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シティ情報ふくおか初のウェブ小説連載 三崎亜記氏作「博多さっぱそうらん記」第十六話

 

エピローグ

 

「あれから、もう二年も経ったとたいねぇ……」
かなめは、そう独り言をもらした。かつて、旧博多驛があった公園だ。
二年前のどんたくの日、博多市の怨念によって、ここに初代の博多驛の姿が出現した……。そんな過去など無かったことのように、今は、昔とは様変わりした姿だった。
今日は、博がデザインした「立体公園」を含めた再開発ビルのお披露目の日だ。公園の芝生広場に来賓や関係者が居並び、記念式典が開催されていた。
「ああ、忙しか、忙しか!」
相変わらず、世話役をおおせつかった社長は、無駄にちょこまかと動き回っては、立ち止まって汗を拭くを繰り返している。
「もう、社長はせわしなかねぇ。まちっと、でーんと構えときゃ、貫禄もあるとに」
かなめと共に手伝いに駆り出された大橋先輩も、溜め息をついて見守っている。婚活からあれよあれよという間に再婚、おめでたと続き、育児休暇から最近復帰したばかりだ。
「それでは、九州では初の立体公園をデザインされた新進気鋭のデザイナー、綱木博さんにご挨拶いただきましょう!」
RKBテレビの人気女性アナウンサーの司会者に促され、壇上に立つ博は晴れがましそうだ。新調したらしいネイビーブルーのスーツも、良く似合っている。二年の時が経ち、少年っぽさを残していた博も、すっかり「大人」の表情になっていた。
「この公園は、立体公園という特性を活かし、過去、現在、未来の博多が融合する場として、表現されています」
博多駅が沈没しかけた、あの「さっぱそうらん」の大騒動が終わってから、博のデザインコンセプトは、委員たちの賛同を得て、最終案として結実した。スロープでなだらかに連なった三層構造の公園だ。
「博多には、海に向けて開けた海運都市としての歴史、商人たちが自治を行ってきた町人の街としての歴史など、時代ごとに様々な顔がありました。この公園は、そこで過ごすうちに、自ずと、博多の様々な顔が発見できる場所になるようにデザインされています」
庭園部分には、博多湾をイメージした水辺空間が広がり、砂嘴でつながった志賀島や、能古島を模した「浮島」が浮かんでいる。
「地上から一階屋上へつながるスロープの壁面は、博多壁を模したイメージです」
戦乱の時代に博多の街は焼き尽くされ、灰燼と化した。その時、「太閤さん」のお達しで、焼け石や欠け瓦など、瓦礫を塀に塗り込んで再利用して素早い復興を後押ししたのが、博多壁だ。
一階屋上部分は、「町人の街、博多」をイメージしている。ゴムの廃材を利用したクッション性に富んだ床面は、子どもたちが素足になって遊べそうだ。博多の街特有の「流れ」という街の区割りを再現した色分けがされている。
