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【嘉麻市】嘉麻を愛したクリエーターたち 画家・織田廣喜

水と緑に恵まれた美しい風景に囲まれ

嘉麻の人や自然の優しさに育まれて創造の翼を広げた人たち。

日本洋画界の重鎮・織田廣喜や制作活動を行なう

現代のクリエーターを紹介しよう。

 

画家 織田 廣喜

織田は少年時代を過ごした碓井町(現・嘉麻市)に多くの作品を寄贈。2012年に心不全により他界するまで、生まれ故郷への思い出をテーマにした作品など、嘉麻市に想いを寄せながら意欲的にキャンバスにむかい続けた(撮影 山口利明)

 

 

 

 

「楽しんで描こう。自分が楽しければ人も楽しいのです。」

黒い天然の板岩を敷き詰めた大きな切妻屋根に、白と紅の漆喰の壁が印象的な建物。嘉麻市出身で、日本芸術院会員、二科会理事長を務めるなど、日本洋画界の重鎮として活躍した洋画家・織田廣喜(1914~2012)の作品を収蔵し常設展示している美術館だ。

 

織田廣喜美術館は炭鉱跡地を活用して1996年に碓井琴平文化館の一施設として開館。3万㎡を超える敷地内には美術館の他、碓井図書館、碓井郷土館、碓井平和記念館が併設されている

 

 

 

 

福岡県千手村(現・嘉麻市)に生まれ、上京後、苦労を重ねながら二科展に入選。愛妻リラとの結婚、渡仏を機に個性溢れる作品を数多く世に生み出し、世界に認められた。美術館では、それら作品群の中より、初期から晩年までの変化を辿りながら時系列にわかりやすく展示されている。

 

 

幼い頃から父親の美術全集を眺めては、模写のようなことをして遊び、写生をさせても、緑の木は黄色、ワラ小積みは茶色、空の色は黄色など、自由奔放に色を選び、電柱など描きたくないものは省いてしまう少年だった。「題材そのものを見て描いてもつまらない。想像力を働かせ、その物に在る魂を描きたい」。それが織田廣喜の一貫した絵のスタイル。彼の絵は、夢の中の何処か、ぼんやりと見えるようで見えない、どこか懐かしく、物寂しい…織田廣喜が心に留めた記憶の一片を覗いているようである。

 

『讃歌』第35回二科展出品
1950年 織田廣喜美術館蔵
4人の女性が讃美歌をうたっているような牧歌的な世界を描いた代表作

 

 

 

18歳で上京し、日本美術学校に入学。32歳で『黒装』が二科賞を受賞。しかし、経済的に苦しく、絵具もキャンバスも買えないほどだった。第2展示室にある幅3mを超える大作『讃歌』も、そうした貧しい時代に描いた代表作だ。古いキャンバスを集め、公園の池に水漬けにして表面の絵具を剥ぎ取り、リラ夫人が畳糸で継ぎ合わせて作ったという500号のキャンバス。よくみると、縫い目の盛り上がった部分が当時の苦労を物語っている。

 

『嘉穂劇場全景』
代表作シリーズ『少女』

 

 

 

46歳で初めてフランスへ渡り、織田の絵は色彩豊かに開花。パリを描く画家として認められ、70代以降、浅草や故郷の碓井町(現・嘉麻市)を描くようになった。カニやハヤを捕まえて遊んでいた頃の千手川やボタ山の風景など、彼の心の中には故郷の景色が焼き付いていた。織田廣喜は、故郷を心から愛し、そして今もなお故郷の多くの人々から愛されている画家である。

 

織田廣喜研究はもとより、毎回ユニークな企画展覧会を企画している美術館員の有江俊哉さん。雑誌モデルやテーマパークの建造物デザインなど多彩な経験を持つ

 


織田廣喜美術館
住所:嘉麻市上臼井767
電話:0948-62-5173
営業時間:10:00〜17:00(入館は16:30まで)
定休日:月・火曜
料金:一般330円、高校・大学生220円、小学・中学生110円
https://www.city.kama.lg.jp/site/odahiroki/

 

 

掲載の内容は取材時のものです。取材日と記事公開日は異なる場合があり、メニューや価格、営業時間、定休日など取材時と異なる場合がありますので、事前に公式HPやお問い合わせにてご確認をお願いします。

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