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【インタビュー】猪野秀史が初のボーカルアルバムをリリース「僕は毎回違うタイプの作品を出したいと思う性分なんです」

取材・文/本田珠里
撮影/武田洋輔

エレクトリックピアノの名器“フェンダーローズ”の音色に新しい息吹を吹き込んだ名盤『Satisfaction』(`06年)で注目を浴びたINO HIDEFUMI。独自の美しい世界観で幅広い音楽ファンを魅了し続ける彼が初の全曲ボーカルアルバム『SONG ALBUM』をリリース。その歌声は驚くほど魅力的で心地よく耳に響き、今まで少しヴェールに包まれていた猪野秀史というミュージシャンに少し近づけた気がした。

— 猪野さんは宮崎がご出身で以前は福岡で暮らされていたんですよね。『風街』は猪野さんのリクエストでしたが何か思い出はありますか?

ジュークレコードが上にあったので、90年代の半ばくらいまでよく来てました。まだ洞穴みたいな内装だった時で、マンガ本が壁一面に並んでいてよく読んでましたね(笑)。

 

— 福岡時代に音楽活動は?

60年代の音楽に固執したロックバンドをやっていて、僕はキーボードをやりながらボーカルを担当していました。

 

— ライヴでは歌うこともあったそうですが、リリース作品としてはアルバム『New Morning』(`13年)で歌声を披露されたくらいで(『Cry Me A River / Arther Hamilton』のカヴァー)、基本的にはインスト奏者のイメージだったので、今回ヴォーカル入り、しかも全曲と聞いて驚きました。世間的にみれば真反対の作品ですよね。

同じものをやってもしょうがないだろうっていう性分なんですよね。今回に限らず、僕はインストでも毎回違うタイプの作品を出し続けるタイプだと思うんです。1stアルバムがある程度売れて、その後「ヒットするから続編をつくりましょう…」みたいなオファーもたくさんいただいたんですが、常に新しい角度のあるものをつくり続けていくことが音楽家のやることじゃないのかという気がしたのでお断りしてきました。

 

— 細野晴臣さんのような大人ならではの色気を感じる声だなと思いました。ヴォーカリストとして影響を受けたアーティストはいますか?

細野さんはもちろん、さっき触れたように福岡時代に60年代の音楽をコピーしたりビーチボーイズのコーラスを研究したりと結構マニアックなことをやってたんです。ビーチボーイズって声が高くて、僕も歌うと実は声が高いんですよ。でも僕のカラーではないなと自分に合ったキーやスタイルを試行錯誤する中で、昔から大好きだった寺尾聡さんの『リフレクションズ』というアルバムを改めて聞いて、「あ、これだな」と、思ったんです。

 

— ああ、確かに寺尾聡さん声に近いです(笑)!作詞は小西康陽さんに2曲、ご自身で7曲されていて、正直、作詞までこなすとは!と、意外でした。

僕、音楽と同じくらい本が好きで、気になるフレーズや言葉を20代からずっと書き留めたノートが何十冊もあるんです。いつか作詞はするだろうと思ってたので、その書き留めたものの中から拾い集めたりしました。

 

— 大人だからこその脱力感と説得力がある素敵な歌詞だなと。あと1stアルバムを愛聴している私にとって『奇蹟のランデヴー』が「あ、猪野さんだ」と思わせてくれるキラキラ感と浮遊感のある美しいメロディを感じられて気付けばリピートしてしまっているんですが、周りの反応はどうですか。

そうですね、脱力してます。ある意味ゆるキャラですよ(笑)。『奇蹟のランデヴー』は確かに一番反応が強いですね。

 

— あとフェンダーローズの音色の影響か、バンドサウンドとしては新しいと思えるのに、なぜか懐かしくて落ち着くというか。

“過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい”というカメラマン・森山大道さんの言葉がすごく好きで、その言葉が僕の制作においての指針になっているので、おっしゃる通り、一見、古くも新しくも聞こえてくるのかもしれないですね。

— 色々なミュージシャンとお付き合いがある中で、小西さんに2曲作詞をお願いされたのはなぜですか。

僕は小西さんの歌詞に限らず文章も含めて、彼のシュールな言葉の世界がすごく好きなので、いつか一緒に仕事がしたいなと思ってたんです。ある日、夜中に二人でお茶をしていて、最近アルバム作ってるんですって言ったら、猪野さんの歌詞なら書きたいなと言っていただいたので、是非。というのがキッカケ。実は僕がやってる「イノセントレコード」の名付け親でもあるんですよ。

