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【インタビュー】Fuku Spo – アビスパ福岡/三國ケネディエブス

DF 三國ケネディエブス(背番号20)

追い続けた兄の背中。

今度は自分が、その背中を見せる番。

6名の新戦力も加わり、

今季の戦いぶりに期待が高まっているアビスパ福岡。

昨年8月にレンタルから復帰した三國ケネディエブスは、

勝負の年となる2023年にどんな爪痕を残せるか。

 

取材・文/岩井咲里香


兄の背中を追い続けた学生時代

 

「兄の影響で、僕もサッカーを始めました」。

 

決して珍しい話ではない。サッカーを始めたきっかけを選手に聞けば、体感で8割くらいはこう答える気がする。

 

三國兄弟も同じ。兄・スティビアエブス(FC岐阜)の背中を追いかけ、小学校に入るとサッカーを始めた。

 

「6人兄弟なんですけど、母親は全員プロにするって意気込んでいましたね」。

中学からサッカーのために単身で青森へ。親元を離れることに抵抗は全くなく、寮に帰ればいつも友人がいる環境を楽しんでいた。

 

そんな中学生の彼は、かなり“やんちゃ”だったらしい。当時の上田大貴監督(現・町田ゼルビアコーチ)に「お前は本当に手が焼けるやつだった」と、よく言われていたほど。

 

「今振り返ると、王様みたいな感じでしたね。練習中にうまくいかなかったらすぐ不貞腐れたりして、よくしかられていました。中3の時には親まで連絡が行って…。そこでやっと気づいて、徐々に丸くなった気がします。上田さんには本当に感謝していて、すごく優しい方なんですけど、サッカーや私生活のことは結構厳しく指導してもらいました」。

 

中学時代の3年間で、サッカーの技術だけでなく人間としても成長した彼は、中学最後の全国大会で優勝し、得点王に輝いた。

 

さらに、この頃から世代別日本代表に召集されるように。普段から強豪校でプレーしていても、代表選手たちのレベルの高さには圧倒されたという。

 

そして高校時代。今年からFC町田ゼルビアの新監督に就任した黒田剛監督のもと、めきめきと実力を伸ばしていった。

 

しかし、高2の春キャンプで大きな決断を自ら下すこととなる。中学時代に全国で得点王を獲った彼が、CBにコンバートする決意をするのだ。

 

「高校2年生くらいから、FWとして結果があまり出なくなってきた時に、中村駿太が柏レイソルの下部組織から編入してきて。自分の中では高2のうちからスタメンで試合に出ていないとプロになれないと思っていたので、このままではマズいと、『CBやってみたいです』って黒田監督に電話したんです。最初はちょっと否定的で、「どっちやっても変わんないよ」みたいな感じで言われたんですけど、最終的にはわかってくれて、「練習からやってみなさい」とチャンスをくれました。」 

 

それからは、土曜にプリンスリーグ(Uー18サッカーリーグ2部)にCBとしてスタメンで出場し、日曜にはプレミアリーグ(1部)にFWとしてベンチに入る…。そんな目まぐるしい日々を過ごした。実戦経験を積んでいくうちに手応えを感じ始め、3年時にはCBとして全試合でスタメンを掴むまでに。

 

こうして迎えた、最後の全国高等学校サッカー選手権大会。青森山田史上2度目となる全国制覇を成し遂げ、自身も優秀選手に選ばれた。

 

「兄貴が2個上の代で初めて優勝していたので、絶対に優勝はしたかったんですよ。兄さんに負けたくなくて。そもそも、青森山田に入ったのも、プロになりたいというよりは選手権に出て活躍したいと思っていたからなんです。正月にテレビで見た、柴崎岳選手が高校2年生くらいの選手権は今でも印象に残っています。僕らの代は本当に個性が強い選手ばかりで、自分で『炎のストライカー』とか言っちゃう小松慧、スコットランドリーグに行った檀崎竜孔、今年ヴェルディに加入したバスケス・バイロン、飯田雅浩…。このメンバーをまとめ上げた黒田監督は改めてすごいなと。たまに、一緒になってリフティング練習したりとお茶目なところも魅力的でしたね」。

 

5万人の国立競技場とはまた違う緊張感がありました。

 

高校を卒業し、アビスパ福岡に入団。期待の高卒ルーキーとして、開幕戦からスタメン出場を果たす。プロとして初めてピッチに立った瞬間は、鳥肌が立ったという。

 

「5万人以上がつめかけた国立競技場での試合とは、また違う緊張感がありましたね。プロは背負っているものが違うというか、ファン・サポーターの気持ちを背負ってプレーすることの重みを体感しました」。

 

このまま順調にプロとしてキャリアを積んでいくかと思われたが、アビスパ福岡がJ1に昇格して以来、出場機会が激減。実戦経験を積むため、’21年5月からJ2の栃木SCに武者修行へ。栃木での1年3カ月は、彼が思い描いた通りにはいかなかったが、収穫は多かったという。

 

「福岡にいた時は、自分よりレベル高い人ばかりだったので、試合に出られなくても仕方ないと思っていた部分があって。J2の栃木に行って、自分と近いレベルの人たちとやっても試合に出られないことに危機感を感じました」。

 

それまでは後回しにしていた筋トレを強化。体格も一回り大きくなり、キレもよくなってきたと実感している。

 

心身ともに大きくなって福岡へ帰って来た彼の今年の目標は、試合に出ること。層の厚いCBのポジション争いを制し、長身を活かしてセットプレーからの得点も積極的に狙っていきたいという。

 

「将来的には、日本のDFといえば三國だよねと言わせる選手になりたいです」。

 

兄の背中を追い続けた彼が、今度は日本の子どもたちにその背中を見せる番だ。 

 

プライベートに迫るQ&A

Q.今ハマっているものは?

A.これまではあまり恋愛ドラマを見てこなかったんですけど、「First Love 初恋」を見てからハマっちゃって。今年に入って見始めたんですけど、もう3周しました(笑)。映像も綺麗だし、作りが好きですね。あと、なんといっても満島ひかりさんが可愛すぎて…。いつか会えたらいいなあ!

 

Q.福岡のお気に入りスポットは?

A.最近はあまり行けてないんですけど、志賀島ですかね。『anchor』というハンバーガーショップがあるんですけど、そこの『バッファローチキン』がめちゃくちゃ美味しくてよく買いに行っていました。

〈PROFILE〉

三國ケネディエブス

ディフェンダー 背番号20

生年月日 2000年6月23日

身長192㎝ 体重85㎏

出身地 東京都

青森山田中学に単身でサッカー留学し、全国中学サッカー大会では得点王に輝く。青森山田高校3年時に全国高等学校サッカー選手権優勝を経験し、’19年にアビスパ福岡へ加入。’21年に栃木SCへ期限付き移籍した後、昨年8月に復帰

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