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【インタビュー】FIVE NEW OLD「“One More Drip”がコンセプト。日常を少し彩れるような音楽を」

取材・文/本田珠里(編集部)
撮影/占部千尋 撮影協力/STEREO

 

神戸発の話題のロックバンドFIVE NEW OLDが、メジャー1stアルバム『Too Much Is Never Enough』をリリース。全編英詞で、ロックからポップス、ブラックミュージックまで昇華した楽曲は、聴いた人誰もが洋楽と勘違いするほどのクオリティ。一体どんなバンドなんだろうと思っていたところに、タイミングよく楽曲制作も手がけるヴォーカル・ギターのHIROSHIが来福。インタビューの時間をもらった。

—今回、メジャーアルバムということで今までと違う部分はありますか?また、アルバムタイトル『Too Much Is Never Enough』に込めた意味は。

デビュー作品ではないので、逆に肩の力が抜けて、このタイミングだからこそ一番自然体の自分から湧き出たものだけを形にしていこうという雰囲気で作りました。今の世の中、たくさんの情報と物に囲まれて色んなものに簡単に触れられるようになったぶん、自分の中に残るものや大切なものが見えにくくなっているんじゃないかなと感じていて、「もっとよくなる」とToo Muchに考えるより原点に立ち返ってみた方が、意外と理想のゴールに近づいていたりするかもしれない。だから目の前にあるものをもっと大事にしてみたらどうだろうという想いでタイトルをつけました。

 

—本来の自然な姿を音で表現できた作品になったと。

そうですね。裸の自分に向き合う恐怖みたいなものはありましたが、自分たちの本質が自分たちの予想以上に良いものだったっていうのも見えて、自信に繋がりました。

—ヒップホップ系の踊FootWorksSANABAGUN.のメンバー、タイのポップシンガーStampさんなど、参加アーティストも様々ですね。

踊FootWorksやSANABAGUN.は元々音楽仲間なんです。僕たちはバンドですが自分たちで作ったトラックをサンプリングしてヒップホップの手法で表現する時もありますし、彼らもヒップホップだけどバンドという共通意識があるので、制作はスムーズでした。Stampさんは来日中も他のアーティストのライヴを見に行ったり、音楽に対するアンテナが高くて貪欲で刺激になりました。Jポップ含め、キャッチーで心に残るメロディに対するこだわりって、アジアのポップスとしての共通点だと思っているんですが、日本が島国だからこそ見えてこないものがあるぶん、大陸の一部で活躍するStampさんから学ぶ視野の広さも感じましたね。

 

—『Gold Plate』という曲では、MONJOEDATS/yahyel)さんがサウンドプロデュースされていますが、どういう経緯で?

昔、自主イベントにyahyelに出てもらったのがきっかけで仲良くなりました。その頃、僕たちはパンクス寄りの音楽だったので、受け入れてもらえるか不安でしたが、僕たちの音もリスペクトしてくれて、僕も彼らのアート性の高い音楽が好きで、仲良くなるうちに、お互いキャッチーなものが好きな部分があるなというのが共通項として見えてきて、それをこのアルバムでやってみようという話になったんです。そういう意味では今回、コラボレーションは“Too Much”にやりましたね(笑)。

 

—『Ghost In My Place』という曲は、歌詞の内容は悲しいのに曲自体はキャッチーでポップ。そのギャップが気になります。

あんまり明るいことが書けないんですよね(笑)。以前、おそらく学者だったと思うんですが「私は前向きな悲観論者だ」っていう言葉を聞いたとき、自分に当てはまるなと思いました。ネガティブなんだけど一度現実を見てどう前に進めていくかっていうプロセスを音楽に変えるんです。悲しいことを音として明るいものに変えると少し救われるというか、自分のセラピーになるというか。ミュージシャンの方には多いんじゃないかな。

 

—なるほど。全て英詞ですが、そういう歌詞の内容を知らずに聴いてるリスナーもいると思うのですが。

僕自身が音楽をまず音で捉える側なので、日本語でも英語でも何気ない言葉が音にちゃんとはまった瞬間に、いろんな意味を持たせられることが大事かなと。もちろん歌詞の中に想いはちゃんとありますが、音で楽しんで、それで完結してもそれは自由だと思っています。ただ歌詞カードや翻訳を見てもらった時に、『Ghost In My Place』みたいに、良い意味で曲のイメージが裏切られる、そういう楽しみ方もあると思うので、もう一歩踏み込んでもらうと2度美味しいなと感じてもらえたら嬉しいですね。

 