「一階屋上部分と二階屋上部分をつなぐスロープの壁面は、献上博多織の柄が次第に変化してゆき、どんたくのしゃもじや、とおりもんの列になっています」
来賓たちは、博のプレゼンに引き込まれ、身を乗り出している。
「二階屋上のテーマは、現代の博多です。アジアの玄関口とも言われ、グルメにショッピングにと国内外から観光客を集める現在の博多の姿を、このフロアで表現します」
まさに、博多の新しいランドマークとして、博の公園は完成していた。だけどこの公園は、かなめと博にとっては、マイヅル様と約束した、福博の「融和」を象徴する場でもあった。
「この場所には、かつて博多驛があり、博多の賑わいの中心でもありました。ですが、九州鉄道発祥の地の碑が一つあるきりで、今の若い世代からは、ここが九州の鉄道の基点だったという記憶は消え去ろうとしていました」
この騒動に巻き込まれる前までは、かなめもそんな若者の一人だった。
「この場所から人は、希望と共に旅立ち、そして、多くの旅人たちを迎えました。この博多、そして福岡が発展する上において、かけがえのない場所だったのです。ですがそこには、たった一つの碑があるだけで、顧みられることもありませんでした。それは、あまりにも寂しいことだと思いませんか?」
そういって、博は来賓たちを見渡す。一瞬、かなめと目が合って、博が微笑んだ、
「その記憶を継承してゆくための象徴となるのが、この時計台です」
ベールがはがされ、公園のシンボルの時計台が、姿を現した。
「この時計は、ビル工事の過程で発掘された、明治の頃の初代博多驛の改札口にあったものです」
その発見を機に、博は、完成したデザインコンセプトに、急きょ変更を加えた。もっとも、時計が土の中から発見されることが「あらかじめわかっていた」博にとっては、最初から想定されていた変更だった。コンセプト提出の時点で、「工事によって、旧博多驛の重要な遺物が発見された場合は、デザインを変更する」と明記していたのだから。
「土の中で百年以上眠り続けていた時計は、修復されて昔の姿を取り戻し、今の時を刻みだしました」
そしてその時計を支えるのは、三本の台座。博多駅ビルの屋上にあった旧博多驛の三本の「ホームの柱」が移設され、時計を支える。支えるものもなく、むなしく空中に伸びていた三本の柱は、今は復元された時計を支える時計台となった。時計は百年ぶりに「今」と同期し、発展した福博の街に、新たな時を刻み出した。
ここを訪れた観光客たちは、福博の街を堪能して、博多も福岡も隔てなく発展した街の姿を楽しむだろう。その姿を見れば、博多市の怨念も、再び出現することはないだろう。この公園が、新たな「博多市の怨念」の「封じ」の拠点となったことは、かなめと博だけが知っている秘密だった。

