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【福岡ラーメン物語 のぼせもん|93杯目 博多大砲ラーメン 】

「食べたお客様に喜んで貰えるのが嬉しい。 美味しいと言われると苦労が帳消しになる」

60年ものあいだ愛され続けたラーメンがある。
その味をただ守り続けていきたい、その想いだけで店を受け継いだ。
常連客の力を借りながら試行錯誤の日々が続いた。
そして甦った老舗の味。そのバトンはしっかりと繋がった。


『ラーメン』(700円)/豚頭骨とゲンコツを継ぎ足しながら炊き上げる豚骨スープは臭みなし。先代から受け継いだ醤油ダレは深みのある味わい。どこか懐かしさのある昔ながらの博多ラーメン


「良くも悪くも全て結果は自分次第なのでやりがいがありますね。この狭いお店でお客さんと顔を突き合わせていられるからこそ、続けられていると思います。おかげさまで年々この仕事が楽しくなっているんです」


博多大砲ラーメン新宮店

店主 小田 宏 /Oda Hiroshi

1979年福岡県福岡市生まれ。ドラマーとして音楽活動を行なった後に家業の不動産業へ。 2014年に『博多大砲ラーメン」の事業を継承しラーメンの世界へ。 2019年に新宮店を開業し、2024年に本店を閉めて一店舗を運営している


中洲にかかる春吉橋のたもとに一軒のラーメン店があった。店の名前は『博多大砲ラーメン」。創業は昭和39年と60年の歴史を持つ福岡屈指の老舗は、地元民から観光客までいつも多くの人で賑わう人気店だったが、建物の老朽化などにより2024年に惜しまれつも閉店となった。 「言わば中洲のアイコンのような存在の店だったので、閉店はとても残念だったのですが、これからは新宮の地で屋号と味を守っていきたいと思っています」。

三代目店主の小田宏さんは、東京で長年音楽活動をしたのちに帰福し、家業である不動産業に従事していた。そんな中で後継者不在だった店を継いでくれないか、という申し出を受けて畑違いのラーメン業界へと転身した異色の存在だ。
「一緒に働いていた義理の弟が長年ラーメン店での経験もあったので、彼が現場で僕が経営という形でチャレンジしてみようかと、継承させていただきました」。
しかし引き継いだ当初はなかなか味も決まらずに苦労が続いた。
「昔の味はどうだったかを聞いて、原点に立ち返ろうと。古くからいたスタッフの方たちの助けもありましたが、一番のアドバイザーは 長年の常連さんたちですね。 長年の 中で変わっていた部分をもとに戻すのに一年はかかりました」。


醤油ダレは先代からのレシピを変えることなく、臭みのないまろやかなスープは原点に回帰して骨を継ぎ 足す呼び戻し製法に。 麺は福岡の老舗製麺所 『青木食産』製の低加水細ストレート麺。数ある博多ラーメ ンの中でもかなりの細麺だ
豚骨スープは豚頭骨とゲンコツを継ぎ足しながら丁寧に炊き上げる。チャーシューの醤油も継ぎ足して旨味を重ねていく。当たり前のことを愚直に丁寧に。厨房も狭かったため小田さんの地元の新宮に仕込み場を兼ねた新店舗も立ち上げた。 「仕込み場として考えていたので 未経験でも出来るだろうと僕が店に立ったのですが、開店初日から行列が出来てしまって大変でした」。


「今流行りの味ではない昔ながらのオーセンティックな味わいですが、60年の歴史がある味ですからそれを守って いくことが何より大事だと思っています。 いつ来ても変わらない同じ味だねと言われるのが理想ですね」

飲食経験のまったくなかった小田さんだが、新宮店ができてからは経営だけではなく現場に立った。日々の営業の中で失敗を重ねながらも ラーメンの経験を重ねていった。
「接客も仕込みも初めてだったので最初は苦労しました。スープ作りが特にデリケートで、火加減や骨を入れるタイミングを間違えると焦がしてしまったり。この状態ならこ のくらいは出ているなと、どういう状況になっても焦らず出来るようになるのには、やはり一年くらいはかかりましたね」。


博多大砲ラーメン 新宮店 【所】糟屋郡新宮町下府3-1-27【☎】092-410-6339
【営】11:00~15:00/ 18:00~21:00【休】月曜 【席】11席 【P】 あり     カード/可

しばらくは本店と新宮店の2店舗で営業を続けていたが、本店の閉店に伴い老舗の味を守るのは新宮店だけとなってしまった。「コロナ禍でかなり痛い目にも遭いましたし、 これからまたどういうご時世になるかも分からないので、今の思いとしては店舗を増やすつもりもなくて、この店を全力でやっていきたいなと考えています」。


『チャーシューメン』 (900円) / 秘伝の醤油ダレでじっくりと煮たチャーシューは味がしっかりと染みている。 『Sランチ』 (1300円)/常連客一番人気のランチセットは、ラーメンに焼きめし (小)と唐揚げ3個か餃子4個がついてくるお得なメニュー
経験のないままにラーメンの世界に転身して早十年。小田さんは今が一番 楽しいと語る。「仕事としてのやり甲斐は一番じゃないですか。お客さんの顔を見られるのが何よりのモチベーション。直接美味しいと言って頂けると苦労が 帳消しになりますね」。

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■取材を終えて

往年の味を取り戻した博多のマスターピース

私が初めて『博多大砲ラーメン」を食べたのはもう20年以上も前になりますが、その後食べ続けている中である時からスープがグッと良くなって、美味しくなったのを覚えています。今から思えばそれが小田さんに代替わりしたタイミングだったのでしょう。老舗の中にはラーメン作りが慣れからくる「作業」となってしまって、いつしか味が落ちてしまうという店も少なくありません。 小田さんはラーメンの素人だったので愚直に美味しさを追求することしか出来なかった。その結果、正直味が落ちていた老舗 のラーメンが見事に復活したのです。店舗は増やさずに新宮だけを守ると言っていた小田さんですが、いつの日かまた中洲や春吉で食べられる日が来ると良いなぁ。

ラーメン評論家

山路力也 / Rikiya Yamaji

テレビ・雑誌・ウェブなど様々な 媒体で情報発信するかたわら、 ラーメン店のプロデュースなど、 その活動は多岐にわたる。「福岡ラーメン通信」でも情報発信中


掲載の内容は取材時のものです。取材日と記事公開日は異なる場合があり、メニューや価格、営業時間、定休日など取材時と異なる場合がありますので、事前に公式HPやお問い合わせにてご確認をお願いします。

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