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【福岡ラーメン物語 のぼせもん|83杯目 中華そば 栄

「和食よりもうどんよりもラーメンが一番難しいです」

 

悩み続けた日々がまるで嘘のように。面白そうだと飲食の世界へと足を踏み入れた。自分の好きなものを出したい一心で、ついにたどり着いた濃厚醤油ラーメン。豚骨ラーメンしかなかったこの街で。

「中華そば」 (880円)/ブランド豚の背骨とブランド鶏の鶏ガラに魚介系素材をふんだんに使用した濃厚なスープ に、うどんの技法を駆使して作る自家製麺。 素材の旨味と香りにあふれた日本人のDNAに訴えかける醤油ラーメン

 

中華そば 店主

太田栄治 / Ohta Eiji

1986年福岡市生まれ。高校卒業後、餃子店や和食店での修業を経て、2014年「食堂えぶりお (現食堂はまかに)」を創業し、2022年「中華そば 栄」を開業


豚骨なのか非豚骨なのか。多種多様こそが魅力のラーメンの世界で、豚骨であるか否かでラーメンを括るのは些か乱暴だ。作り手の数だけ味がある。それこそがラーメンという料理の真髄なのだから。 赤坂の『中華そば 栄」で提供しているラーメンは魚介の旨味が効いた醤油味。かと言って昔ながらの中華そばとはまったく別物。もちろん豚骨ラーメンでもないが、豚骨ラーメンに負けない旨味にあふれている。少なくともこれまでの福岡にはなかったラーメンだ。

麺は福岡県産「チクゴイズミ」と北海道産ゆめちから」を中心に小麦をブレンド。

 

「自分が東京にいた時に衝撃を受けた、濃厚な豚骨魚介味のラーメンを出したいと思ったんです。福岡ではこんなラーメンを食べたことがなかった。それを福岡の人にも食べて欲しいと思いました」。 店主の太田栄治さんは長年和食の世界に身を置いてきた。数々の人気店で修業を重ねて独立し、自身の営む料理店も人気を集めていた。 そんな中で、美味しいうどんを作って喜んで貰いたいと、製麺を学んでうどん店を立ち上げたが、数年後にその店をラーメン店へと変えた。

 

「うどんを始めた時もそうなのですが、好きなものがあると作りたくなってしまうんです。うどんも好きですがラーメンも大好き。いつかはラーメン店をやりたいと思っていましたが、どうせやるなら福岡にはない味で勝負しようと」。

「和食もうどんもラーメンも料理という根幹は同じ。 味の構成やバランスでは和食での経験が、製麺ではうどんの経験が活きていると思います。醤油ラーメンの次は塩ラーメンに挑戦してみたいですね」

和食の料理人である太田さんからすれば、素材から出汁を引くのは容易なこと。麺もうどんの製麺で得た技術で打つことが出来る。しかしながら、良い出汁が引けて良い麺が打てたとしても、それがラーメンになるとは限らない。太田さんは知己のラーメン店主に教えを乞うて、ラーメンとは何たるか、ラーメンに不可欠な要素を学んだ。ラーメンならではのバランスがあるのだ。

スープに入れている福岡県産「若松ポーク」の背ガラ

 

「例えば昆布や煮干しから出汁を取るにしても、和食とラーメンでは考え方が違います。和食では雑味やエグ味と考える部分が、ラーメンにとっては大事な味の一つだったりするんです。それを体系的に学ばせて 「頂きました」。

他にもスープには福岡県産の「はかた一番どり」の胴ガラに、千葉県産の煮干しや羅臼産昆布などの厳選素材を惜しげもなく投入する

福岡で醤油ラーメンと言えば透明なスープのイメージがあるが、太田さんの中華そばは豚骨と鶏ガラを使った白濁スープがベース。そこに煮干しや魚節、昆布や干し椎茸などの和出汁の素材をふんだんに入れた。様々な旨味を重ねることで相乗効果によって旨味が深いスープが出来上がる。自家製麺は福岡県産の小麦を中心に、小麦の味と香りを生かすバランスの麺に仕上げた。

「特選つけ麺」 (1200円)※夜限定 / 小麦の香る自家製麺の美味しさをより堪能するならコレ。濃厚なつけダレに麺をたっぷりと潜らせて楽しもう。大盛りも同料金。

和食の経験とうどんの技術を惜しげもなく注ぎ込んだ一杯は、地元福岡の人たちはもちろん、県外からも客が訪れるほどの人気となった。さらに念願の 2号店を豚骨発祥の地、 久留米にもオープンさせることが出来た。このラーメンには太田さんの料理人としての人生が詰まっているのだ。

「キムチ飯」 (300 円)/常連客にファンが多い人気の一品。ラーメンとの相性も抜群

「和食やうどんよりもラーメンは難しい料理。自由だからこそ難しくもあり面白いと感じています。 一杯の丼の中で全てを完結させて、それを進化させていく過程が何よりも楽しいですね」。

 


■取材を終えて

彷徨える流浪の料理人が行き着く果ては何処だ

私と太田さんとの付き合いは和食店時代からなので十年ほどになります。 脇目も振らずに一所懸命というのが料理人のあるべき姿だと思っているのですが、彼ほど色々なものに興味関心を持ち脇目を振りまくっている人を私は知りません。いきなり和食屋を閉めてうどん屋を始めたかと思ったら今度はラーメン屋。彼の料理や店が好きだった私としては、うどんやラーメンなんかに手を出さず、 和食だけやっておいてくれよと思わなくもないのですが、うどんもラーメンも美味しく作ってしまうのだから厄介です。 果たして彼のラーメン屋としての人生はいつまで続くのか。 次は何に手を出すのか。ドキドキしながらこれからも見守っていきます。

ラーメン評論家

山路力也 / Rikiya Yamaji

テレビ・雑誌・ウェブなど様々な 媒体で情報発信するかたわら、 ラーメン店のプロデュースなど、 その活動は多岐にわたる。「福岡ラーメン通信」でも情報発信中


掲載の内容は取材時のものです。取材日と記事公開日は異なる場合があり、メニューや価格、営業時間、定休日など取材時と異なる場合がありますので、事前に公式HPやお問い合わせにてご確認をお願いします。

中華そば 栄

【所】福岡市中央区大名2-11-16
【☎】090-4778-0852
【営】11:00-15:00 18:00-22:30
(土曜17:00~21:00 日曜 11:00~16:00)
【休】日曜夜
【席】10席
【P】なし カード/不可

 

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