【大分県 安心院応援プロジェクト】安心院ぶどうを「100年先」へ『安心院ぶどう部会』がつなぐ未来。

安心院ぶどうを「100年先」へ
『安心院ぶどう部会』がつなぐ未来。

安心院ぶどう部会

大分県宇佐市安心院町(あじむまち)は、県内有数のぶどうの産地。夏になると、旬のぶどうを求めて多くの人がこの町を訪れます。

なかでも、安心院のシャインマスカットは全国的に注目を集めており、2026年7月3日の初競りでは、1房(約700g)が過去最高値の10万円を記録。さらに、この日に出荷された安心院ぶどう全体の平均価格も1kgあたり8,267円と過去最高を更新するなど、名実ともにトップブランドとしての評価を確立しています。

こうした高品質なぶどう作りと、安心院のブランド価値を支えているのが、約100戸の生産者からなる「安心院ぶどう部会」です。品質向上や栽培技術の共有はもちろん、ブランドの認知度を高める広報活動や、次世代の担い手育成にも力を注いでいます。

安心院ぶどう部会の様子

今回は、中山農園さんを訪ね、2026年3月に部会長へ就任した中山敦(なかやま あつし)さんにお話を伺いました。

安心院のぶどうが歩んできた歴史や、ブランドを支える日々の栽培へのこだわり、そして次の世代へとつないでいきたい産地の未来について伺いました。

中山部会長インタビュー

西日本を代表するぶどう産地へーそして直面した存続の危機

安心院でぶどう栽培が始まったのは、1966(昭和41)年のこと。国の事業を活用し「西日本一のぶどう団地をつくろう」という大きな志のもと、山林などを切り拓いて一大産地づくりがスタートしました。

盆地特有の激しい寒暖差にも恵まれ、当初のデラウェアから、時代に合わせてピオーネなどの大粒品種も導入。最盛期には300戸以上の農家が立ち並び、共販(共同販売※)売上は約8億円に達するなど、西日本を代表するぶどう王国へと登り詰めました。

デラウェア

デラウェア

小粒な実に、濃厚な甘みと爽やかな酸味が詰まった定番品種。種がなく、簡単に皮からつるりと押し出せるので、子どもからお年寄りまで安心して楽しめます。

ピオーネ

ピオーネ

「巨峰」と「カノンホール・マスカット」を交配して生まれた大粒品種。爽やかな香りと濃厚な甘み、引き締まった果肉が特徴で、自家用から贈答用まで高い人気を誇ります。

しかし、時代の変化とともに生産者の高齢化や後継者不足が深刻化。耕作放棄地が増え、従来品種の価格低迷も重なり、産地の規模は縮小の一途をたどりました。

2018年には、ピーク時に約8億円を誇った共販売上が1億8,000万円へと激減。

「このままでは半世紀以上続いた安心院のぶどうが途絶えてしまう」という、存続を揺るがす大きな危機に直面していたのです。

💡※ 共販(共同販売)とは?

個々の農家がバラバラに販売するのではなく、JAなどを通じて農家全体で一括して出荷・販売する仕組みのこと。まとまった量と統一された高い品質を揃えて出荷することで、東京の大田市場や高級専門店に対して強い価格交渉力を持ち、「安心院ぶどう」としての高いブランド価値と安定した価格を守る大きな力になっています。

シャインマスカットを導入する決断と覚悟

そんな状況を変えるきっかけの一つとなったのが、2008年ごろからのシャインマスカットの導入です。後に部会長を務めた小野次信さんらが現地で試食し、そのおいしさと将来性に着目。まだ他の産地が様子見をしていた時期に、全国から約300本の苗木を集め、いち早く栽培に乗り出しました。

シャインマスカットのハウス

ぶどうは苗木を植えてからまともに収穫できるまでに、3〜4年もの月日がかかります。その間は実質的に収益が得られないため、新品種への切り替えは農家にとって非常に大きなリスクと覚悟を伴う決断でした。

それでもシャインマスカットの将来性を信じ、産地を挙げて栽培を推進したことが、現在の安心院ぶどうの評価を高める大きな一歩となりました。

品質へのこだわりと、チームで育む安心院ブランド

その後は、生産量を増やすことだけを目指すのではなく、「量より質」を大切にする方針へと転換。東京の高級果実専門店にも自ら足を運び、着実に販路を広げてきました。こうした一つひとつの取り組みが実を結び、共販売上は3億円まで回復。いまの安心院のぶどうへの高い評価につながっています。

高い品質を維持できる背景には、生産者同士の密な情報共有があります。中山地区や平山地区にはぶどう農家が集まり、とくに中山地区では15〜16名の生産者が出荷量・金額・品質の面で産地を強力に牽引しています。

農家同士の距離が近く、栽培技術や道具について相談したり、SNSで情報を交換したりすることも日常的。お互いに学び合い、高め合えるオープンな関係性も、安心院のぶどうづくりを支える大きな魅力の一つです。

麦わらと堆肥で、ぶどうが喜ぶ土づくり

部会全体で品質向上に取り組むなか、中山さんも日々の栽培にさまざまな工夫を取り入れています。なかでも大切にしているのが、ぶどうが元気に育つための土づくりです。

近隣で焼酎・清酒用の大麦を育てる農家から麦わらを譲り受け、ぶどう畑に敷いています。土の乾燥を防ぎながら、通気性や保湿性を保つためです。稲わらに比べて水分を含んでもベタつきにくいことも、麦わらを使う理由の一つだといいます。

