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【インタビュー】Fuku Spo – アビスパ福岡/ドウグラス グローリ

DF ドウグラス グローリ(背番号33)

サポーターへの感謝の気持ちは

プレーと笑顔で届ける。

第17節以降、度重なる複数失点に苦しんだアビスパ福岡。しかし、第20節の磐田戦ではクリーンシートでの勝利を収めてから、“堅守”の福岡が戻ってきた。夏の移籍・加入も含め、ここからどんな追い上げを見せてくれるのだろうか。

(取材・文/岩井咲里香)


あの最悪な悲劇は、私のサッカー観を変えました。

 「シャペコエンセの悲劇」。サッカーファンなら誰もが聞いたことがあるだろう。’16年11月28日、ボリビアからコロンビアへ向かっていた航空機が墜落。そこには、ブラジル1部リーグ所属のサッカークラブ・シャペコエンセの選手や首脳陣が多く搭乗していた。生還した選手はわずか3名という悲惨な事故に、ブラジル中、世界中が悲しみに包まれた。

「私が覚えていることは、人生の中で最悪な出来事のひとつだったということ。何人かの友人も亡くしましたし、お世話になったチーム関係者も亡くしました。当時、私はブラジルの別のクラブでプレーしていたのですが、チームにお願いして数日間離脱させてもらい、シャペコの街を訪れました。事故にあった選手の亡骸と対面し、彼らの遺族や友人に会いに行きましたが、残された家族の気持ちを考えると胸が張り裂ける思いでした」。

 今となってはアビスパ福岡の代名詞である‟堅守”に欠かせない存在のドウグラス・グローリは、シャペコエンセの下部組織出身。プロデビューまで育ててくれたクラブへの思いは人並みではなく、悲劇が起きた次のシーズンにはシャペコエンセへ戻ることを決意した。

 ’17年、天国へ旅立った仲間たちが遺したタイトルマッチ「スルガ銀行チャンピオンシップ」に、彼はキャプテンマークを巻いて挑んだ。浦和レッズとのゲームは0-1で惜しくも敗れたが、これが日本との縁の始まりだったのかもしれない。

 その3年後の’20年、アビスパ福岡への加入が発表された。選手として、そして一人の人間として成長したいと、生まれ故郷のブラジルから遠く離れた日本へ。

 アビスパ福岡でプレーするのは今年で3年目。今シーズンも後半戦に突入したが、J1リーグは勝点1で順位が大きく変動するほどの混戦状態だ。

「まだまだデリケートな状況は続くと思っています。この先もすべての試合で“決勝戦”のような心持ちでプレーしていくことが大事かなと。そうすれば、自ずと状況は良くなっていくはずです」。

 堅い守備が持ち味のチームだったが、第17節以降3試合連続で複数失点を重ねるという非常事態が起きた。しかし、そこから“堅守”を立て直すのに時間はかからなかった。第20節のジュビロ磐田戦ではクリーンシートで勝点3をもぎとり、「この勝利をきっかけに、今後も堅い守備をベースにいい試合をしていきたい」と、後半戦に向けての意気込みも充分だ。

日本に来て知ったサポーターという存在の温かさ

 あるサポーターの一声から、スタジアムでは多くのブラジル国旗がはためくようになった。今ではベルギーやスペインの国旗も観客席を彩っている。選手を鼓舞するサポーターの姿勢は、彼らのモチベーションになっているようだ。

「スタジアムで多くのサポーターが国旗を掲げてくれて、それを見るたびにエネルギーを貰えるし、『絶対、この試合に勝たないと』という気持ちになります」。

 サポーターへの感謝の気持ちは、彼の表情にも表れている。ゲーム終了後に選手たちがサポーターの元へ向かうが、満面の笑みで手を振る彼の姿に心を奪われた人も多いはず。特に勝利を掴めなかった試合においては、悔しさでうつむく選手もいる中で彼の笑顔は一際輝いている。なぜ、いつも笑顔でいられるのだろうか。

「まず、自分自身が笑顔でいることが好きなのもありますが、日本以外の国でプレーすると負けた後はサポーターから罵倒されることがほとんどなんですね。日本ではそういうことがほとんどなくて、サポーターの皆さんは試合中ずっと後押ししてくれて、終わった後もまた温かく拍手で迎えてくれる。自分としてはすごく嬉しい気持ちになります。そういったサポーターの皆さんに少しでも自分の感謝の思いを届けたくて、いつも笑顔で挨拶するようにしています」。

 場の雰囲気をよくするという点では、彼のイタズラ好きな一面も功を奏しているかもしれない。「クラブの中でもよくイタズラをしているそうですが…」と切り出すと、「自分でもそう思います」と笑いながらこう答えた。

「冗談言ったり、軽くからかったり、時にはスリッパや服を隠したりしていますが、できるだけその場の雰囲気が明るくなればいいなと思ってやっています。よくターゲットになるのは城後、(山岸)祐也ですかね。あと、武藤キットと通訳は常に餌食になっています(笑)」。

 鉄壁のディフェンスで魅せる頼もしきセンターバックは、ピッチの外では和やかなムードメーカーとして、今日も誰かに希望を与える。

《プライベートに迫るQ&A》

Q .福岡の街はどうですか?

A .天神と博多はいろんな選択肢があって好きです。あと、百道のビーチも綺麗でお気に入りです。

Q .オフの日の過ごし方は?

A .息子を公園に連れていきます。最近よく歩くようになって、ボールがあったら蹴るようにもなりました。試合があると一緒に過ごせる時間が限られるので、できるだけ彼と遊ぶ時間を確保しようとしています。

 

 

PROFILE

ドウグラス グローリ

ディフェンダー 背番号33

生年月日 1989年10月5日

身長189㎝ 体重84㎏

出身地 ブラジル

ブラジル・シャペコエンセの下部組織を経て、’08年にトップチームへ昇格。その後、ブラジルの複数クラブを渡り歩き、’19年にポルトガルのCSマリティモへ移籍。翌年にアビスパ福岡へ加入し、絶対的なCBとして守備の柱を担う

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