【宇佐養魚株式会社】温泉で育てる「どぜう」の秘密!最高品質を支える無泥養殖法

温泉で育てる「どぜう」の秘密!最高品質を支える無泥養殖法
ー『宇佐養魚株式会社』ー

宇佐養魚株式会社

昔から「うなぎ一匹、どじょう一匹」と言われるほど栄養価が高い「どじょう」
実は、大分県宇佐市は、「どじょう」の養殖生産量が日本一の地域です。

今回は、そんな宇佐市で、温泉を利用して一年を通してどじょうを養殖している「宇佐養魚株式会社」さんを訪問しました。

宇佐養魚さんでは、泥を使わない独自の「無泥(むでい)養殖」を確立し、全国へ高品質などじょうを出荷しています。

取材では、代表の日高さんに、「どじょう養殖」へのこだわりや歴史についてお話を伺いながら、実際の養殖現場も見学させていただきました。


💡 豆知識:どじょう? どぜう? どっちが正しい?

事務所に案内され、パンフレットを見ていると、「どじょう」ではなく「どぜう」の文字が・・・。

調べてみると、江戸時代にある東京の老舗専門店が、『「どじょう」の4文字では縁起が悪く、3枚の暖簾(のれん)に書けない』と考えたところから3文字の「どぜう」と書くようになったそうです。

宇佐養魚さんでもそうした歴史にならい、ホームページやパンフレットでは「どぜう」の表記を使用されています。

国産どじょうの危機から始まった養殖

宇佐養魚さんは、国内トップクラスの規模を誇る養殖施設です。その誕生には、伝統を守りたい老舗店の危機、地域を挙げた技術開発、そして日高さんの挑戦と決意が重なっていました。

すべての始まりは、東京の老舗専門店が直面していた深刻な国産天然どじょうの不足です。
農薬の使用や圃場(ほじょう)整備、化学肥料の普及により国内の天然どじょうが激減し、市場の約90%を中国産が占めるなど、老舗専門店にとっても存続が危ぶまれるほどの状況だったといいます。

この実情を知ったのが、専門店の常連客でもあった当時の大分県知事・平松守彦さんでした。「一村一品運動」の一環として大分県の水産試験場に養殖技術の開発を要請。試験場は10年以上の歳月をかけて、泥を使わずに育てる革新的な「無泥(むでい)養殖法」を成功させました。

この養殖法は屋内だけで完結する「完全養殖」のため、病気や寄生虫の心配がなく、自然の生態系を傷つけることもありません。環境に配慮しながら、安全・安心などじょうを安定して生産できる画期的な方法です。

その頃、日高さんは水産系の大学を卒業後、県外での就職を経て故郷の大分へ戻り、水産の知識を活かして自ら起業しようと模索していました。まさにそのタイミングで巡り合ったのが、この「無泥養殖法」だったのです。

非常に難易度が高く当時は成功例がほぼなかった技術ですが、「誰もやらないなら自分がやってみよう」と挑戦を決意。すると、日高さん本人も「本当にたまたま、色々な都合がよく重なった」と振り返るほどの偶然が次々と訪れます。

まずは、養殖の拠点として、高齢のため使われなくなっていた親戚のイチゴ用ビニールハウスを譲り受けることができたこと。さらに相談先となる大分県の水産試験場もそのすぐ近くに位置していました。極めつけは、現場で井戸を掘ったところ、偶然にもどじょうの飼育に最適な水質の「温泉」が湧き出たことでした。

こうして数々の恵まれた環境と偶然に背中を押される形で、無泥養殖への挑戦がスタート。試行錯誤を重ねながら技術を確立し、年間を通じた安定生産に加え、ぬめりや見た目の美しさ、臭みのない肉質、そして骨の柔らかさを実現していきました。その確かな品質は東京の専門店などからも高く評価され、事業を大きく拡大していくきっかけとなったのです。

「今でも分からないことが多く、本当に難しい」と日高さんは振り返りますが、伝統食文化を守る専門店の想い、地元の先進技術、そして生産者の情熱と奇跡的な巡り合わせが見事に合致し、宇佐養魚さんは“どじょう養殖界を牽引する存在”となっていったのです。


見た目はウナギですが実はコイの仲間なのです!

