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【福岡ラーメン物語 のぼせもん|37杯目 いちむじん 

「ご縁と絆をいただいた福岡で
ラーメンを作り続けます。」

福岡には縁もゆかりもなかった。ただただ豚骨ラーメンが大好きで、仕事を諦めて福岡にやってきた。本場の豚骨ラーメンを浴びるように食べて、ラーメン屋になることを決めた。たくさんのラーメンとたくさんの人に出会い、ついに自分の店を開くことになった。豚骨ラーメンによって導かれた福岡の街で、長いラーメン人生が始まろうとしている。

「豚骨らぁめん」(650円)/厳選した豚骨と鶏ガラを圧力鍋で炊き上げたスープは、滑らかでクリーミーな口あたり。自家製の細ストレート麺は、歯切れの良さとしなやかさを持ち合わせたもの。博多ラーメンの新たな形に挑戦した、次世代型の豚骨ラーメンが誕生した


いちむじん 店主

和田一平 / IPPEI WADA

1989年、高知県生まれ。愛媛で出会った長浜ラーメン店で豚骨ラーメンの魅力を知り、24歳で福岡へ。老舗ラーメン店や人気ラーメン店で修業を重ねて、2020年に念願の独立を果たしたばかり


地下鉄東比恵駅から歩いて10分。福岡空港の西にある榎田に新しく出来たラーメン店。濃厚ながらも臭みのないクリーミーな豚骨スープに、しなやかな食感の自家製麺。

「豚骨らぁめん全部入り」(880円)/自慢のチャーシューや味玉も乗ったお得な一杯。盛りつけからも丁寧な仕事ぶりが伺える

新店とは思えない完成度の高い一杯を作っているのは、30歳の若きラーメン職人、和田一平さん。老舗や人気ラーメン店で経験を積み、最後にこの場所にあった人気ラーメン店で働いていたが、その店が移転することに伴い、店舗を譲り受けて開業した。生粋の福岡人かと思いきや、生まれも育ちも四国高知。

土佐っ子の和田さんはなぜ福岡でラーメン店を開いたのだろうか。

「高校卒業後は地元で就職したんです。しかし愛媛で初めて豚骨ラーメンを食べてはまってしまって、本場の豚骨ラーメンを知りたくて福岡へ越してきました」

24歳の時に意を決して福岡へ。働きながら豚骨ラーメンを食べ歩く中で、いつしかラーメン屋をやりたいという思いが芽生えてきた。その中で昔ながらのラーメンで人気の老舗「福芳亭」のラーメンに感動し、ラーメン修業が始まった。

飲食経験がまったくなかった和田さん。当然洗い物からスタートした修業の日々。先輩たちから飲食のイロハを教えてもらい、スープも作らせてもらえるようにもなった。もっと勉強したいと思った和田さんは、自分が大好きだった人気店『ラーメン海鳴』「らぁめんシフク」でさらに修業を重ねた。

「オリジナリティがありオンリーワンの存在である海鳴さんでは、現場はもちろん工房や新店のオープニングなど、たくさんの経験をさせて頂きました。非豚骨も学びたいと思って修業したシフクさんでは、個人店ならではの大変さや大将のラーメン一杯にかける想いを学ばせて頂きました」

 

 

自分の好きな味、好きなラーメン店で修業を重ねた和田さん。自らが作るラーメンはこれまでの経験を生かしたものにしようと決めていた。しかし、経験豊富だからこそ迷いも出て試行錯誤が続いた。そんな時に大きかったのが結婚を予定している彼女の存在だった。

「自分の大切な人に美味しいと言って貰えるラーメンを作りたいと思ったんです。そこで試作につきあってもらって、彼女が満足する一杯で勝負しようと決めました」

麺は理想の食感と風味を追求した自家製麺。博多ラーメンの常識に縛られずに、オンリーワンの一杯を目指した
立体的な旨味を持つスープは豚骨の他に鶏ガラも入り、醤油ダレを合わせる。

クリーミーで重層的な旨味を蓄えたスープに醤油ダレ、自家製麺を合わせたラーメン。懐かしさと新しさが共存する、他にはないオリジナルの豚骨ラーメンが生まれた瞬間だ。

 

生まれ育った高知から離れた福岡で出逢った、多くの人たちとの大切な絆からこの店は生まれた。店名の「いちむじん」とは脇目もふらず一生懸命取り組むという言葉「一無尽」から名付けた。

「唐揚げセット」(280円)/リピーターが続出する人気のセットはもちろんラーメンにピッタリ

「僕は本当に凄い人たちにラーメンを教わることが出来ましたが、まだまだ実力が足りません。一生懸命ラーメンと向き合い続けて、いつしか師匠たちに負けないと胸を張って言えるような一杯を作って恩返しがしたいと思っています」

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■取材を終えて

無限の可能性を秘めた若き店主のラーメン

私がこの店を初めて訪れたのはオープン一週間後。取材をオファーして再訪したのはその3日後のこと。これまで長年にわたり何百軒ものラーメン店を取材して来ましたが、オープン10日後に取材をしたのは初めてかも知れません。私も大好きな『海鳴』『シフク』で修業した和田さん。彼のポテンシャルはきっとこの一杯では収まらない。だからこそ今この瞬間のラーメンを記録しておく必要があると思いました。彼の作る味はラーメンの街である福岡でどう評価されるのでしょうか。いつの日か偉大なる師匠たちのラーメンと肩を並べるような、福岡を代表する一杯になることを祈りつつ、今後も注目していきたいと思います。

ラーメン評論家

山路力也 / Rikiya Yamaji

テレビ・雑誌・ウェブなど様々な 媒体で情報発信するかたわら、 ラーメン店のプロデュースなど、 その活動は多岐にわたる。「福岡ラーメン通信」でも情報発信中


掲載の内容は取材時のものです。取材日と記事公開日は異なる場合があり、メニューや価格、営業時間、定休日など取材時と異なる場合がありますので、事前に公式HPやお問い合わせにてご確認をお願いします。

いちむじん

【所】福岡市博多区榎田2-3-1
【☎】092-436-2350
【営】11:00-22:00
【休】日曜
【席】21席
【P】5台
カード/不可喫煙/不可

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