久しぶりに会った博だったが、式典終了後も、来賓たちからひっきりなしに声をかけられて忙しそうで、近寄ることもできなかった。
「あら、かなめ。あんた、ここにおったとね」
おばあちゃんに呼び止められた。式典の後は、公園が初めて一般開放されるので、おばあちゃんも見学に来ていたみたいだ。その横には、おばあちゃんより少し年上らしい男性。「紳士」という言葉が似つかわしい、老いても瞳の涼やかさを失っていない人物だ。渋いワインレッドのジャケットにアスコットタイが似合っている。
「ほら、かなめ、挨拶せんね。博さんのデザイン事務所の会長さんたい」
「えっ、それじゃあ……?」
博を博多に送り出した人物。そして、おじいちゃんが亡くなった後に、おばあちゃんを陰で支えていたという人だ。
「あなたが、かなめさんですか」
穏やかな表情が、かなめに向けられた。おじいちゃんは、かなめが物心つく前に亡くなったけれど、おじいちゃんがいたら、こんな風なんだろうか。
「かなめさん、今回の公園プロジェクトの件では、お世話になりましたね」
「えっ? お世話って、私は何も……」
「彼から聞いていますよ」
「ど……、どげな悪口ば言いよったとですか?」
彼は、とんでもないと言うように首を振った。
「いえいえ、悪口だなんて。あなたがいたおかげで、自分は仕事をまっとうできたって、そう言っていましたよ」
「博君が、そげなことを……」
何だか、体というより心がこそばゆい気分で、もじもじしてしまう。そして、ずっと聞きたかったことを聞いてみることにした。
「あの……、博君を、博多に出向させる決定をしたのって、会長さんなんですよね? いったい、どうして?」
会長さんは、新聞記者のインタビューを受けている博の姿を見つめた。
「彼が青春時代を博多で過ごしたのは、履歴書で知っていましたが、なぜかかたくなに、博多での過去を語ろうとしませんでしたのでね。何か、トラウマを抱えているのでは……とは思っていたのですよ」
かなめは黙って頷いた。まさかその「トラウマ」を、自分が植え付けただなんて、とてもじゃないけど言えなかった。
「彼はデザインセンスも卓抜したものがあり、将来の事務所を背負って立つ人物になってほしかった。だが、何かが足りなかった。それは、私が教えることができるものではない。自分自身でつかまなければならないことでした……」
教え育てる指導者のまなざしが、かなめにも向けられた。
「だからこそ、敢えて彼が向き合うのを避けていた博多に、私の一存で送り込んだのです。それで、おばあさまに、様子を見てもらえるようにお願いしていたんですよ。そうしたら偶然にも、お孫さんが同級生だったというじゃないですか」
「それでおばあちゃん、あげん私に博君のことばけしかけたとやね?」
今さらむくれてみせるが、おばあちゃんはそっぽを向いている。
「彼も、この博多での仕事で、一皮剥けたようです。特に、掘り起こされた時計をよみがえらせるための根気強い折衝には、目を見張るものがありました」
博多市の怨念を消し去る……。博はマイヅル様にそう誓った。そしてそれが、自分自身の博多へのトラウマを完全に消し去る上で、必要なことだったのだろう。
「公園プロジェクトは成功し、あの時計と共に、彼の人生の本当の時が、この公園から刻まれだしたようですね」
三人で、公園のシンボルの時計台が時を刻むのを見上げた。
「そうたい、あんた、博さんがね……」
勢い込んで口にしたおばあちゃんに、会長さんは、イタズラっぽく口に人差し指をあてた。
「いや……、本人に直接報告させた方がいいでしょうな」
会長さんとおばあちゃんは、何かを企むように笑い合った。
「かなめさん。夜のパーティまで時間がありますから、少し、おばあさまをお借りしますよ」
「え、ええ、どうぞどうぞ。少しと言わず、ずうっとよかですよ」
なんだか、おばあちゃんの表情が、いつもよりいきいきしている。
「おばあちゃん、どこにお連れすると?」
「山王公園たい」
「ああ、お花見ね。桜も見頃やろうしね」
「お花見もばってん、あんた知らんとね。こないだから、さっぱそうらんの大騒ぎになっとるとに」
「え……何があったと?」
山王公園といえば、住吉神社と旧博多驛と共に、博多駅を守り続けていた「三角形」の一角だ。もしかしてまた、博多市の怨念が動き出したんじゃ……。
「山王公園に日吉神社のあろうが? ずっと曲がって建っとった境内の手水舎が、急にまっすぐに立ったとげなたい。そいけん、見物に行ってくるとたい」
「え? 手水舎が、まっすぐに……?」
「そげんたい。こないだまで、いくら直そうとしても斜めになってしもうとったとに、急にまっすぐになってしもうたとよ。縁起が良かっていうて、日吉神社さんは、大変な賑わいげなたい」
「それって……」
手水舎が曲がっていたのは、博多駅を守る三角形の結界の力の影響だった。怨念が生み出されなくなり、怨念から博多駅を守るという役割が必要なくなったことで、歪みが解消されたのだろう。
かなめは、恋人同士のように仲睦まじい二人の後ろ姿を見送った。

