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【福岡の老舗】1967年創業!大衆焼肉の超レジェンド!『玉福』(春日市)よ、永遠なれ!

テーブル席もいいが、できれば畳の座敷を備え、
年季が入った小型のガスロースターに焼き網をちょこんとのせ、
時折、火柱が立ったかと思えば、煙が止めどなくモクモクと出てくる。
媚びへつらうでも、偉そうにウンチクを振りかざすでも、
「匂いが付く!?」なんて疑問を客に考えさせる余地を与えるでもなく、
東にカルビを育てようとする人がいればそっと網を変え、
西にホルモンを食べようとする者がいれば黙って飯を差し出す。
一度、焼き始めれば、一心不乱に(たまに飯・酒・朝鮮漬けを挟みながら)
肉、肉、肉をこれでもか!と喰らうことに集中させ、
五感のすべてを使って「焼肉」の真髄を味あわせてくれる。
そうして、終いに、嗚呼…もう入らない!もう喰えない!と箸を置けば、
膨れ上がったその口福は胃袋から溢れ出し、皆の心を満たす幸福へと昇華される。

私はそんな昔ながらの「大衆焼肉店」が大好きだ。

アジア、とりわけ朝鮮文化の影響が色濃い福岡という土地柄と、
鋼のまち、黒ダイヤのまちと称された北九州や筑豊を代表とする
スタミナ至上主義の働き者が闊歩するまちの胃袋を満たすために、
福岡県内には昔から大衆焼肉の王道をたっぷりと愉しませてくれる
「レジェンド(伝説的名店)」が町々に点在している。

そんな中でも「スーパーレジェンド」と呼ぶにふさわしい
一軒に先日たまたま足を運ぶ機会に恵まれたので紹介したいと思う。

 

 

昭和42年創業。半世紀の旨味凝縮!大衆焼肉は
やはり大衆の大衆による大衆のための娯楽なのだ。

 

数々の大衆グルマンたちから絶大なる支持を集めて五十余年。福岡の大衆焼肉好きなら一度は足を運んだことがあるであろう春日市の『玉福』。
もちろん、駐車場は「満員御礼」を告げるがごとく、この日も満車状態だった。
早い時間から、多種多様な客で大賑わいを見せ、食欲を刺激する活気が店内にみなぎるのが大衆焼肉店に心惹かれる理由のひとつだ。

引き戸の入口ドアを開けると、真正面の土間スペースで縦に並ぶテーブル席2つを挟んで、左右に小上がりの座敷が広がっている。
もちろん座敷には畳が敷かれ、大きく頑丈な木製の自宅用応接テーブルがいくつも鎮座している。
そんな空間に集まった客は、何の関係もないのに、遠い親戚の家に何かの法事で集まった親族に見えてくるから不思議だ。
言葉にするならば、同じ煙によって繋がれた「焼肉家族」。

小さな子どもづれのファミリー客に、地域の集まり的飲み会、勤め帰りの社会人もいれば、女子会やデートっぽいカップル客に、作業服のまま一日の重労働を労い、酒を酌み交わす働き者の顔も見える。

みんな、ちかっぱ!笑顔!笑顔!この上ない笑顔だ!

そんな店内の気前のいい雰囲気につられてか
本日も(いつも)ちょいと頼みすぎたようだ。

自家製の秘伝タレにたっぷりと浸かって
艶な色気をプンプン醸し出す肉はどれもうまい。
うまいという言葉ではいい表す事ができない美味しさだと
強く思うからこそ、できるだけそんな簡易な言葉を使いたくないのだが…
結局のところ、一切れ口に運ぶごとに出てくる言葉がそうなのだから仕方がない。
ただただ、ひたすらに「うまい」。「うまい」のである。

メニューはなく。あらかじめテーブルに置かれ注文表に
書き込んでオーダーを通すという、福岡のオールドスクールスタイル。
食いしん坊おじさん三人でこの一皿に挑んで、ようやく完食&全員満腹満足!
これにビール大瓶3本、焼酎3杯、大めし一杯で6千円強。

朝鮮漬けは必須メニュー。これだけループで飯も酒もイケる!

これぞ正真正銘の大衆文化!
みんなに平等な大衆の味方!
時代を超えて愛され続ける大衆の良心なのだ!

このタレをつければ何でもきっとうまい。
白めしにかけたら、肉さえいらなくなるかもしれない。
マイルドな甘味、コク、トロッとキリッとな風味と舌触り。
昔から家族で通っているという常連客が教えてくれた
「うちの母ちゃんはこそ〜っと残ったタレをビニール袋に
入れてから、持って帰っていろんな料理にば、使いよったもんね〜」
というエピソードがこの秘伝のタレに対する礼儀作法に
聞こえるくらい、うまいの源なのである。

ごちそうさまでした!

 

この日は、結局最後の客になったので
休憩している女将さんといろいろ世間話をしながら、
店や地域の昔話をたくさん聞かせていただいた。

全くの素人だった女将さんが
今から53年前にゼロから始めた『玉福』。
当時、店の周りは畑だらけで、他の飲食店はほぼなし、
目の前の道路は舗装すらされていなかったのだとか。

最初は自分の味にも自信がなく、
客の感想を頼りに試行錯誤して、開店から数年後に
ようやく現在のタレの原型にたどりついたそうだ。

今ではご近所の常連客はもちろん
わざわざ市外や県外からやってきては
店を家族の一員のように慕ってくれるファンばかり。
世代を問わない馴染み客からの
「やっぱりここがいいっちゃん!」
という言葉に励まされながら
女将さんと大将は今日も店の第一線に立ち
家族総出で老舗の屋台骨を支えているそうだ。

「最近はこのロースターや焼き網が
希少なものになってきていて、原価が高くなってね〜。大変なのよ!」

「このテーブルと椅子だけは50年前から何も変わっていないんです。
新しいのにせなん!って思うけどね、壊れんし、なんか愛おしくて、
昔のものはホント丈夫にできとるんよね〜」と女将さん。

「この薬缶も半世紀以上経つかね〜(笑)」
なんて言いながら、いつもの優しい笑顔の
女将さんは、なんと80歳代!


「私の名前が玉子やから、その玉に、
福岡の福と、福が多く訪れますようにっていう
想いを込めて、玉福にしたっちゃんねー」。
これまでも、これからも、女将さんは
福を呼び込む、みんなのアイドルだ!

今度もいろいろとお話聞かせてくださいね!
また、おじゃまいたします!

(余談)
福岡でも「大衆●●」というフレーズが
店の売り文句としてよく使われている昨今。
本当の「大衆」っていうのは、安価な価格や、
古い店の造り、昔ながらの商売のスタイルから
導き出される言葉ではなく、いかにご近所さんにとって、
良きまちの友、良きまちの家族であるか…!?
そんなことが問われるものなのかもしれない…。
中心街の開発がこれからますます進んでいく今の福岡だからこそ
そんな「大衆」の価値を今一度見直し、再評価することが
これから大事になってくるのかもしれない。

『玉福(たまふく)』
住所:福岡県春日市須玖南2-107
電話:092-582-7267
営業時間:17:00頃〜23:00頃
定休日:月曜
駐車場:あり