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【福岡ラーメン物語 のぼせもん|84杯目
クモノウエ 】

「骨と水だけなのに毎日味が変わる。 難しいからこそ楽しいです」

いつか必ず雨は止む。どんなに雨が降ろうとも雲の上は晴れている。逆境に抗うためにゼロから学んだラーメン作り。自分が作る一杯でたくさんの人が笑顔になった。止まない雨はないのだ。

「のり玉ラーメン」 (1050円)/ 羽釜を使い豚ゲンコツと水だけでとった熟成スープに、佐賀 一番摘み海苔と卵黄を乗せた人気の一品。『佐賀ラーメン いちげん。』 製のしなやかな細麺がスープと寄り添う、オリジ ナリティあふれる豚骨ラーメン

 

「コロナ禍中は先が見えなくて不安でしたが、 雲の上にはいつも太陽があって明るい未来があるという思いで『クモノウエ』という店名にしました。今後は自分のラーメンを教えて仲間を増やしていきたいと思っています」

 


クモノウエ 店主

岩下 輝 /Iwashita Teru

1978年福岡県北九州市生まれ。高校卒業後、陸上自衛隊へ。2007年『うどん満月』を創業。コロナ禍に『佐賀ラーメンいちげん。』で修業し、2021年 『クモノウエ』を開業。


北九州市八幡。2021年に創業するや否や注目を集めたラーメン店がある。店の名前は『クモノウエ』。スタイリッシュな店内で提供されるのは、どこかクラシカルな佇まいの豚骨ラーメン。厨房でリズミカルに麺上げをする恰幅の良い男性が店主の岩下輝さん。実は岩下さんは元々「うどん屋」さんだ。
「陸上自衛隊で10年勤めたあと、 独立したいと思って好きだったうどん屋さんで一年ほど修業しました。 そこで教わったことを基に自分なりに試行錯誤して開業しました」。
2007年に創業した『うどん満月」は地元北九州の人に愛される店となり、2店舗展開していたがコロナ禍が直撃し、1店舗を閉めざるを得なくなってしまった。
そんな時、友人が営む佐賀の豚骨ラーメン店で人手が足りないという話を聞いた。岩下さんは週に5日ほど入って手伝った。これまで麺が 意識の中心にあった岩下さんにとって、同じ麺料理でありながらスープと格闘するラーメンに心を奪われた。ラーメンに本気で取り組んでみたい。岩下さんの心は決まった。

「うどんと言えば麺ですし、ラーメンと言えばスープ。 同じ麺料理なのに向いている意識がまったく違うのが面白い ですね。どちらも難しい世界ですが、どちらも究めていきたいですね」

「本気で取り組むのなら教えるぞと言って貰って、佐賀のお店に数ヶ月住み込みで修業に入りました。丁寧にしっかりと教えて頂いて、そのあともスタッフが入れ替わりで修行させて貰いました」。
修業先の名は『佐賀ラーメン いちげん。』全国にその名が知られる人気店の豚骨ラーメンを学んだ岩下さんは、コロナ禍中に「クモノウエ」 をオープンした。目指す味はもちろん『いちげん。』だ。

3つの羽釜を使って継ぎ足しながら作るスープは、ふ くよかな旨味とほのかな熟成香が感じられるもの。麺 は修業先である『佐賀ラーメン いちげん。』の自家製 麺を使う。細麺ながらしっかりと茹できることで、しなやかな弾力のある食感になっている 。

スープの材料は水と豚の大腿骨 のみ。羽釜を3つ使って継ぎ足して旨味を熟成させる「呼び戻し」の技法で作る豚骨スープは、サラリとした口当たりながら豚骨の厚い旨味が広がる味わいに仕上がった。
骨と水だけで作る豚骨スープ。 同じように作っていても毎日味が変わってしまうのは、うどんではなかったこと。シンプルだからこその難しさに日々向き合っている岩下さん。迷った時は今も『いちげん。』 に出向いてアドバイスを貰う。麺も『いちげん。』の自家製麺を使っているが、出しているラーメンは『いちげん。』とは別のものだ。

「クモノウエラーメン」 (1350円) / 大ぶりのワンタンをたっぷりと乗せて人気の海苔と卵黄も入ったオールスターメニュー。「チャーシュー丼」 (380円) / 薄切りチャーシューと刻みチャーシューの異なる食感が楽しめる、 チャーシュー好きにはたまらない逸品

「やはり『いちげん。』さんの味が好きですしリスペクトもしているので、追いかけているのは間違いないのですが、僕が作るラーメンはやはり僕のオリジナルでありたい。佐賀ラーメンではなく北九州のラーメン、クモノウエのラーメンと言われるようになりたいですね」
オープン当初は佐賀 ラーメンと言われることもあったが、今ではオリジナルのラーメンとして多くのファンがついた。それでも岩下さんはまだ自分の理想のラーメンにはたどり着いていないと考えている。
「もっと爆発力のある味にしたいんですよ。毎日スープの出来が違うのがラーメンの面白いところ。 簡単な仕事って飽きるじゃないですか。難しいからこそどんどんラーメンにハマっている自分がいます。骨と水だけでどこまで出来るのかを究めていきたいですね」。

 

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■取材を終えて

食べるたびに味が深みを増していくラーメン

私が初めて『クモノウエ』のラーメンを食べたのはオープンして間もない頃。最初
はどうしても『いちげん。』 の影がちらついてしまって、美味しいのだけれどどこを目指 しているのだろうと思ったのが正直な感想でした。 しかし次、またその次と食べにくるたびにどんどんスープに深みが増していき、だんだん『クモノウエ』らしさが感じられるようになり、今ではオンリーワンの豚骨ラーメンになっているのではないかと思います。岩下さんとはラーメン店主さんとして出会ったので、 実はまだ「うどん満月』さんの方にはお邪魔していないんです。近いうちに必ずやうどんを食べに行きますね。もちろん『クモノウエ』のラーメンとハシゴして。

ラーメン評論家

山路力也 / Rikiya Yamaji

テレビ・雑誌・ウェブなど様々な 媒体で情報発信するかたわら、 ラーメン店のプロデュースなど、 その活動は多岐にわたる。「福岡ラーメン通信」でも情報発信中


掲載の内容は取材時のものです。取材日と記事公開日は異なる場合があり、メニューや価格、営業時間、定休日など取材時と異なる場合がありますので、事前に公式HPやお問い合わせにてご確認をお願いします。

クモノウエ

【所】北九州市八幡西区鷹の巣1-19-7
【☎】093-622-8330
【営】11:00-15:30        (金~日曜11:00~15:30/17:30-20:00)
【休】なし
【席】36席
【P】あり
カード/不可

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