式典会場を離れ、かなめは大博通りに出た。まっすぐ先には、あの日の「沈没」を逃れた博多駅の駅ビルが、春の光を受けて輝いていた。
駅まで歩き、駅ビルの屋上に行ってみる。
「驛長さん……、やなかった、今は鉄道神社の神様やったね」
鉄道神社は、以前と変わりのない姿だ。だが、かつて「驛長」と呼ばれた存在が、今はこの博多駅を守る存在になった。怨念に突き動かされて歪んだ方向に向かっていたとはいえ、その博多駅を愛する心は本物だった。驛長が鉄道神社の祭神になったことで、今の博多駅も安泰だろう。
かなめは展望テラスに立って、大きく息を吸い込んだ。
博多の街を見下ろす。社長に「お客様の案内」を頼まれて、ロケハンに来て以来だ。博と再会し、博多の裏の「羽片世界」で「さっぱそうらん」に巻き込まれて、二年の時が経ったのだ。
玄界灘上空から降下してきた飛行機が、機影を大きくして、天神の空を飛んでいる。天神地区を新たなアジアの拠点とするべく再開発する「天神ビッグバン」計画も進行中だ。これから福博の街は、大きく姿を変えて行くのだろう。
かなめは博多の街が好きだ。だけど、その「好き」は、「羽片世界」とかかわってから、少し違ってきた。
住んでいる街を「好き」でいること。それは、簡単なようで簡単じゃない。街の過去を受け継ぎ、次の世代に「好き」を引き継いで行けるように、絶えず街の「今」と「明日」を見つめてゆくこと。それはとっても難しい。まさに「やおいかん」ものだ。そんな時に、「しょんなかたい」と諦めて、街の未来の傍観者となるわけにはいかない。かなめたち博多っ子の一人一人が、福博の街の未来を背負っていかなきゃならない。
それは、誰かを「好き」になることと一緒なのかもしれない。うわべだけの「好き」じゃなく、長い時間をかけて寄り添い合って、「好き」を一緒に作っていくことが必要なんだ。
一緒に「好き」を作って行く人……。具体的な「誰か」の姿を思い浮かべて、かなめは思わず、その想像を頭の中から振り払った。
「かなめ、やっぱりここにいたんだ?」
ようやく取材攻勢から解放されたらしい博が、駆け上がってきた。
「ど……、どうしたんだ、かなめ? 目を丸くして」
「ううん、何でもなかよ」
思っていた顔が目の前に現れて、少し狼狽してしまった。
「博君、うまくいったね」
博のデザインした公園は、博多っ子からも好評で迎えられていた。福博の街を回遊する観光客の拠点として、これから重要な役割を果たしてゆくだろう。
「マイヅル様との約束だったからな」
「そうやね。でも、マイヅル様って結局、どんな存在やったとやか?」
福博の街を、裏の世界からひっそりと守り続けていたマイヅル様とフクハクたち。あの騒動以来、二人の前には「羽片世界」が出現することはなかった。マイヅル様が実体を取り戻し、預かっていた力すべてを返したのだから当然のことではあったが、こうして二年も経つと、あの「さっぱそうらん」の騒動が、本当に自分たちの身に起こったことなのかどうか、はっきりしなくなっていた。もしかすると、博とかなめだけが心に作り上げた妄想だったんじゃないだろうか。
「福岡城は、昔は舞鶴城って言われていたんだよ」
博はかつて福岡城があった西の方角に顔を向けた。福岡城に「天守閣」が存在したかどうかは、今も論争があってはっきりしない。図面にも写真にも一枚も残っていない、幻のような謎めいた存在だった。まるで、マイヅル様のようだ。
「それじゃあ、もしかしてマイヅル様って、この福博の街ばつくった、福岡藩の……?」
「駅長に矢を放った時、マイヅル様は、水牛みたいな巨大な角の兜をかぶった鎧姿だったろう? あれこそまさに、戦国の世を戦い抜いた福岡藩の初代藩主、長政公の鎧兜姿なんだ」
「初代藩主の黒田長政公か……。なんかあんまり、印象がなかっちゃけど……」
博多の街は、黒田家が治めるようになる前から繁栄していたので、博多っ子にとっては、「街を作った人」という印象は薄い。むしろ、戦乱の後に復興させた「太閤秀吉」の方が、博多の街を作った人という認識だった。それに、父親が知略の人「軍師官兵衛」としてあまりにも有名になってしまったがために、ますます長政公の印象は薄い。
「仙台の街には、伊達政宗の銅像がある。そして熊本には加藤清正、鹿児島には島津斉彬の銅像。江戸時代の大きな藩はどこも、治世を讃えて、街に藩主の銅像がある。福岡藩だって五十二万石もあった大きな藩だ。それなのに……」
「そういえば、長政公の銅像って、福岡市で見たことがなかねぇ……」
博多にある黒田家関連の像といえば、博多駅前に立っている、黒田節でおなじみの母里太兵衛の銅像くらいだ。
