【ふくおかさん家のうまかもん】樹木で完熟させた鮮烈な香りが自慢 ~Produce of Fukuoka City~
“福岡市内産”食材の競演
福岡市内で採れた食材を使い、それぞれの特色を生かして名店のシェフたちが腕を振るう。
家庭料理とはひと味違ったプロの技を堪能しよう!

鮮度抜群で出荷される
「樹成り」の甘夏

温暖な気候と地質に恵まれた能古島では、甘夏の栽培が盛んに行われている。それは島独特の水はけの良い土壌と土地の傾斜が栽培に適しており、太陽の光を充分に浴びて水分を切ることで、甘夏自体の甘さを引き出しているからだという。
能古島で栽培される甘夏は、「樹成り」であることが最大の特徴。一般的に甘夏は1~2月頃に収穫し、低温貯蔵で減酸させてから出荷される。しかし能古島の収穫は4~6月下旬と遅く、果実を樹に成らせたまま熟すまで待つ「樹成り」という手法を採用。ほかの地域よりも収穫を遅らせることで、甘夏は樹上で栄養を吸いながらゆっくり完熟していく。樹に成らせておく期間が長いため傷つきやすくなってしまうが、最高のタイミングで収穫される完熟甘夏は、甘味と酸味のバランスが抜群。そして何よりもフレッシュな香りが鮮烈で、みずみずしく爽やかな風味を楽しませてくれる。
能古島から出荷される甘夏は、例年150~200tにものぼる。三代続く甘夏農家の永田敬道さんの果樹園には、1200本ほどの甘夏が植樹されていた。それを樹が効率よく生長できるように間伐し、現在は800本ほど栽培しているという。「古いものは樹齢約80年で、今でもまだ実が成ります。甘夏の栽培はあまり手がかからないので、能古島で暮らす人の穏やかでのんびりした性格に合っていると思います」と永田さん。これこそが古くから能古島で甘夏栽培が受け継がれ、特産品となっている理由なのかもしれない。
果樹園を訪れた料理人たちに、永田さんはもぎたての甘夏を試食させてくれた。皮をむくと、辺り一面が爽快でフレッシュな香りに包まれる。プチプチと粒立った食感が心地よく、ほどよい酸味によって甘さが一段と引き立つ。「4月に収穫された甘夏は大きくてもおいしいですが、5~6月に収穫された甘夏は実が小さな方が濃厚な味わいですよ」と見分け方を教えてくれた。「私たちは甘夏と新タマネギにカツオ節をまぶし、ポン酢をかけてサラダにして食べます」とおすすめの食べ方も提案。

料理人たちも「実際に生産の現場を見学させてもらい、料理に対する視野が広がった」「おいしい甘夏の見分け方は勉強になった」と喜んでいた。燦々と太陽が降り注ぎ、ミネラル豊富な潮風が吹く能古島で育った「樹成り」の完熟甘夏は、フルーツとして食べるのはもちろん、香りや甘酸っぱさを料理に生かせる可能性も存分に秘めている。

「もったいない」から生まれたおいしいアップサイクル
採れたての甘夏を
新鮮なまま保存

甘夏の果樹園見学後に案内されたのは、元々倉庫として使用されていた建物。こちらはのこのしま加工部会の手によって改装された加工場で、2月から6月頃まで甘夏の搾汁や果皮のスライスといった一次加工が行われている。
能古島を代表する特産品の甘夏だが、落果したものや形や大きさが不揃いなもの、外皮に傷が付いていて卸売市場に出荷できない規格外品がどうしても出てしまう。これは自然の中で育つ農産物である以上、ある程度は仕方のないこと。しかし、味わいは規格品と遜色ないのに廃棄してしまうのは、非常にもったいない。そういった観点から甘夏農家の明石栄美子さんが部会長となって声を上げ、2012(平成24)年にのこのしま加工部会を発足させた。
加工場に運ばれた甘夏はまず洗浄され、果皮と果実に分けられる。皮をむく際に苦みの原因となる白いワタは丁寧に取り除き、果皮がきれいなものを薄くスライスしていく。そして残った果皮と果実から果汁が搾られる。ジューサーはスペインに本社を構える『Zumex』社製を導入しており、このジューサーだと素早く熱を加えずに搾汁でき、果皮に含まれる苦味やエグみを出さずに搾汁できるのだとか。不純物が混ざらないように網の目の粗さを細かいものに変えながら漉して、フレッシュな甘夏果汁ができあがる。
現在、のこのしま加工部会は8軒の農家が中心となって加工を行い、地元の高校生が手伝いに来たり、西区愛宕浜にある福岡市立福岡女子高等学校が体験授業に来たりする。規格外品の活用は農家の副収入となるだけでなく、能古島ブランドの知名度向上、若者の果物離れに歯止めかけることにも貢献。能古島の特産品を広め、産業を守ろうとする明石さんのエネルギーが伝わる見学会だった。

(手前)JA福岡市
のこのしま加工部会 部会長
明石 栄美子さん
小中学生時代を能古島で過ごす。広島で会社員として勤務したのち、甘夏などを栽培する夫との結婚を機に就農。規格外の甘夏を無駄にせず活用するため、2012(平成24)年にのこのしま加工部会を発足。
(奥)JA福岡市
能古柑橘部会
永田 敬道さん
能古島生まれ、能古島育ち。祖父の代から続く農家で、会社員から転身して甘夏づくりに励む。能古島の主要産業である柑橘栽培を守るため、耕作放棄地を甘夏の果樹園に再生する活動も積極的に行っている。
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うまかもん @umakamon_fukuokacity
