【大分県 安心院応援プロジェクト】人を笑顔にするぶどう農園「たすくファーム」の描く未来
「2時間ゆっくり過ごせる」体験型ぶどう農園へ!
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大分県北部、山々に抱かれた宇佐市安心院町(あじむまち)。古くからぶどうの産地として知られるこの町は、夏になるとあちこちのぶどう農園に甘い香りが漂い、収穫の季節を迎えます。
そんな安心院町で、大分農業文化公園ICからほど近い場所にあるのが「たすくファーム」さんです。

たすくファームさんでは、シャインマスカットを主力に、ピオーネ、ナガノパープルを育てており、収穫期には直売やぶどう狩りも行っています。
今回は、代表の後藤勇人(はやと)さんに、これまでの歩みやぶどう作りへのこだわり、そしてこれから目指す農園の姿についてお話を伺いました。
陸上に打ち込んだ学生時代。いつも近くにあったぶどう畑。
安心院出身の後藤さんは、中学時代、陸上(駅伝)に打ち込んでいました。
当時の陸上部では、地域で観光に携わる方のご家族がコーチを務め、そのご子息も練習を手伝いに来てくれるなど、地域の方々に支えられながら競技に取り組んでいたそうです。その後、高校は大分市内の駅伝強豪校へ進学し、そこでも駅伝を続けました。

駅伝に青春を捧げた学生時代でしたが、後藤さんの日常には、生まれた時からいつも「ぶどう畑」がありました。実家は、安心院でぶどう栽培が始まったころから続くおよそ60年の歴史を持つ農家だったからです。
「この時期に枝を切って(剪定)、冬には土づくりで堆肥を入れて」。
そんな一年を通じた作業の流れや、大まかなイメージは、子どものころから自然と身についていたといいます。
地区の農家さんたちが集まり、ビニールハウスの張り替えを助け合いながら手伝う光景も身近なものでした。後藤さん自身も、その手伝いに加わっていたそうです。
農業を仕事にしようと意識するのはもう少し先のことですが、こうした日々が、後藤さんにとっての農業の原点になっていたということです。
会社員から、もう一度安心院へ
高校卒業後、大分県内の会社に就職し、会社員としての日々を過ごしていた後藤さん。
大きな転機となったのは、お父様の他界でした。
「一人で農作業を続けるお母様を支えたい」という想いから安心院へと戻り、実家のぶどう農園を手伝い始めます。
しかし、実家を手伝う中で、後藤さんは一つの未来を見据えます。
「実家の農園を大切に守りながら、自分自身も農業をしっかりと身に着け、新しい道を切り拓いていきたい」
と、独立して取り組むための道を模索し始めました。
そんな想いを抱いていたころ、後藤さんのもとに、新たな挑戦へとつながる一つの話が舞い込みます——。

「農業を仕事にする」きっかけ。ひとつの農園との出会い
実家から車で5分ほどの場所にあったのが、「北大農園(北大観光由布見台農園)」です。長年この農園を営んできたオーナーは当時88歳。高齢となり、後を継いでくれる人を探していました。

実は、後藤さんのお母様が以前この農園でアルバイトをしていたことがあり、そのご縁から、引き継がないかという話が持ち上がっていたといいます。
そこで後藤さんは、まずは1年間お手伝いとしてこの北大農園に入りました。
ぶどうの剪定や房づくりといった栽培の仕事を覚えるだけでなく、農園をどう運営するのか、育てたぶどうをどう販売するのか。実際の現場で働きながら、栽培から経営までを経験していきました。

そして1年後、後藤さんは事業承継という形で農園を引き継ぎ、「たすくファーム」の歴史が始まりました。
このようにして、農家として独立した後藤さんですが、驚いたことに、小学校の卒業アルバムには「将来は農家になっている」と書いていたのだそうです。思いがけない出会いから始まった農園も、振り返れば必然だったのかもしれません。
「たすく」に込められた家族と地域への思い
新たなスタートにあたり、後藤さんが農園につけた名前が「たすくファーム」です。
その由来は、息子さんの名前に使われている「丞(ジョウ、たすく)」という漢字。もともとこの文字には「人を助ける(支える)」という意味があります。

「自分たちがつくる食べ物を通じて、人や地域の役に立ちたい」
「食べた人に喜んでもらいたい、楽しんでもらいたい」。
そんな温かな願いを息子さんの名前に重ね、親しみやすさを込めてひらがなで「たすく」と名付けました。

人の役に立ち、笑顔にしたい――。後藤さんは美味しいぶどうを育てるその先に、食べる人や地域との温かなつながりを見据えていたように思います。
シャインマスカットとナガノパープルを2枚看板に!
現在、たすくファームで栽培しているのは、シャインマスカット、ピオーネ、ナガノパープルの3品種です。
中心となっているのはシャインマスカットで、園内をいくつかの区画に分け、加温ハウスなども組み合わせながら栽培しています。
収穫時期をずらすことで、7月上旬から秋にかけて長い期間ぶどうを届けられるよう工夫しているそうです。
そして、後藤さんが現在、特に大切に育てているのがナガノパープルです。皮ごと食べられる黒系のぶどうですが、九州では梅雨や夏の雨で実が割れやすく、栽培がとても難しい品種とされています。

