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【インタビュー】マカロニえんぴつ・はっとり「特効薬として気持ちを明るくするのは音楽の力」。

※シティ情報Fukuoka2021.1月号掲載(誌面とは写真と一部内容が異なります)

 結成から8年、着実に階段を上ってきたマカロニえんぴつが満を持してメジャー1st EPを発表。コロナ禍による自粛期間を跨いで「今年一年かけて制作していた」とフロントマンのはっとりが話す多彩な全6曲は、万華鏡のように表情を変える彼らの音楽そのものだ。

 

特効薬として気持ちを明るくするのは
音楽の力。

逃げるのではなく、「生きるぞ」
という思いで
立ち向かっていきたい

 

――今回のEPはいつ頃から制作が始まりましたか?

今年入ってからですね。コロナ禍で中断していた期間もあったので、1年かけて長く作っていた印象です。

 

――コロナ禍を経て、バンドのあり方や音楽との向き合い方を考える時間も多かったのではと思います。

去年はツアーが2本、夏フェスも多く出させていただいて、かなり走り抜けた感じだったので、いったん落ち着いて昨年を振り返る時間になりました。プラスに捉えるなら、僕的には良かったかなと思っています。ただ、医療現場の切迫した様子をニュースなどで日々見ていて、僕らはおとなしくせざるを得ない。孤独感と無力感を覚えました。そんな中でも、特効薬として気持ちを明るくするのは音楽の力だと思ったので、まずは自分を鼓舞しようと『生きるをする』の歌詞を書いたりして。メンバーと再会してからはクリエイティブな方に脳みそが切り替わっていきました。僕は一人で音楽を作るスタイルはそんなに好きじゃないんだなとも気付けて。

 

――まさに『生きるをする』には2020年の空気感がパッケージされています。タイトル通り、「生きるぞ」と能動的に思うことも今は大事なのかもしれません。

人間は気持ちが沈むとどんどん弱くなっていってしまう生き物だと僕は思うんです。死が迫っているからこそ、逃げるのではなく「生きるぞ」という思いで立ち向かっていく。生きるということ、そして死んでしまうということをセットでより考えた時期だったので、作品の中にはそういうテーマが漂っている気がします。そこには前作から愛というものが一貫してありますね。

 

――『生きるをする』の<よう、生きてるかい?>、<ただ、目を見開いて息をする>といった言葉など、ただただ生きることを肯定しようという気持ちが感じられます。はっとりさんにとって“生きるをする”は、イコール音楽ですよね。

そうですね。僕は音楽をしていないと何も楽しくないと痛感しました。「これをしている時が自分でいられる」って誰にでもあると思うんですよ。今年はそれを失った人が多いじゃないですか。絶望せずに「生きている」と何とか主張していきたいなと考えたので、今回のEPは底なしに生き生きしていると思います。そういえば、今回は立ち止まる瞬間があまりない曲が多いですね。『生きるをする』も怒涛の展開で、耳を休ませてあげない(笑)。『カーペット夜想曲』もそうですね。

 

――『溶けない』も、エモーショナルな曲だと思って聴いていたら途中から突然ファンクが始まります。

メジャーの最初に最大6曲というサイズでEPを出すことが決まって、フルアルバムだったら曲ごとに色を出せばいいけど、6曲でマカロニえんぴつを理解してもらうにはやはり足りないなと思ったので。だから色んな展開が多くなったのかな。シングルで理解してもらえるバンドじゃないと自分たちでわかっているので、どうにか6曲で全部の側面を見せたいという思いから、1.5曲分ぐらいの要素をそれぞれ1曲に詰め込んでいます。