「見た目はウナギに似ていますが、分類上はコイの仲間なんですよ」と教えてくださった日高さん。淡白でクセのない、上品な白身が特徴なのだそうです。

どじょうはウナギとは異なり、骨や内臓まで丸ごと余すことなく食べられるのが大きな魅力です。カルシウムやビタミンが豊富に含まれる栄養の宝庫で、古くは漢方の領域でも重宝されてきたといいます。


知られざる「どじょう」の生態

取材では、どじょうのあまり知られていない興味深い生態についてもお話を伺うことができました。

驚かされるのが、その特殊な身体の仕組みです。通常の魚のようにエラ呼吸をするだけでなく、水面に顔を出して空気を吸い「腸呼吸」を行うという、まるで両生類のような珍しい特徴を持っています。これは魚類の中でも一歩進んだ生態なのだそうです。

また、どじょうは、日本国内だけでも35種類以上の種類が存在するといいます。

どじょうは川や池、田んぼといった「閉鎖的な水域」に生息し、他の場所へ自由に移動しにくいため、それぞれの地域で独自の進化を遂げてきました。進化の違いは「形」ではなく「柄(模様)」や「体色」に現れるのが大きな特徴ということです。


美しさと旨味を引き出す!「見た目」と「ぬめり」へのこだわり

宇佐養魚さんでは、おいしさだけでなく、出荷時の美しさにもこだわり、品質の追求に余念がありません。

特に、老舗店などの看板料理である「丸鍋」は、どじょうの姿形がそのまま見える料理です。だからこそ、提供された瞬間に「綺麗で美味しそうに見えること」が非常に重要視されます。

その美しさと美味しさの鍵を握るのが、体にまとった「ぬめり」です。しかし、一般的などじょうは調理の際にぬめりが剥がれやすく、見た目が損なわれてしまう課題がありました。そこで宇佐養魚さんでは、餌(エサ)にオイルを混ぜる工夫を発案。当初はオリーブオイルを使用していましたが、近年の価格高騰に伴い現在は「ごま油」を配合することで、煮込んでも剥がれない丈夫で艶やかなぬめりを作り出すことに成功しました。

このこだわりの「ぬめり」には、コンドロイチンをはじめとする豊富な栄養と旨味が詰まっており、美しさと高い栄養価を兼ね備えた極上のどじょうへと仕上げられています。

*ひれが大きいのがオスで、小さいのがメスです。


一晩で全滅の危機も!どじょうを守る頼もしい「意外なハンター」とは?

泥を使わない衛生的な環境で大切に育てられるどじょうですが、実は自然界や養殖の現場には天敵が存在し、非常に繊細な生き物でもあります

まず自然界では、トキやコウノトリなどの鳥類が大きな脅威となります。目立つ色合いや泳ぎの拙さからすぐに鳥に見つかってしまうため、野生で生き残るのも容易ではありません。

さらに、養殖の現場において最大の敵となるのが「ネズミ」です。対策を怠るとあっという間に食べ尽くされ、全滅に近い被害を受けてしまいます。

屋外の田んぼ(露地)を使った従来の養殖では、鳥用の防鳥網は張れても足元から侵入するネズミ防ぐ術がなく、全国的にも非常に苦慮されている課題です。

こうした外敵から徹底的にどじょうを守るため、宇佐養魚さんでは独自のアイデアと設備で万全の防除策を講じています。

鳥などの外敵を遮断するため、ビニールハウス内の水槽による完全管理体制を確立。さらに、最大の敵であるネズミを防ぐため、養殖場では「猫」を飼育しています。

今は寝てますが(笑)、実は、頼もしい“ネズミ捕りハンター”として大活躍しています。

養殖場で飼われている猫


見学前に試食!手が止まらなくなる「どぜうの唐揚げ」

「養殖現場でどじょうの泳いでる姿を見ると食べづらくなるから」

という日高さんの冗談とともに、施設見学の前に揚げたての「どぜうの唐揚げ」を用意していただきました。

さっそく一口いただくと、泥くささや食べにくさは全くありません。サクッとした衣の中に淡白で上品な白身の風味が広がり、クセがなく非常に食べやすい仕上がりで、手が止まらなくなるおいしさです。

