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【福岡ラーメン物語 のぼせもん|54杯目
博多ラーメン 駒や】

「同じように作っても毎日味が変わる。ラーメン作りが楽しくて仕方ないんです。」

豚骨ラーメンを食べて育った。ソウルフードは昔ながらの臭いがする豚骨ラーメン。しかし最近は臭いラーメンを出す店がめっきり減った。古き良き昔の福岡のラーメンがなくなってしまった。だったら俺が作るしかない。

 

 

博多ラーメン 駒や

店主 倉田承司(Shoji Kurata)

1977年、福岡県福岡市生まれ。大学を卒業後に起業し、いくつかの事業を手掛ける。2015年『鉄板焼き駒や』を創業し、2018年よリラーメンの提供を開始。2019年にラーメン専門店にリニューアル。

 

 

福岡市東区は福岡の豚骨ラーメンを語る上で欠かせない場所だ。戦後間もない頃にラーメン屋台を引いていた二人の男が、それぞれ馬出と箱崎に店を出した。店の名前は『博龍軒』と『赤のれん』。言わずと知れた、博多ラーメン源流の2軒だ。福岡の豚骨ラーメンの歴史はこの地から始まったと言っても過言ではないだろう。

そんな東区馬出の地で、今人気を集めている店が『駒や』だ。店主の倉田承司さんは馬出で生まれ育ち、老舗のラーメンを食べてきた。

「『博龍軒』『赤のれん』そして箱崎にあった『だるま』。この3軒が大好きだったんです。豚骨の臭いがクセになる、昔ながらの豚骨ラーメンがソウルフードなんですよね」。

倉田さんは大学卒業後に独立起業し、玩具店や熱帯魚店などを営んできた。飲食経験は学生時代のアルバイトだけだったが、居酒屋を営むことを決めた。

「祖父が亡くなって一人になった祖母が寂しくないようにと、地元の人が祖母と集まれるような場所を作りたいと思ったんです」。

独学で編み出したオリジナルのスープ製法は、ラーメン店で修業経験のある店長も驚くほど独特で理にかなったもの

昔ながらの「一銭洋食」を出す鉄板焼の居酒屋。曽祖母が昔営んでいたうどん屋『こまや』の屋号にあやかり『駒や』と名付けた。ある時、店の常連客から「豚骨臭い昔の豚骨ラーメンをまた食べたいな」と言われた。それはまさに倉田さん思い出の味でもあった。

「最近は豚骨臭いラーメンが少なくて、僕も食べたいと思っていたんです。そこで酔った勢いで『俺が作る!』と言ってしまい、ラーメン作りに没頭する日々が始まりました」。

地元の製麺所と相談して作ったオリジナルの絹ストレート麺は2種類。唐辛子を練り込んだスパイシーな麺も用意されている

居酒屋の営業が終わった後に毎晩試作を繰り返した。もちろんラーメンも修業経験はない。試行錯誤を重ねること2ヶ月。ようやく自分の理想のラーメンが見えてきた。

「一番こだわったのは『豚骨臭』。臭いのになぜかクセになる、昔のラーメンの懐かしい『あの臭い』を再現したかったんです」。

豚の頭とゲンコツ、皮を弱火でじっくり丁寧に炊いたスープは、前日のスープをベースにすることで、臭いがしっかりする、屋台で食べたラーメンをイメージした、深い熟成感のある味わいに仕上がった。

「ラーメン」(600円)/豚の豚骨、ゲンコツに豚皮を入れて低温でじっくりと炊き上げたスープは、豚骨臭さをしっかりと感じさせつつも食べやすい味わい。スープが濃厚なのでチャーシューは肩ロースを使ってさっぱりと仕上げた

昼のみ一日20杯だけ提供した豚骨ラーメンは一躍注目を集め、連日売り切れとなった。しかし20杯ではスープがなかなか安定しない。多く仕込むにはスペースもなく、夜の居酒屋営業にも差し障る。ならばいっそラーメン専門店にしようと、カウンターだけの店に改装した。

「名物!激辛高菜(小)」(50円)/「お金をもらって出す高菜だから」と、どこよりも激辛に仕上げたオリジナルの高菜は、ラーメンの油分とマッチするような味わいになっている

初めて作った時のラーメンと今のラーメンでは違う。営業を重ねるごとに進化していく駒やのラーメンは、地元馬出の人たちのみならず、ラーメン好きが遠方から足を運ぶなど、多くの人に愛される味になった。倉田さんはラーメン作りにすっかり魅せられた、立派なラーメン職人となった。

「同じように作っても毎日味が変わるのがラーメンの面白さだと思うんです。日によって違うものをどうやって安定させるかを考えてやってみる。ラーメン作りは奥が深くとても楽しいです」。

「ワンタンめん」(750円)/昔ながらの博多ラーメン店には欠かせないアイテムの「ワンタン」。ピロピロとしたワンタンとザクッとした麺との食感のコントラストを楽しむのも一興

 

 

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●取材を終えて

食べるたびに進化するパワフル豚骨

「馬出の居酒屋が始めたラーメンが凄いらしい」 という噂を聞きつけ、僕が初めてお店にお邪魔した時は、まだ夜に居酒屋をやっている二毛作営業でした。その時に食べたラーメンも十分美味しく感じましたが、今のラーメンはさらに進化した印象を受けます。店主の倉田さんは独学である故に、固定観念にとらわれずにラーメンと向き合うことが出来ます。そしてどうなったら美味しくなるかを日々考えて研究しているので、どんどんラーメンが進化しているのでしょう。きっと一年後のラーメンはもっと美味しくなっているはず。そんなワクワクを感じさせてくれるのが駒やのラーメンなのです。次にお邪魔する時が今から楽しみでなりません。

【ラーメン評論家 山路力也】
テレビ・雑誌・ウェブなど様々な媒体で情報発信するかたわら、ラーメン店のプロデュースなど、その活動は多岐にわたる。「福岡ラーメン通信」でも情報発信中

 

 

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掲載の内容は取材時のものです。取材日と記事公開日は異なる場合があり、メニューや価格、営業時間、定休日など取材時と異なる場合がありますので、事前に公式HPやお問い合わせにてご確認をお願いします。

 

 

博多ラーメン 駒や

【所】福岡市東区馬出2-5-7
【☎】092-292-9480
【営】11:00~20:00(スープが無くなり次第終了)
【休】月曜
【席】7席
【P】なし
カード/不可

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