—最初は洋楽と思うほどネイティブな発音で、歌い方も日本人独特のクセがないので邦楽と知って驚きました。帰国子女疑惑は色々なところで否定されてますよね(笑)。

家族の影響で幼い頃からスティービー・ワンダーとか洋楽を聴いていただけで、帰国子女じゃありません(笑)。ボーカリストとしては、リンキンパークのチェスターや、フォール・アウト・ボーイのパトリックとか、ロック寄りの影響を受けてるかなあ…。

 

—帰国子女でもなく音楽で自然な英語が話せるようになるんだと知ることで、リスナーが英語に対しても興味を持ったり、自分にも出来るかもという希望になるのでは。

僕は、もともと環境に左右されず自分の好きな物をちゃんと選び取っていくっていうのが根幹にあるのかなと思います。確かに、どんな環境でも自ら機会を作って踏み出せば、この位のことは誰でもできるというロールモデルの一つになれたら嬉しいですね。

音楽以外の趣味を聞くと「本を読んだり…。でも一番好きなのはゲームです。ずっとゲーム機は手元にあって、みんなでマリオカートしたり、一人の時はゼルダの伝説をしたり(笑)」と、普通の青年らしい一面も。

 

—普段はどんな音楽を聴いてるんですか?

最近は一人だとヒップホップを聴くことが多いです。グラミー賞でケンドリック・ラマーを聴いて改めてかっこいいなと。ツアーの移動中とかは昔のエモコア、ファンク系や山下達郎さんとか色々。音楽に疲れたら落語を聞いてます(笑)。

 

—ミュージシャンって意外と落語好きな人多いんですよね(笑)。確かに色々な音楽の要素がアルバムの所々に感じられます。既存の“ロック”の概念とは違うというか。

そうですね、好きなものを昇華していたらこうなっていて…カテゴライズできたらもっと楽なのかなと思うんですけど、色んな曲を書いてしまうんです(笑)。ジャンルが違うものは別プロジェクトでという方もいますが、僕の場合はFIVE NEW OLDで全て表現しようとしてしまうし、したいんですよね。ジャンルレスということを、メンバーも含め僕たちは全く売りにしようとは思ってなくて、むしろそれが当たり前だと思うんです。みんなネットで色んな音楽に簡単に触れられる時代、その方が自然なんじゃないかなと。

 

—確かに今の音楽のカテゴリーって難しいですよね。全国ツアーをされていますが、アルバムの1曲目『Sunshine』とかは、かなり盛り上がるんじゃないですか?

タイトルを言うとお客さんがすごく沸いてくれるので、ちゃんと届いてるんだなと感じられて嬉しいです。

 

—ツアーの手応えはどうですか?

みんな楽しんで帰ってくれてるんじゃないかなと思うんですが、より満足して帰ってもらうために、毎回お客さんに教えてもらっているライヴの感覚を研ぎ澄ませながら、仕上げていってる感じです。

 

—今後、目指していきたい、伝えていきたいことは?

僕たちの音楽には“One More Drip”というコンセプトがあって、日常を少しだけ彩れるような音楽を今後も作っていきたいです。イージーリスニング的でもいいので、色んな方に楽しんでもらいたいですね。ただ、先ほど歌詞の話でも出たように、そこから少し踏み込んで聴いてもらえたら、より強く背中を押せる音楽になっているかなと思います。

Album『Too Much Is Never Enough』発売中

TFCC-86631/¥ 2,800(税抜)

FIVE NEW OLD

WATARU (Gt., Key., Cho.)、 HIROSHI (Vo., Gt.)、 HAYATO (Dr., Cho.)

2010年神戸にて結成。R&B、ブラックミュージック、80’sなどの要素を昇華させたオルタナティブなロックサウンドに、英語で歌われる爽やかなメロディーとコーラスラインはスタイリッシュな洋楽ポップスさながらで、アーバンかつソウルフルな楽曲が心地よくノれると、幅広い世代からの支持を受ける。これまでに邦楽・洋楽の垣根を超え、さらにジャンルレスな顔ぶれのアーティストとの対バンを重ね、ライブバンドとしてのキャリアを確実に積んでいる。
1st ALBUM「LISLE’S NEON」(2015年6月)以降、「GHOST IN MY PLACE EP」(2016年6月) 、「WIDE AWAKE EP」(2017年 1月)とリリースを経るごとに進化を遂げ、2017年6月21日「BY YOUR SIDE EP」でメジャーデビュー。 同年「BY YOUR SIDE TOUR」にて東京・新代田LIVE HOUSE FEVER、大阪・梅田Shangri-Laでの自身初のワンマンライブをソールドアウトさせる。2017年8月、これからの活躍が期待されるアーティストをサポートするYoutube主催の企画「YouTube Music Sessions」に参加。
2018年1月、メジャー1stアルバム「Too Much Is Never Enough」をリリース。

https://fivenewold.com/

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