――アレンジや展開は複雑ですが、聴き心地はストレスがありません。

そこは、この8年の中で一番課題にしていたところで。昔は全部の楽器が主張しているようなアレンジが多かったんですけど、ゴチャゴチャしてしまうというリスクもあるんですよ。歌を聴かせるのが第一で、その歌の後ろで楽器も歌っていたい。だけど、喧嘩しちゃうから3つ以上の楽器が同時に鳴らないようにしています。例えばギターが面白いフレーズを弾いている時は、鍵盤はコードに徹したり。そういった引き算のアレンジによって焦点がぶれない。お腹いっぱいになりすぎないというバランスを凄く考えるバンドだと思います。

 

――ラストを飾る『mother』では、EPのタイトル<愛を知らずに魔法は使えない>というラインが登場します。

どの曲の言葉も今回はよりパーソナルな部分が出たような気がします。まずは自分の心の影の部分を救いたいという気持ちが出ていますけど、この曲に関してはタイアップしているアニメの『ダイの大冒険』に出てくる人物たちもイメージしました。主人公のダイよりも、仲間のポップの方がイメージに近いかもしれないですね。

 

――ダイの仲間で、徐々に成長していく重要なキャラクターですね。

強がって人に弱みを見せないところが身近に感じられて。仲間のことを第一に思っているし、彼らの冒険が自分のバンドライフと凄くリンクしたし、ポップの歌になっている気がします。人それぞれ答えがわからなくなった時に帰る場所とかあると思うんですよ。僕にとってはルーツミュージックであるユニコーンとか、WeezerとかOasisとかで、心が弱った時は心の拠り所にしている音楽に帰っていくんだなと思ったし、バンドがメジャーに行くってなった時は、インディーズデビューした時の『アルデンテ』というアルバムが凄く聴きたくなって。もう一回当時のことを忘れないように、です。これからのキャリアの方が長くなるように望んでいるんですが、そうなった時にまたこの1枚に、この曲に戻りたいなという思いもあります。楔を打てた曲ですね。

 

――そして、春からはホールツアーがスタートします。

ライヴを観に行くのが久しぶりというお客さんに、その緊張感を感じさせないライヴにしたいですね。まっさらな状態で楽しんでほしい。僕らも今回こういった楽しい作品を作れたので、全部を委ねてもらえるような高揚感のあるライヴをしたいと思っています。

■マカロニえんぴつ
’12年、神奈川県で結成。’17年よりはっとり(vo&g / ※写真)、高野賢也(b)、田辺由明(g)、長谷川大喜(key)の現体制となる。エモーショナルな歌声と多彩な音色を組み合わせたバンドサウンドで注目を集める。’19年9月にリリースしたミニアルバム『season』はオリコン週間総合にてトップ5入りを達成し、リリースツアーは全公演ソールドアウト。そして’20年11月、メジャーデビューを果たした。

RELEASE / LIVE

発売中
●EP『愛を知らずに魔法は使えない』
TOY’S FACTORY/通常盤(CD) 1800円
初回限定盤(CD+DVD) 3000円

 

■全国ホールツアー「マカロックツアー vol.11~いま会いに行くをする篇~」
4月10日(土) 東京 / オリンパスホール八王子
4月15日(木) 北海道 / カナモトホール
4月17日(土) 北海道 / 函館市民会館 大ホール
4月21日(水) 東京 / LINE CUBE SHIBUYA
4月24日(土) 愛知 / 名古屋国際会議場センチュリーホール
4月25日(日) 石川 / 本多の森ホール
4月29日(木) 静岡 / アクトシティ浜松 大ホール
5月2日(日) 広島 / 広島上野学園ホール
5月3日(月) 福岡 / 福岡サンパレス ホテル&ホール
5月7日(金) 宮城 / 東京エレクトロンホール宮城(宮城県民会館)
5月9日(日) 岩手 / 岩手県民会館 大ホール
5月13日(木)、14日(金) 大坂 / オリックス劇場
5月16日(日) 愛媛 / 松山市民会館 大ホール
5月23日(日) 神奈川 / 横浜アリーナ

※ツアーの詳細は公式ホームページを参照

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