周囲の農家が栽培をやめ、木を切ってしまうケースもあるなか、後藤さんは育て続けています。シャインマスカットと並ぶ「皮ごと食べられる二大看板にしたい」という考えがあるからです。
見た目の大きさより、本当に美味しい「味」を
シャインマスカットといえば、大粒で見栄えの良いものが人気です。市場では、1粒22〜23gほどの大きな粒が評価されることもあります。
一方、後藤さんが目指しているのは、ただ大きなぶどうをつくることではありません。
粒を大きくしすぎると、水分が増えて味が薄くなることがあるためです。だからこそ、見た目の大きさよりも、食べたときの味や香りを大切にしています。

そこで、たすくファームさんでは 15g前後 を一つの目安にしています。 目指すのは、糖度18度以上 のしっかりとした甘み。そこに薄い皮と豊かな香りを合わせ、食べたときのバランスを大切にしています。
「見た目の大きさ」ではなく、「一口食べたときにどう感じるか」。
後藤さんが追い求めているのは、見た目のインパクトではなく、食べた人が素直に「おいしい」と感じるぶどうです。
一年に一度だからこそ、試行錯誤の連続
ぶどう作りの難しさは、収穫が年に一度しかないことにもあります。
野菜のように何度も試して結果を比べることができず、「これをすれば、この味になる」という完全なマニュアルもありません。
後藤さんは、岡山などの有名なぶどう産地にも足を運び、実際にぶどうを食べながら研究を重ねています。ただし、他県でうまくいっている方法をそのまま安心院に持ち込んでも、同じ結果になるとは限りません。気候も土も違うからです。

土づくりも試行錯誤の連続です。前の経営者が行っていた方法を受け継ぎながら、牛ふん堆肥におがくずや米ぬかを混ぜるなど、配合を変えながら、より良い土の状態を探っています。
「去年は良かったのに、今年はうまくいかない」ということも珍しくないといいます。だからこそ、毎年の経験を積み重ねながら、自分たちの土地に合う栽培方法を探し続けているのです。
暑さ、猛暑、雨、害獣との闘い。自然と向き合う日々
近年、ぶどうづくりを難しくしているのは夏の暑さです。後藤さんによると、気温が33℃を超えるような暑さになると、ぶどうの木の光合成が鈍り、糖度が上がりにくくなったり、出荷が遅れたりすることがあるといいます。
影響を受けるのは昼間だけではありません。夜になっても気温が下がりにくいと、ぶどうの色づきや品質にも影響が出てしまいます。そこで夕方に打ち水をするなど、少しでも木にとって過ごしやすい環境をつくる工夫を重ねています。
*取材時は、アナグマが捕獲されていました。
さらに、水不足、大雨、台風など、天候によるリスクは一年を通してつきまといます。カラスやアナグマ、カメムシといった害獣・害虫も、ぶどうを育てるうえで大きな敵です。
自然のなかで育てる以上、すべてを人間の思い通りにすることはできません。その時々の天候や木の状態を見ながら、一つひとつ丁寧に対応していく。それもまた、ぶどう農家に欠かせない仕事です。
小さなぶどうから生まれた「子どもたちのため」のジュース
大切に育てたぶどうでも、天候などによって実が小さくなり、規格外となってしまうことがあります。しかし、形や大きさが規格に合わないからといって、味まで劣るわけではありません。小さなシャインマスカットにも、甘みや香りはしっかり詰まっています。
「捨てるのはもったいない」。
そんな気持ちから始まったのが、加工品づくりでした。

その取り組みの中で、後藤さんが地域の夏イベントを手伝い、あることに気づきました。
それは、大人には地元のブドウで造ったワインなどのお酒がある一方、子どもたちが楽しめる特別な飲み物が少ないことでした。
「子どもたちが主役になれる飲み物をつくりたい」。
そうして生まれたのが「シャインマスカット微炭酸ジュース」です。
子どもがごくごく飲めるように炭酸を抑え、ぶどう本来の甘さを生かしています。ぶどう果汁から濃厚なシロップをつくり、それを15%の比率で配合して仕上げているそうです。こちらはパッケージの制作なども進められており、今年度の商品化がすでに決定しています!
*現在開発中の微炭酸ジュースです。
さらに、このジュースをつくる工程でできる濃縮シロップを、そのまま大人向けに展開することも検討されています。
「大人がお酒や白ワインなどで自由に割って飲めるように」と、こちらは来年に向けた次のステップとして温めているアイデア。「お酒に合うかどうかもこれから検証しようかな」と、後藤さんは楽しそうに語ってくれました。
こうした商品開発について、後藤さんは「毎年1商品は新しいものをつくりたいし、自分が食べたいと思うものを作りたい!」と話します。
今後は、皮ごと食べられるぶどうの強みを生かし、瓶詰めのショートケーキのようなスイーツにも挑戦したいそうです。
「ぶどうをそのまま食べてもらうだけでなく、加工することで新しい楽しみ方を届けたい。」
規格外のぶどうも含め、育てたものをできるだけ無駄なく生かしながら、毎年新しいものを生み出していく。そこにも、後藤さんの「人を喜ばせたい」という気持ちが表れています。
シャインマスカットをそのまま味わうソフトクリーム
農園では、ぶどうだけでなくソフトクリームも販売しています。味は、シャインマスカット、バニラ、そして両方を楽しめるミックスの3種類。

