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【美味本2025】頂点を極めし『博多一双』にみる豚骨ラーメンにおける“泡”の深淵

 

~とことん強く、優しい。凛とした王者の風格~

頂点を極めし『博多一双』にみる
豚骨ラーメンにおける“泡”の深淵

 

“泡”は宝物。だけど、すべてではない。

 

「タマゴが先か、ニワトリが先か」。哲学的なこの疑問は永遠のテーマであるが〝仮に〟同じような因果性で、『博多一双』のラーメンは「泡が先か、旨いが先か」と問われたとする。答えは、胸を張って後者。言い換えると、泡があるから旨いのではない。「旨いラーメンには泡が立っていた」ということだ。皆も実感しているように、ラーメン文化はフリーダム。国籍を超えて作り手も食べ手も、発信する人も自由さに満ち、いわば正解がないことがラーメン最大の魅力であろう。そして、群雄割拠のラーメン業界において『博多一双』がキングオブキングスであることも、この約12年間の活躍を通じて知っている。ゆえに、冒頭のような難しいことは考えず、同店の一杯をただ〝うまい!〟と夢中になって啜ることがもちろん第一。しかし次なる段階では、〝豚骨カプチーノ〟との通称でアイコン的存在となっている〝泡〟について、しっかりと理解することが大事であると進言する。そのことこそ、『博多一双』の深淵に迫り、二度三度訪れる際も新たな気付きとなるからだ。

 

まず、この泡の正体はいったい何なのであろう。それは〝脂泡(しほう)〟。熟練の職人技により、豚骨由来の上質な脂分が程よく熟成、空気と触れ合うことで生まれるものである。店主の山田晶仁さんは2012年の開業前、何より〝自分の好き、食べたい一杯〟を求め研鑽を重ねていた。「骨の部位を変え、量を変え、比率を変え、火力を変えと、とにかくさまざまな製法を試しました。ようやく〝自分の美味〟をピタリと表現できた時、そのスープにはきめの細かい泡が立っていた。狙った泡ではなく、旨いを求めた結果のものなのです。以来、脂泡はいいスープのバロメーターとして捉えるようになりました」。

 

山田さんのラーメンは一気にブレイクし、その象徴的な泡が特に着目されるようになる。しかし、それはあくまで副産物であるということ。山田さんはこう続ける。「最初は無我夢中でしたが、長年豚骨と対話することで少しずつ泡が立つメカニズムが理解できるようになりました。骨の多さや火力の強さ、程よい酸化、熟成、頻繁な撹拌など、そこにはいろいろと関係しているのですが、〝乳化させすぎないこと〟も大きな要因だと考えています。これは持論ですが、乳化させすぎてしまうと、どうしてものっぺりとした感じになってしまう。僕は、骨のまわりから染み出る脂分のほんのりとした甘味と、骨密度の高さを感じるようなストレートな味わい、双方が絶妙に合わさるスープにしたいというのが創業から変わらない理想。そのために、追い骨、骨替えをするタイミングを見極めながら、呼び戻しをかける。妥協を一切しない、それらの工程があってこその泡であると確信しています」。

 

 

一粒一粒が生き、優しく弾ける。
職人と共に“味”を重ねる呼び戻し

 

2024年6月、『博多一双』は『新横浜ラーメン博物館』へ出店し、現在福岡の店舗と同じく長蛇の列を作っている。いち博多豚骨ファンとして、とても誇らしいことであるが、ここで主に伝えたいのは、その大成功という結果へと繋げるためのいわば布石、影の努力について。山田さんの強いこだわり、スープへの美学を改めて知ることができる。まず、山田さんはこれまで、多くのラブコールがある中でも商業施設への出店を控えていた。「『博多一双』そのものの味わいを出すための厨房設備、環境が整っていない」ということが大きな理由としてあったからだ。しかし今回、〝ラー博〟は、本物を出せるよう徹底的にサポートした。

 

「ラー博館長はじめ、関係者の皆さんの熱意に打たれました。大型の寸胴を全6基、高火力のバーナーも設置でき、福岡と同じように呼び戻しをかけることが可能となったのも前向きになった理由です」と振り返る山田さん。そしてやはり〝スープは生き物〟である。厨房設備が整ったからといって、すぐに営業できるという訳ではない。大量の骨を強火で炊き込めばいいという単純な話ではないのだ。「営業開始日の何週間も前に現地に入り、寸胴を馴染ませ〝スープを育ててきました〟。そしてある程度立ち上がったところに本店から送った熟成スープをブレンド。さらに微調整を繰り返しながら仕上げました。もちろん麺も醤油ダレも福岡と同じです」と山田さんは話す。

 

『博多一双』はどの店舗も、五感のすべてを使う呼び戻しの技を習得し、ホスピタリティにもあふれた一流の職人が迎えてくれる。ひしゃくの先がまるで指先のような研ぎ澄まされた感覚。スープを寸胴からすくう際、理想としているひとすくいで1杯分〝スープ9、泡1〟の割合で、正確に繰り返すことができることも驚きの技である。

 

昨年はラーメン博物館出店のほか、10月には、居酒屋「いとおかし」とコラボレーションした周年祭でも話題を集めた『博多一双』。2025年もさらなる躍進、新展開で皆に笑顔を届ける。

 

 

博多一双 博多駅東本店
福岡県福岡市博多区博多駅東3 – 1 – 6
092 – 472 – 7739

博多一双 中州店
福岡県福岡市博多区中洲2 – 6 – 6
092 – 262 – 7776

博多一双 祇園店
福岡県福岡市博多区祇園町3-2
092 – 282 – 3957

 

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