むにゃむ物語 第一章 むにゃむがやってきた日
ここは大分県宇佐市安心院町(あじむまち)上市(かみいち)。
山に囲まれた、おだやかなこの山里に、
ある冬の日、びっくりするほどの
たくさんの雪が降りました。
しんしんと降りつもった雪は、
山も、広い、広い麦畑も、道も、家も
そして山里全部をすっぽりと白く包んでしまいました。
どこを見ても真っ白です。
そんな真っ白な、真っ白な雪の中に一軒のお家がありました。
小さな子供たちが窓の外を眺めていると――
『あれ?』
遠くの山のほうに、なにか小さく動くものが
『なにかしら?』
『なぁに?どこぉ?』
小さな、小さな、雪のかたまりが
ぴょんぴょん。
ぴょんぴょん
ぴょんぴょん、ぴょん!
『うさきかしら?』『雪うさぎだよ!!』
ふたりはじっと、
その真っ白くふわふわのものが
近づいてくるのをじっと見守っていました。
ぴょんぴょん・・・
ぴょんぴょん・・・
ついに、遠くの山から
ふたりのおうちの近くまでやってきました。
『おかあさーーーん!』
『見て見て!お庭になにかいる!!』
きっと雪を被ったうさぎだよ!
と、みんなでじっと見ていると・・・
雪の中から、ぴょこん!
また少し、飛び跳ねて
ぴょんぴょん!
ひざまで積もった雪の中を、一生懸命こちらへむかってきます。
ふたりは大慌てで外にでました。
『あなたは、だぁーれ?』
『何処から来たの?』
いくら声をかけても、返事はありません。
一生懸命、本当に一生懸命、二人の方へ向かってきます。
そしてやっとのことで・・・
ふたりの足元まで、たどり着きました。
おかあさんも一緒にのぞきこみます。
すると
雪の中から、ぴょこん‼
覗いたお顔は、
真っ白・・・
ふわふわ・・・
まーんまるな、
見たこともない、小さな・・・小さな・・・いきもの
「わぁ・・・」
ふたりは大急ぎで雪を払って、毛布でくるみ、あたたかい部屋の中へ・・・
すると、その子は安心したのか、
「むにゃ・・・」と、小さな声でつぶやきました。
「むにゃ?」
おかあさんがその小さなふわふわのいきものを見ると
「むにゃ・・・・・・むにゃ・・・・・・」
と、つぶやきながらすやすや眠ってしまいました。
お母さんは、くすっと笑って、
「あなたのお名前は、むにゃむね。」
と、小さな頭をそっとなでました。
こうして、むにゃむの暮らしが始まりました。
むにゃむは、のーんびり・・・安心院のお山を眺めるのが大好きでした。
毎日、気ままに、マイペース・・・
楽しいこととおいしいものがだーい好き。
春は、満開のお花と遊び、
夏は、涼しい風とたわむれる。
安心院で実った秋の味覚をほおばり、
冬になると、雪の上でごろん、ごろん。
むにゃむは何をするにも、
とにかくゆっくり、ゆっくり、マイペース。
朝起きるのも、
『むにゃむにゃ・・・もうちょっと、あと少し・・・』
歩くのも、
ぽて・・・ぽて・・・ぽて・・・ぽて・・・『ちょっと休憩。』
ふと気がつくと、
すやぁ・・・すやぁ・・・。
いつの間にか、お昼寝です。
ふたりの子供達も、おかあさんも・・・
里の人たちも、みーんな、そんなむにゃむが大好きです。
畑でお昼寝!
野原で日向ぼっこ!
木陰でぼーっとしていたり。
「むにゃむがいるよ。」
「ほんとだ。」
「かわいいねぇ。」
むにゃむはみんなに見つかるたびに、
「むにゃ……」と、小さく笑います。
不思議なことに、むにゃむがいると、みんな笑顔になります。
忙しくしていた人も、疲れていた人も、むにゃむがそばにいると
なんだか少しだけ元気になります。
むにゃむは、何か特別なことをするわけではありません。
ただ・・・そこにいるだけ。
それだけで、みんなの心をホッコリさせて・・・そっと包んでくれる。
“マイペース”でいいんだよと微笑んでくれる。
そんなある日・・・
大好きな安心院の山を眺めていたむにゃむ。
ふと、『あの山の向こうにはなにがあるのかなぁ・・・』
とぼんやり考えました。
子供たちに聞くと
『とっても楽しい所があるのよ!』
『いろんな人が住んでいるの!』
『おいしいレストランもあるし・・・』
ふたりは口々に教えてくれました。
おいしいものや楽しいことが、だーい好きなむにゃむ。
楽しそうに様子を話すふたりを見て
その町にすごーく行ってみたくなりました。
しばらくしたある日、
『ちょっと遊びにいってくる!またいつか戻ってくるから!』
そう言って、むにゃむは、
おかあさんとふたりの子供たちや里の人達に、
しばしのおわかれを言いました。
知らない景色を眺めながら、ぽて・・ぽて・・
ゆっくり、ゆっくり。
山を越えて・・・たどり着いた街。
むにゃむは、とっても・とっても賑わっている
お店をみつけました。
そこには、たくさんの人と、
かわいいものであふれているところでした。
ひょっこり、むにゃむがお店をのぞくと
「かわいい!」
「ふわふわ!」
「なんだか、癒される・・・」
みんながむにゃむを取り囲んで、
笑顔になりました。
むにゃむはちょっぴり照れながら、
「むにゃ・・・・・・」
と、小さくつぶやきました。
ここは・・・『ハウズ』
むにゃむは、
ここで暮らすことにしました。
安心院の雪山からやってきた、ふわふわのちっちゃなむにゃむ。
今日も、ゆっくり。
明日も、のんびり。
急がず、あわてず、むにゃむペース。
ぽて・・・ぽて・・・・・・
と、ハウズをお散歩です。
もしかしたら今日もお店で
「むにゃ・・・・・・」
と、ひと休みしているかもしれません。
むにゃむの物語は、まだつづきます。