただいて儲けが出るようになったら、それを地元のお子さんたちに還元していきたい。そのためにももっと頑張らなければいけないと思っています」
絶好鳥
吉富大輔 /Yoshitomi Daisuke
1975年福岡県福岡市生まれ。高校卒業後 『辻調理師専門学校』で学び、 中国料理店 や大手外食チェーンで商品 開発を担当。その後久留米の 老舗『大砲ラーメン』で経験 を積んで独立。 2018年に箱崎で『絶好鳥』を創業。 2023 年に現在の場所へ移転
なぜ豚骨ラーメンは白いのか。それは強火で炊くことでスープの中の水と油が混ざりあって乳化しているからだ。つまり豚骨でも弱火で丁寧に炊けば透明なスープになるし、鶏であってもしっかり乳化させれば白くなる乳化した鶏のスープが「鶏白湯」だ。
そんな鶏白湯ラーメンで人気の『絶好鳥」がオープンしたのは2018年のこと。
豚骨ラーメン街である福岡で、いち早く鶏白湯に注目し、豚骨以外の選択肢を広げた先駆的存在の店だ。


『泡そばフロマージュ』 (1100円)/柔らかな口あたりの泡が浮いたスープにチーズがたっ ぷりと乗った新感覚のラーメン。 『貝柱のダイブ飯』 (100円) / 残ったスープにダイブさせるも良し、リゾット感覚でスープを注ぐも良しのサイドメニュー
店主の吉冨大輔さんは高校卒業後、親の反対を押し切って料理の道を志した。
大阪の専門学校でフレンチと中華を学び、東京で中華料理店や大手外食チェーンの商品開発にも従事した。その後父親が病気になったために帰福。地元で独立しようと考えた時に頭をよぎったのはラーメンだった。
「中華の経験が長かったので中華料理店も考えたのですが、果たしてニーズはあるのだろうかと。そんな時に自分が一番好きなのはラーメンだということに気づいたんです」。

中華料理の経験はあれどラーメンの経験はゼロ。 吉冨さんは久留米の老舗豚骨ラーメン店の門を叩き修業を直訴。 4年間勤め上げて独立することになったが、豚骨ラーメンは作らないと決めていた。
「福岡には美味しい豚骨ラーメン店がたくさんあるじゃないですか。そこで僕が豚骨をやる意味はあるのかなと。その頃、 福岡に鶏白湯はほとんどなかったので、 大好きな鶏を使って豚骨ラーメンには負けない一杯を作ろうと思いました」。
修業先で学んだ久留米の豚骨ラーメンのように、濃厚でありながらスッと食べられるような鶏白湯。しかし最初は自分が理想とするスープが作れなかった。

「毎日がとても楽しくてラーメン屋さんになって良かったと思っています。 移転して以前よりも店が小さくなったのですが、その分お客様との距離も近くなってコミュニケーションが取れるようになったのが嬉しいですね」
「修業先の久留米ラーメンのように熟成させて深みを出そうと鶏で呼び戻しをやってみたり、色んな銘柄鳥を取り寄せて色んな部位を入れてみたり、オープンして一年くらいは形が見えずに迷走していたように思います。 そんな時に『華味鳥』の水炊きを食べて、自分の中のイメージがはっきりと見えるようになりました」。

麺は福岡の人気製麺所『博多製麺処』と共同開発した低加水細麺を使用。 濃厚でありながらしつこさのない鶏白湯のスープは、“水炊き ” をヒントに福岡のブランド鶏 『華味鳥』 を使って鶏の持つ力強い旨味を極限まで引き出した
豚骨ラーメンに負けない鶏白湯を作るべく、福岡のブランド鶏である華味鳥の上品な味わいは生かしながらも、ラーメンのスープとして上品になり過ぎないようなバランスを目指した。長年にわたる中華料理とラーメンの経験と技術で、理想となる鶏白湯が完成した。
そこに合わせるのが自慢の「ワンタン』。福岡の豚骨ラーメン店でも馴染みのあるワンタンを、長年の中華の技術でブラッシュアップ。軟骨入りの餡を厚めの皮で包んだ存在感のあるワンタンが入った『鶏ワンタン麺』は客の6割がオーダーする人気オーダーメニューになっている。「これも豚骨ラーメンとの差別化の1つなんです。絶好鳥でなければ食べられないラーメンを出さなければ、 この街で豚骨ラーメンには勝てません。もっとたくさんの方にこのラーメンを食べて喜んでいただきたいですね」。

絶好鳥
【所】福岡市中央区高砂1-18-1【☎】070-7413-8889
【営】11:30-14:30(木~土曜 19:00~21:00 ※金曜~21:30)【休】月曜、不定【席】9席
【P】なし カード/不可
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■取材を終えて
確かな技術に裏付けされた一杯
数あるラーメン店の中で、 調理技術や理論を学んだり実践してきた経験を
持つ店主さんは意外と少ないものです。 調理技術はあっても美味いラーメンが作
れるとは限らないのがラーメンの面白いところ。 吉冨さんは名門『辻調』で中国料
理とフレンチを学び、さらに長年中国料理の現場などに立っていた方。私がオー
プン当初に食べた時に正直ピンと来なかったのは、料理界の常識に縛られて
作っていたからなのかも知れません。 しかし今のラーメンは迷いが取れてしっかり
とラーメンとして成立している。 まだまだ自分のベストの味には到達していないと
語る吉冨さん。 このラーメンがこれから先ますます進化していくのが楽しみです。

ラーメン評論家
山路力也 / Rikiya Yamaji
テレビ・雑誌・ウェブなど様々な 媒体で情報発信するかたわら、 ラーメン店のプロデュースなど、 その活動は多岐にわたる。「福岡ラーメン通信」でも情報発信中
掲載の内容は取材時のものです。取材日と記事公開日は異なる場合があり、メニューや価格、営業時間、定休日など取材時と異なる場合がありますので、事前に公式HPやお問い合わせにてご確認をお願いします。
