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【フクオカ・メイド Vol.5】刃物メーカー・ちくぜん

【連載企画】フクオカ・メイド vol.5

フクオカ・メイドのモノに注目し、その現場を訪ねる企画。今回は平安時代に筑前地方で生まれた日本刀にルーツを持つ『博多包丁』の造り手を訪ねました。海外からも求める人が多いというその美しさ、アッと驚く切れ味に、「これぞクールジャパン!」となぜか誇らしい気持ちになりました。

 

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どんな食材にも使用できる万能性と優れた切れ味、耐久性、そして美しさ。これらすべてを兼ね備えた「博多包丁」は、およそ100年前に博多区東光寺町にて創業し、現在は古賀市に工場を構える『ちくぜん』で作られています。

『ちくぜん』では全国の食品メーカーに卸す機械用刃物の製作を主としているため、包丁は完全受注生産制。注文から納品まで約半年~一年の期間を要しますが、一度手に入れれば「一生モノ」です

出迎えてくれたのは刃物を扱う職人でありながら、とても柔らかで優しげな雰囲気を醸す、3・4 代目の牛原健一さんと滉貴さん。
しかし、いざ機械と向き合い包丁の研磨を始めると、その眼差しや姿勢のすべてに洗練された鋭さが宿ります。

3代目・牛原健一さんと4代目・滉貴さん

平安時代の筑前で生まれた『筑前刀』という日本刀にルーツを持つ博多包丁。その特徴は、刃の断面が緩やかなカーブを描く”ハマグリ刃“という形状と、背の部分が反り上がった独特のフォルムです。

実際に使用すると、その二つの要素が包丁の切れ味にとてもよく作用していることが実感できます。「ハマグリ刃は食材に食い込みやすく、繊維を傷つけにくいので料理の味も美味しくなりますよ。また背が沿っていることで重心が自然と前へ動き、軽い力でもスムーズに切ることができます」と健一さん。

鍛冶屋として創業する以前から代々受け継いできたという博多包丁の製法は、他に流れを汲む人がいないというほど希少な伝統ですが、滉貴さんが後を継ぐことには反対の気持ちがあったといいます。「自分も後を継いだ身ですから、その苦労を味わってほしくないと。製法をすべて言葉で教えられるわけでもなく、感覚に近い部分もあります。一生勉強です」その言葉には伝統を継ぐ者としての重みがありました。

近年は滉貴さんの働きかけにより包丁の柄に和・洋のデザインを加えたほか、初代から2代目にかけて引き継がれてきた“清”の文字の刻印も復活させた

一方、滉貴さん主導で行なうSNSでの発信やポップアップストアの出店に、確かな手ごたえも感じているようでした。「この間はパリから親子が包丁を見に来られましたよ」と嬉しそうに教えてくれました。後を担う滉貴さんへ今後の展望を尋ねると、「まずは知ってもらうこと」と一言。謙虚な言葉の奥に熱い決意を感じ、その姿が眩しく見えました。

 

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上から順に 博多包丁 ペティナイフ(1万9800円)、博多包丁 洋 万能(2万4200円)、博多包丁 和 万能(2万4200円)

 

 

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ちくぜん(直売所)

工場に併設の直売所(在庫があるもののみ購入可)や、来年2月21~27日にかけて大丸福岡天神店に出店する期間限定ショップでは、実物を手に取って見ることができる

所:古賀市谷山1118-7
☏:092-944-4641
営:9:00~17:00
※訪問の際は事前連絡が必要
休:日祝日
P:なし
カード/可、QRコード決済可

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