土づくりの様子

さらに、収穫後には、約8トンもの堆肥を投入。重機を使って土に混ぜ込むことで、ミミズや有用な微生物が活動しやすい環境を整えます。そうして土の状態を整えておくことで、春にはぶどうの根が伸びやすい、ふかふかの土壌になっていくのです。

おいしいぶどうは、実がなってから手をかけるだけでは育ちません。毎年の土づくりを大切にすることが、健やかなぶどうを育てる第一歩になっています。

一房ずつ確かめる。おいしさを支える糖度測定

中山さんが大切にしているのは、土づくりだけではありません。収穫前には、シャインマスカットの糖度を一房ずつ測定しています。

安心院ぶどう部会では、糖度18度以上を出荷基準の一つとしています。ただ、シャインマスカットは西日などの日差しの当たり方によって、十分に甘くなっていなくても黄色く色づくことがあります。見た目だけでは、甘さを見極めるのが難しいのです。

糖度測定の様子

そこで中山さんは、一房ずつ屈折糖度計(くっせつとうどけい)で糖度を確認しています。ハウスの片側だけでも、その数は3,000房以上。基準に届いていない房は収穫を後日に回し、糖度が上がるのを待ちます。

「『まあ、いいか』で妥協することは絶対にしない」と中山さん。

時間も手間もかかる作業ですが、おいしいぶどうを届けるために欠かせない工程です。
一房ずつ丁寧に確かめる中山さんの姿勢が、食べる人の満足につながり、安心院ぶどうへの確かな信頼を育んでいるのです。

大粒にこだわるのは、食べたときの心地よさのため

糖度と並んで、中山さんがこだわっているのが粒の大きさです。

粒が大きいと皮がパリッと切れやすく、口に残りにくい。食べたときの心地よさにもつながるといいます。東京・大田市場でも、こうした大粒で品質の高いシャインマスカットが評価されています。

安心院のシャインマスカット

大きく形のそろった粒を育てるには、細やかな手入れが欠かせません。開花期の早い段階から房の形を整え、ハサミを使って一粒ずつ形や並びを調整していきます。甘さだけでなく、見た目の美しさや口にしたときの食感まで考えながら、一房一房を丁寧に仕上げています。

安い買い物ではないからこそ、お客さんにそれだけの価値があると思ってもらえるものを作りたい。

せっかく選んでもらったぶどうだからこそ、食べたときに「おいしい」と感じてもらいたい。中山さんの言葉からは、そんな思いと、日々の手入れを大切にする姿勢が伝わってきます。

中山さんのぶどう畑が一望できる丘から撮影*中山さんのぶどう畑が見渡せる丘から撮影

これからの安心院を支える、次の担い手たち

安心院ぶどう部会がいま最も力を入れている取り組みの一つが、次世代の担い手育成です。宇佐市とJAが連携する「宇佐市ファーマーズスクール」では、2年間の実践研修を通して栽培技術を学べるほか、農閑期(のうかんき)には確定申告や簿記、経営学まで用意されており、農業を長く続けていくための総合的なスキルが身につけられる仕組みが整えています。

こうした手厚い支援体制もあり、現在では約100名の部会員のうち30〜40代を中心とする若手・後継者が約30名を占めるなど、産地に新しい風が吹き込んでいます。

就農支援・研修の様子

一方で、新規就農者が直面する最大の壁が「収穫・収益が得られるまでの3〜4年間をどう乗り越えるか」という現実的な課題です。

そこで部会では行政とタッグを組み、ベテラン農家のぶどう畑を新規就農者にスムーズに貸し出す「リース」の仕組みづくりを進めています。栽培技術を学ぶ場だけでなく、安心して就農を始め、末長く営農を続けられる環境づくりこそが、産地の未来を支える大きな鍵となっています。

新しい品種にも目を向けながら、安心院ぶどうを100年先へ

現在の主力であるシャインマスカットだけに頼るのではなく、安心院ぶどう部会では次世代の赤系品種「サニーハート」などの情報収集も進められています。苗木の管理ルールや植え替えのリスクを慎重に見極めながら、安心院の未来にふさわしい選択肢を模索する日々です。

そんな部会を率いる部会長の中山さんは、自身の役割を「小学校のPTA会長みたいなものだよ」と朗らかに笑います。しかし、その気負わない言葉の奥には、先人たちが半世紀以上かけて築いてきた伝統とブランドを、次の時代へと確実に引き継いでいこうとする強い想いが感じられます。

中山部会長インタビュー

先人がつないできた歴史を、100年先までしっかり届けていくのが、自分たちの世代の仕事です。

最高品質のぶどうを育てること。その価値と信頼を守り、安心院の魅力を全国へ届けること。そして、新しく挑む若い担い手たちが安心して未来を描ける環境をつくること。

そのすべてに挑戦する安心院ぶどう部会は、100年先の産地の姿を見据えて、これからも歩み続けます。


■安心院応援プロジェクト

安心院応援プロジェクト

このたびアプライドグループで、大分県宇佐市安心院町の魅力を発信する「安心院応援プロジェクト」がスタートしました。

安心院は、豊かな自然や歴史文化など、多くの魅力があふれる地域です。地域の方々の声や安心院のさまざまな魅力を取材し、コンテンツとして発信していきます。

安心院応援プロジェクトの取り組みにぜひご注目ください!!

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