宇佐養魚さんでは何を食べさせたかを明確にした配合飼料を使用し、水質管理とトレーサビリティ(生産履歴)を徹底しているため、「刺身でも提供できるほどの安全度」を確保しているとのことです。


養殖施設見学スタート!

それでは、いよいよ養殖現場へ!見学スタートです。

まず最初に見せていただいたのは、稚魚の餌(エサ)となる「ツボワムシ」の水槽です。孵化(ふか)したばかりの稚魚が食べる微生物ですが、この安定培養にはなんと約10年の歳月を要したとのこと。この初期飼育技術の確立こそが量産化への大きな鍵となったそうです。


続いて、どじょうの稚魚が泳ぐ水槽へ。
日高さんが網を使い、可愛いらしい稚魚を見せてくれました。


次に、見せていただいたのが成長した「どじょう」の水槽です。ちょうどエサやりの最中でした。水面にバシャバシャと水しぶきを上げながら、ものすごい勢いで餌に群がっています!


ちなみに、水槽の底には、元気に泳ぎ回るどじょうたちの繊細な体を傷つけないよう、専用の特殊シートが敷き詰められていました。


奥へ進むと、今度は繁殖用の親(メス)が泳ぐ水槽へ。普段お店や食卓で見かけるサイズとは比べものにならないほど立派で大きく、その迫力に思わず驚かされます。

本来、どじょうは冬になると冬眠してしまいますが、宇佐養魚さんでは安心院の温泉を利用して水温を常に25度前後にキープ。さらに光量も細かくコントロールすることで、冬場でも年中産卵・生育ができる環境を作り出しています。


すくすくと育ったどじょうたちは、出荷前にサイズごとの選別作業が行われます。
丸鍋用(約10cm)、柳川鍋用(12〜15cm)、唐揚げ用(小サイズ)など、専門店の調理法に合わせて熟練の手際で選別されていきます。


そして最後に案内してもらったのが、養殖で使用した水の「ろ過施設」です。ここでは水耕栽培している「空心菜(くうしんさい)」の根の力を借りて自然に水を浄化し、きれいな状態にしてから川へ戻しています。美味しいどじょうを育てるだけでなく、地域の自然環境を守る配慮まで徹底されている姿勢がとても印象的でした。


宇佐養魚さんの「どぜう」を是非一度

伝統を守りたい老舗店の想い、地元の高い技術力、そして幾重もの奇跡と日高さんの情熱。取材で伺った背景や見学で目にした数々の工夫は、宇佐の自然の恵みとともに、伝統の食文化を未来へ繋ぐ確かな取り組みでした。

温泉の恵みで育ち、臭みもなく、骨や内臓まで丸ごと美味しく味わえる宇佐市の「どぜう」。これまでのイメージがガラリと変わるその圧倒的なこだわりと絶品の味わいを、ぜひ一度体験してみてください!

宇佐養魚株式会社 公式HPはこちら


【施設情報】
会社名:
宇佐養魚株式会社
所在地:大分県宇佐市院内町月俣45番地
電話番号:0978-34-3857
事業内容:水産物の養殖・加工・販売


安心院応援プロジェクト

このたびアプライドグループで、大分県宇佐市安心院町の魅力を発信する「安心院応援プロジェクト」がスタートしました。

安心院は、豊かな自然や歴史文化など、多くの魅力があふれる地域です。地域の方々の声や安心院のさまざまな魅力を取材し、コンテンツとして発信していきます。

安心院応援プロジェクトの取り組みに、ぜひご注目ください!!

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