なかでも一番人気なのが、シャインマスカット味です。農園内で収穫されたばかりのぶどうをたっぷりと練り込み、贅沢に仕上げました。
ひと口食べると、思わず声が出てしまうほど濃厚な味わいが広がります。
濃厚なぶどうの風味とクリーミーな食感に加え、香料や着色料を一切使っていない自然な風味が魅力。素材そのもののマスカットの味わいをしっかりとお楽しみいただけます。

さらに嬉しいのが、その価格です。
ぶどう農家がこだわりを詰め込んだ本格的な味わいでありながら、1個300円(税込)という良心的な設定で、来園者にも大好評です。
「たすくファーム」が描く未来のビジョン
後藤さんの活動は、農園の中だけにとどまりません。消防団や商工会、朝の草刈り、夏祭りなど、地域の活動にも積極的に参加しています。安心院で暮らしていると、近所の「おいちゃん」たちから野菜や果物を分けてもらうこともあるそうです。声を掛け合い、助け合う昔ながらの人とのつながりを大切にしながら、地域の一員として歩みを続けています。

安心院のぶどう農家には、栽培技術をとことん突き詰めたり、市場出荷で高値を狙ったりと、それぞれに異なる素晴らしい考え方があります。後藤さんもそうした先輩農家の技術に敬意を持ちつつ、ご自身が目指すのは「ぶどうだけで勝負する農業」とは少し違う形です。
直売やぶどう狩りを通じて人を呼び、商品を通じて楽しんでもらい、農園をきっかけに安心院を知ってもらう。そんな形で地域を盛り上げていきたい――その強い願いが形になったのが、
「家族連れが訪れ、ぶどうを味わいながら2時間ほどゆっくり過ごせる体験型の農園」
というビジョンです。

現在も、園内の池での鯉の餌やり(無料!)を楽しんでもらったり、子どもたちが自由に落書きできる壁を設けたりと、訪れた人が笑顔になれる工夫をすでに形にしています。
さらに今後は、敷地内の使っていない倉庫や2階の空き部屋を活用し、子どもたちが遊べる場所や、ラジコンなどが楽しめる空間へ――。家族がゆったり過ごせるアミューズメント的な空間づくりを構想しています。

そして、その滞在は、農園の枠を超えてさらに広がっていきます。
もともと安心院には、豊かな自然や水遊びなど、夏をアクティブに満喫できる魅力がたくさんあります。「農園での2時間」を入り口に、周辺の自然や観光スポットへも足を延ばしてもらい、
「安心院で一日を丸ごと楽しんでもらう」
――それこそが、後藤さんの描く最終的なビジョンです。
少子化が進む地域だからこそ、子どもたちが集まり、その家族も一緒になって笑顔の連鎖が生まれる場所をつくりたいと考えています。
ぶどう栽培を軸に、人と地域をつなぎ、農園の可能性を少しずつ広げていく。たすくファームさんの挑戦は、これからも続いていきます。
*こんなところにも落書きスペースがあります。
取材を終えて
未来について語る後藤さんの言葉には、いつも前向きなエネルギーがあふれていました。お話ししていると、こちらまで元気とワクワクをわけてもらえるような気がします。
「農園に来た人に楽しんでもらいたい」という願いを込めて名付けられた「たすく」。
その名の通り、ぶどうを育て、笑顔が生まれる場所を整え、来た人に喜んでもらう後藤さんの温かな想いは、農園の中だけでなく、安心院という地域全体へと少しずつ広がっています。
*後藤さんに抱っこしてもらい、むにゃむも喜んでいます。
子どもたちの笑顔があふれ、誰もが心地よく過ごせる場所をつくりたい――。その願いを乗せたファームの歩みは、これからも一歩ずつ、地域の未来へとつながっていくはずです。
「次に訪れるときは、どんな新しい発見があるだろう?」
そんな楽しみが膨らむのも、この農園の魅力です。
美味しいぶどうと温かな時間に満ちた場所へ、あなたも足を運んでみませんか?
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【施設情報】
農園名:たすくファーム
所在地:大分県宇佐市安心院町大見尾1437−41
電話番号:0978-44-1376
事業内容:ぶどうの栽培・直売・観光農業・加工品製造販売
■安心院応援プロジェクト

このたびアプライドグループで、大分県宇佐市安心院町の魅力を発信する「安心院応援プロジェクト」がスタートしました。
安心院は、豊かな自然や歴史文化など、多くの魅力があふれる地域です。地域の方々の声や安心院のさまざまな魅力を取材し、コンテンツとして発信していきます。
安心院応援プロジェクトの取り組みにぜひご注目ください!!