 

— 小西さん特有の空気感と、やはり“東京”を感じさせる歌詞でしたね。

素晴らしいですよね。小西さんの歌詞は宙に浮いてるような感じ、僕はストレートな歌詞しか書けないので(笑)、自分とはタイプの違う方にお願いしたいという気持ちもあったので嬉しかったです。

 

— 収録曲の全インストバージョンもボーナスCDとして付いてますが、やはりインストの音を求めてる人に向けたものですか?

そこはあまり意識していないですね。例えばレゲエの7インチには、A面は歌入りで、B面が歌なしバージョンになってたりする、そう言った認識で作りました。

 

— 数ある鍵盤楽器の中で、フェンダーローズに行きついた経緯は。

いろんな理由はありますが、ピアノが一番自分にピッタリくる楽器だと思っていたんですが、ハロルド・ローズというアメリカ人が第二次世界大戦中に兵士を慰安する音楽療法の一環として作った楽器だと知った時、自分の中で電気が走って感銘を受けたんです。そこでフェンダーローズをメインにしたアルバムを作りたいと思って完成したのが『Satisfaction』。ローズメインのアルバムで、僕が作ったようなフォーマットの作品は世界中探しても当時はほとんどなかったので、そういうものを残そうと思って。単純に癒しというより、その概念をくつがえすアプローチも入れながら最終的に人の心を勇気付けられたらっていう自分の中の理屈で始めたんです。今はバンドでも使う人が増えてますが、昔はスタジオの片隅にある古い楽器だったんですよ。そういうものこそリペアして使うことにすごく意味があると思ったんです。

 

— 確かに最初聞いたとき、ローズってこんなに美しい音色なのかと衝撃でした。今回、そんな猪野さんの音楽に魅せられた錚々たるミュージシャンの方々からコメントが寄せられていましたね。

仕事ではなくご好意で書いていただいたので、とても嬉しいし本当にありがたいですね。

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— 今回のツアーの内容が気になります。

ボーカル主体のライヴになりますが、Dirty Projectorsというブルックリンのインディーロックバンドの作品を制作期間中によく聞いていてコーラスワークが独特でそのドープな世界が面白かったので、僕もコーラスをひねくれた感じに実験的に使ってみようかなと。もちろん昔の曲もやりますよ。あとサポートドラムでハイスタの恒ちゃん(恒岡章)が参加できることになりました。楽しみです。

 

— 最後に、これは福岡で楽しみということはありますか?

僕ね、川端商店街の『どさんこ』のチャーハンが大好きで世界一だと思ってるので福岡に来たら絶対寄るんです。大将が「いらっしゃい」って言いながらフライパンを振ってる姿をみると、「俺もちゃんと頑張らんといかんな」って、自分をチューニングできるんです。その背中をみて東京に戻ることにしています(笑)。すごくかっこいいんですよ。気持が引き締まります。福岡には一番多感な時期に住んでましたし、僕を育ててくれたような街ですね。

撮影協力/風街

ライヴ情報

日時 4月11日(木)/20:30
会場 ROOMS(福岡市中央区大名2-1-50 大名ONビル3階)
料金 前売 3,500円 / 当日 4,000円 (1ドリンク別途)
チケットぴあ (Pコード:140-042)/ローソンチケット (Lコード:81682)/
問合せ 0977-84-3838(旅する音楽/ジャズとようかん)

【九州ツアー】
4月12日(金)鹿児島・MOJO
4月13日(土)熊本・早川倉庫
4月14日(日)佐賀・基峰鶴 – KIHOTSURU –

ツアー詳細はこちらから!

リリース情報

アルバム『SONG ALBUM』

発売中 INNOCENT RECORDS/3240円

ミニマルに削ぎ落とされたシュールな音とことばの世界
まっすぐに乾いた声で歌い上げる現代のアーバン・ブルース
猪野秀史 初の全曲ボーカル・アルバムが完成
・アルバム収録曲の全インストヴァージョン付き2枚組
・本人による全曲解説 / 見開き紙ジャケ仕様

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