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【インタビュー】松尾スズキ「私だっておじさんの形で生まれたわけじゃない!」

松尾スズキさん率いる大人計画の30周年を記念し、昨年、12月、東京・青山のスパイラルで開催された「30祭(SANJUSSAI)」。大好評を博したこのイベントが、松尾スズキさんの故郷である福岡に“凱旋”し、3月16日(土)よりイムズで「大人計画大博覧会in福岡」が開催されています。3月20日(水)のトークイベントで会場を訪れた松尾スズキさんに話を聞きました。


—「大人計画大博覧会」を福岡で開催するにあたって、どんな想いをお持ちですか?

松尾:大学を卒業後上京し、東京では25、6歳から演劇やイベントを精力的にやってきました。初期の頃はなかなか九州で公演はできませんでした。九州でできるようになったのは35、6歳以降の話で、それも本当にたまにしかなくて。僕が若い頃、どんなことをしてきたのかを、九州の皆さんはあまりご存じないのではないと思います。このステージに至るまでのプロセスを見ていただくチャンスはなかなかないと思いますので、どんな道を辿って松尾はここにいるのか、大人計画はこんな集団なのか、ということをわかっていただける展示になっています。(展示を)見ていただけるとわかると思うのですが、今までものすごくくだらないことをやってきました。こんなくだらないことをやっても生きていけるんだと、希望を持っていただくのもいいことだと思いますし、福岡で生まれた男の軌跡をパノラマで見る機会もなかなかないと思いますので、ぜひ皆さんに見に来ていただきたいと思います。

—「大人計画」といえば、宮藤官九郎さんや阿部サダヲさんなど、現在、大活躍されている方々が所属されています。今回、ここを見てほしい、こんなところを楽しんでほしいのは、どんなところでしょう?

松尾:僕だけでなく、うちの劇団員もみなさんが見ているのは、おそらくみんな中年を過ぎてからだと思うんですけど、その人たちの若い頃の写真が展示されていますので、みんな中年の形で生まれてきたわけでないことをわかってほしいですね。若い頃、お金はなかったけれど、充実した毎日を過ごしていました。写真を見て、溜飲を下げて楽しんでいただきたいですね。また、うちのスタッフもすごく頑張って、とてもいい状態で展示していますので、そちらもぜひ楽しんでください。

 

—30年を振り返ってみて、印象に残っているエピソードは?

松尾:宮藤官九郎が僕に「今年からバイトを辞めます」と言ってきたときは嬉しかったですね。かなり昔ですけど、当時、この仕事だけで食べられていたのは僕一人でした。なので、嬉しくて「やっと出た!」とガッツボーズをしたのを覚えています。それ以降、一人、また一人とバイトを辞めていくたびに、いいぞ、いいぞと思っています。いくらウケていても、劇団で食べていけなかったら、30年も続けることはできませんからね。そこは重要なポイントだと思います。

—「大人計画」は平成とともに過ごしてきました。劇団員の皆さんが各方面で活躍できるようになったのは、どのような背景があるとお考えですか?

松尾:僕らが成長した部分と、世間が僕らに慣れたという2つがあると思います。演劇の世界ではかなり前からウケていましたが、みんながマスメディアにのって「大人計画」という特殊な集団があるということが地方の方々に知って頂くまでにまでに結構時間がかかったなと忸怩たる思いもあります。でもそれはきっと、自分たちがやりたいことを曲げないでやってきたことの結果としての遠回りなので、そこに悔いはありません。

 

—最近は、劇団員の方とドラマや映画で共演する機会も増えてきました。現場ではどんな感じなのでしょうか?

松尾:一緒に演出されている状況というのは、ちょっと照れくさいというのはありますよね。彼らと現場で会うと不思議な気持ちになります。

 

—これまでずっと、「笑い」を追求してこられてきました。なぜ「笑い」が必要だと思いますか?

松尾:子どもの頃から、物事を窮屈に感じることがあって。親の躾とか学校のルールとか、他の人がスルーできることを敏感に抑圧と感じてしまうところがあるんです。そういうことに過剰反応してしまい、苦しくなったときに、唯一救いになったのが「笑い」でした。テレビ出見る芸人さんの笑いであったり、ギャグ漫画の笑いであったり……。そういうところに原体験というか、面白さを追い求めてしまうところがありますね。

 

—福岡で初めての公演は1983年のビブレホールでの「大人計画’93 不穏な動きシリーズ 鼻と小箱」でした。そのときのことは覚えていらっしゃいますか?