「きっとマイヅル様は、長政公だった頃からずっと、福博の融和と発展を裏で支え、見守る人だったんだろうな」
見えない過去を重ね合わせるように、博は福博の街を見下ろす。
「長政公が博多で影が薄いのは、長政公の統治が始まる前から、博多の街は完成されていて、手出しができなかったからってのが定説だ。だけど長政公は、関ヶ原の戦いで、西軍に積極的な寝返りを働きかけて奮戦し、東軍勝利の影の立役者って言われている。その結果、五十二万石っていう大藩に封ぜられることになったっていう剛毅な人物だ」
「そげん肝の据わった人やったとやねえ。それに、父親の黒田如水は、あの有名な策略家の軍師官兵衛なんやけん、その血を受け継いだ策略家やったろうにねえ」
そんな人物が、単に博多商人に力負けして、博多の街を手つかずにしていたとは思えなかった。
「長政公はいくらでも博多の街の力を削いで、武士の街の福岡を発展させることができたはずだ。だけど、敢えてそれをしないで、博多の街を自由にさせていたんじゃないのかな」
マイヅル様も、今は心穏やかに、この福博の街を見守っているのだろうか。
「福岡と博多の間を流れる那珂川に二つしか橋を架けないで、枡形門をつくったのも、街を分断するためじゃない。博多の昔ながらの文化を守るためだったんじゃないのかな」
後世に銅像が残ることもなく、ただ街の発展を、身を引いて見守り続けた姿。それは、あのマイヅル様に似つかわしかった。
「今も、この福博の街ば守ってくれとるとやか?」
並んで立ち、どちらからともなく、手を握り合った。もうマイヅル様の声は聞こえてこない。だけど、どこからか見守っているマイヅル様のあたたかさを、確かに感じた。
「……報告することがあるんだ」
博の言葉を、かなめは心地よく、心の中にこだまさせた。
「このプロジェクトをきっかけに、福岡や九州とのつながりが強くなったから、事務所としても、この九州地区でのプロジェクトを、重点的に扱うことになったんだ。それで……」
博が、つないだ手に力を込めた。その手が、少し汗ばんでいるのがわかる。
「博多支所を作ることになったんだ」
どうやら、会長さんが「博から報告させる」と言ったことは、これのようだ。
「それじゃあ、これからもずっと、博多に?」
博が頷いた。雲間から光が差し込み、博はまぶしそうに目を細めた。その瞳は、中学生の頃の、かなめの憧れだった博の姿を確かにとどめていた。
「これからは、この博多で、自分の人生を歩いて行こうと思うんだ」
「そう。よかったやんね!」
「これからは、俺も、博多弁を使わなくっちゃな」
かなめは、つないだ手を離し、展望テラスの端まで歩いた。
目の前には、福博の街が広がっている。
様々な思いが交錯する。これから福博の街は、どんな発展を遂げるのだろうか……。そして、かなめと博の未来は?
博に、最初に使ってほしい博多弁……。やっぱり、あの言葉だ。
振り返ったかなめは、一つ深呼吸をして、思いを込めて告げた。
「博君、うちと、付き合ってくれんね?」
目を丸くした博が、顔を伏せた。そうして、意を決したように顔を上げた博は、とびっきりの笑顔を浮かべていた。
「よかよ!」

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「博多さっぱそうらん記」とは

福岡県出身で現在も福岡に在住する作家、三崎亜記氏による新作SF小説。

1890 年の「福岡市の名前を巡る騒動」と2016 年に起きた「博多駅前道路陥没事故」から着想を得て、「博多を名付ける勢力が勝っていた世界」=「羽片世界」がもし福岡市にあったとしたら、その勢力が現実の福岡をも転覆しようとしているために陥没事故が起こったとしたら、という物語を紡ぎだしました。仮想の「羽片世界」の面白さはもちろんですが、「せいもん払い」「どんたく」「玉せせり」など福岡独自の風習も物語の骨子に組み込まれて入るため、ご当地小説としても楽しんでいただける作品です。

 

著者について

三崎亜記(みさき・あき)
福岡県生まれ。熊本大学文学部史学科卒業。

2004 年に『となり町戦争』で第17 回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。デビュー作と『失われた町』『鼓笛隊の襲来』で直木賞の候補となる。そのほかの作品に「コロヨシ!!」シリーズ、『バスジャック』『廃墟建築士』などがある。

 

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