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サウナ備忘録 Vol.0
Beyond The Sauna

去年の9月15日、忘れもしない。
私が西の聖地『サウナと天然温泉』湯らっくすでサウナに目覚めた日だ。

その前週、私は熊本にある<ウエダ不動産事ム所>の店内で、代表のウエダさんから洗脳に近い勧誘を受けていた。
「サウナに入ると頭がクリアになる」「サウナに救われる」「水風呂で身体と水の境界線がなくなる」「空も飛べるはず」そんな怪しげなワードが並び、「この人怪しいクスリでもやってるんじゃないか?」と訝しんでいたときに、ウエダさんから「とにかくこれを見てほしい」と手渡されたのがタナカカツキ氏の漫画版『サ道』だった。

そんな前座の後に手渡されたものだから、もう完全にイリーガルな指南書、アウトローの入り口みたいな書物だったらどうしよう…と不安にも感じたが、『ウエダさんがハマるものに間違いはない』という信頼感から恐る恐る読み進めた。

このウエダさん、とにかくこだわりの強い人で一度ハマると、とことんハマるタイプ。
でもそのセンスは最高で、「不動産屋らしくない不動産屋」をテーマにしている<ウエダ不動産事務所>はスイスのメッセンジャーバッグを店内で販売したり、『あんぐら不動産』なる怪しい名前だけど最高にカッコいい物件ばかりを集めたポータルサイトを運営したり、とにかく熊本でみんなに頼られている面白くてカッコいい不動産屋なのだ。

そんなウエダさんが今一番ハマってるのが「サウナ」だなんて言われたら興味がわかないはずがない。
読み進めていくと『サウナの入り方』やいわゆるサウナトランス状態のことを『ととのう』とサウナ好きは呼称することが分かってきた。
とりわけこの『ととのう』という状態がどんなものなのか知りたくて、さっそくウエダさん一押しの『湯らっくす』に取材を申し込んだ。

ことはトントン拍子に進み、『湯らっくす』代表の西生社長。そして『湯らっくす』の何やらすごいらしい『メディテーションサウナ』というサウナで何やらすごいらしい『メディテーションサウンド』を作曲したらしいというサウンドクリエイター・安宅氏(もうここらへんはどんな経歴なのか全く理解できていなかったがとにかく取材を申し込んだ)。そしてウエダ氏。この3名で対談をする流れに落ち着いた。

そして9月15日。あらかじめ知識は予習してきたものの、サウナには入れていないまま取材は始まった。
そんな中でもこの3人の熱は私を熱く撃ち抜き、彼らの語る『サウナ』の素晴らしさの虜になった。


当時の対談時の写真。左から安宅氏、西生社長、ウエダ氏

「この対談が終わったらすぐにでもサウナに入って見たい!」そんな期待値最大の状態でその時は訪れた。
「せっかくなので百聞は一見にしかず。サウナに入ってみませんか?」と西生社長に誘われて、私のサウナ童貞は百戦錬磨のサウナ愛好家である西生社長、安宅氏、ウエダ氏に手取り足取りエスコートされて奪われたのだった。


西の聖地湯らっくすのメディテーションサウナ。
室内はほの暗く、白樺の枝葉を束ねた『ヴィヒタ』の香りで満たされている。
サウナストーブに自ら水をかける「セルフロウリュ」が可能な全国でも数少ないサウナのひとつ

メディテーションサウナでは実際にどんな想いでこのサウナを作ったのか、どこが素晴らしいのかを実際に作った西生社長から説かれながら、安宅氏から「この場所から聞こえるか聞こえないかギリギリの音量で水の音を流してるんです」とこだわりまくった音響の話を聞く。そんな筆下ろしを受けながらサウナに入り、サウナから出たあとは生まれたてのひよこが親鳥を追うように3人の後を追い水風呂に入る。
「この時間が適正なのか?」「こんなに長時間入って体は大丈夫なのか?」そんな根本的な疑問も親鳥である3人を追うことによって安心感を持って水風呂に浸かっていられる。


湯らっくすの水風呂は阿蘇の伏流水をかけ流した天然水の水風呂。
12度~15度ほどに冷やされた水風呂は最高に気持ちいい。
水深171cmで日本一深い水風呂としても有名。

そして水風呂のあとに「ここに座ってください。特等席です。」と促されたのは湯らっくす内で唯一完全露天スペースになっており空を仰ぎ見ながら座れる休憩用の椅子。

そこに座って目をつぶった瞬間、その瞬間は訪れた。
自分の体内で心臓が脈打つ鼓動が反復し、意識がどこか遠くに向かっていく。
体はコントロールを失い、椅子と一体化したような、または空に向かって意識だけが飛んでいくような、形容しがたい感覚。そのときに思ったのは「このまま戻れなくなるんじゃないか!?」という危機感と「これはとんでもない快楽だ」という驚き。
どこか自分の中で事前の情報収拾からサウナの快楽に対するハードルを上げていた部分もあったと思う。
しかしそんなハードルを易々と飛び越えてサウナは自分に人生最大の衝撃を与えてくれたのだ。

そこから私はサウナに取り憑かれた。
毎日のようにサウナに通い、サウナが全てを救ってくれる。
どんなことがあってもサウナに行けばマインドをリセットできるといったような盲信に囚われてしまったのだ。
実際にはそんなことはなく、サウナのとんでもない快楽も回数を重ねるごとにそよ風のような爽やかなものに形を変えていった(まれに台風なみの暴風になることもあるが)。

しかし今でも慣習は残り、純粋にサウナや水風呂、そしてサウナ施設で堕落することが好きになり今に至っている。
最近ではサウナ仲間と一緒にテントサウナたる「アウトドア+サウナ」を体現したアクティビティをすることも増えた。
そう、サウナは所詮「風呂」なのだが、それゆえに無限の楽しみ方がある素晴らしいカルチャーなのだ。

これから、そんなサウナについて少しずつこの場を借りて備忘録を綴っていきたいと思う。