【美味本2025】記憶に残る味と体験全集中する極上の2時間|
鮨 仙八 中央区高砂

記憶に残る味と体験全集中する極上の2時間

毎朝市場で仕入れ一口の感動の為の仕事
高砂の細い道沿い、ビル1階に凛とした空気を漂わせる美しい佇まいの店。長椅子に座ったり、三々五々周囲で待つ人々の姿が店の灯りに照らされている。10分前になると1組ずつ店内へと案内が始まる。マンションが並ぶ住宅街に毎晩繰り返される光景だ。ここは熊本のミシュラン2つ星を獲得した『鮨 仙八』が完全移転した店で、移転直後から驚きと期待のニュースとして広まった。四代目大将の中原貴志さんにとって、それは大それたことではなかったそう。「東京でも仕事をしていましたので、横浜から東京に行くくらいの感覚です」。
西中洲『とき宗』、東京西麻布『鮨 真(しん)』と、ミシュランに輝く店での修業を経て、故郷・熊本の実家に戻った四代続く寿司職人。『鮨 仙八』にミシュランの星を導いた四代目は、なぜ福岡に店を移すことにしたのだろう?
「店でお客さまを迎えるというのは、動かないということです。40歳になったときに新しいチャレンジがしたくなり、まず大阪で場所を探しました。寿司ネタになる魚があまりないと感じ、修業した場所でもある福岡にしました。

追い回し時代に、市場で顔を合わせていた同級生もいますし、福岡で飲食店をしている人もたくさんいます。高砂のこのビルが新築するということで、ここに決めましたが、この場所にして良かったです。車も入ってこない静かな通りで、皆さんここを目掛けて来てくださる。味に集中していただけます」。
そう中原さんがいう通り、数寄屋建築の名手が手がけた神々しいまでに美しいカウンターで待ち構える客たちは、最初緊張の面持ちで静かに食べ進めるが、美しい所作で寿司を握る姿に見惚れ、一つひとつ説明してくれる中原さんの声に緊張も解けていく。アルコールも手伝い、和やかな雰囲気に包まれていく。熊本時代からの常連さんも、海外からやってきた若いカップルも、まさに「※ターブルドットスタイル」で、新しい味との出合いの高揚感が伝播し、一体感が生まれていく。
「お陰さまで多くの方たち、外国人観光客にも来ていただいています。お子さんに日本の寿司を体験させたいという外国人客のアテンドをホテルのコンシェルジュから相談されまして、お受けするようになりました。回転寿司しか知らないお子さんが目をキラキラさせて見てくれます」。

外国人客の為に魚種の説明カードを用意するなど、日本の食文化を正しく伝えることに余念がない中原さん。その姿勢は後進を育てる思いにも通じている。
「店だけでなく、外に出る仕事もしっかり伝えていきたい。 熊本時代は地元百貨店でお弁当を展開していました。来年は新しいコラボ企画を開始する予定です。モチベーションを上げるためにも、仕事が広がることを伝えたいです」と語る中原さん。建築とは違い、飲食は形に残らない仕事とも話してくれたが、中原さんが提供してくれる2時間は、記憶に残る味と体験であることは間違いない。
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