松尾:ビブレホールは学生時代にもやったことがあった場所。そこに帰ってくることができたというのは感慨深かったですね。

 

—今回、福岡に帰って来られての感想は?

松尾:福岡は学生時代によく遊んだ街です。当時、初めて彼女ができたので天神界隈でデートをした思い出がありますね。思い出の場所は天神地下街と大濠公園。今回も大好物の因幡うどんを食べることができ、満足しています。

—当時の松尾さんと同世代である、今の若い方へのメッセージをお願いします。

松尾:僕が若い頃って、僕みたいな得体の知れない人間でも世に打って出られるという空気感がまだあったんですよね。お金もそういう人たちに行き渡っているムードがありましたし、小劇場の俳優が深夜のバラエティ番組に採用されたりもしていました。僕らのようなサブカル寄りの人間にも生きる居場所があったんです。今、その場所は芸人が占拠していて、なかなか入っていけないと思います。僕の場合は、まだそういう時代だったから、その中で自分なりの特色を出して割り込んでいきたいという想いはあったけれど、どこかすごく人見知りで、人と関係性を結ぶことが難しくて。作品だけで勝負するしかないと背水の陣で東京へ行きました。他人に迎合したり、やりたくない仕事も生きるために多少はしたりしたかもしれませんが、ほぼ曲げずに、自分が面白くないと思うことも面白くしてやるぞ!という気概で生きてきたと思いますし、そこは自分の中で一つ誇れるところです。

今の若い人たちは、状況的に厳しいところがあるかと思いますが、ぼくのような人見知りでも、なんとかこうやって人前でしゃべることができています。やり方次第だなというのは思いますよね。そのやり方は各々で見つけていくしかないでしょうし、それがYouTuberなのかもわかりません。インターネットが入ってきてからは、僕らの生き様や表現のあり方は変わってきました。僕はそこからは取り残されているし、若い人の方が長けているかもしれませんね。

 

—今後の活動について教えてください。

松尾:今年は、個人プロデュースによる新劇団「東京成人演劇部」を発足し、芝居を打ちます。大人計画も大きくなって商業演劇にも出演しています。万単位のお客様を相手に表現することも増えてきた中で、もっとミニマルでシンプルなところに立ち戻って、演劇を始めたころの衝動を思い返すことのできる芝居をつくっていきたいと考えています。夏には北九州公演もありますよ。また、昨年は初めて自分が主演する映画「108~海馬五郎の復讐と冒険~」の監督・脚本をしました。今年秋に公開になりますので、こちらも楽しみにしていてください。

 

—最後に。福岡の皆さんへ一言お願いします。

松尾:子どもの頃から青春時代を過ごした福岡での時間は、今の自分を形成するための大事な時間でした。そこに帰ってきて、30年の軌跡を見ていただけるのはすごく嬉しいことです。ぜひ、イムズへ足を運んでください。よろしくお願いします。

<松尾スズキ/プロフィール>
1962年12月15日生まれ、福岡県出身。九州産業大学芸術学部卒業。作家・演出家・俳優。1988年「大人計画」を旗揚げ。主宰として多数の作・演出・出演をつとめる。1997年『ファンキー!~宇宙は見える所までしかない~』で岸田國士戯曲賞、2008年映画『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』で日本アカデミー賞最優秀脚本賞受賞。2019年は、大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』出演、秋には監督・脚本・主演映画『108~海馬五郎の復讐と冒険~』が公開される。

大人計画大博覧会 in 福岡

会期 開催中〜4月21日(日)※休館日:4/16(火)
時間 10:00〜20:00
会場 三菱地所アルティアム/イムズプラザ(福岡市中央区天神1-7-11 イムズ8階/地下2階)
料金 一般1,000円、学生800円、高校生以下無料 ※2会場共通チケット
URL http://artium.jp/exhibition/2019/19-01-otonakeikaku/

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