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【インタビュー】BLUE ENCOUNT・田邊駿一「あの“奇跡の一週間”があったからこそ、バンドとして吐き出したい言葉があった」

「ただただ楽しいという気持ちを前面に押し出して作ることができた」というアルバム『VECTOR』を経て、BLUE ENCOUNTは今とても自由だ。パブリックイメージの“ブルエンっぽさ”から脱却し、「誰かにこう思われたいという考えを捨てた」「人に好かれようと思わなくなった」と話すvo&gの田邊駿一の表情からは充実感が感じ取れる。まずは2018年の活動を振り返りながら、その要因となった夏のビッグトピックについて愛情たっぷりに語った。

ストレイテナーのホリエさんから「ヤバい! 今ドームでお前らの曲が鳴ってる!!」ってメールが来て

 

—もう2018年も残りわずかですので、今年の活動を振り返っていただけますか。

田邊:3月にアルバムをリリースということで、それに向けて1月まではレコーディングの最終段階で、やっとそこでアルバムの全体像が見えましたね。3月でリリースキャンペーンをしっかりやって、4月は久々に2週間ほどの長期の休みをいただいたんですけど、小忙しいバンドなのでいざ休みをもらうとなにしていいかわからなくて、最初の一週間はずっと一人で飲んだくれていました。残りの一週間は地元の熊本に帰って、知人たちとお酒を…また飲んでますけど(笑)。あと、母方の実家が鹿児島にあるので、鹿児島にも6〜7年ぶりに帰って、本当に楽しかったですね。鹿児島の実家が車の整備工場で物凄く広いんですけど、鹿児島の最終日にそのガレージでパーティをしたら100人ぐらい集まりました。みんなが僕の凱旋を祝ってくれて。

 

—その間は音楽から離れていたんですか?

田邊:あえて離れようと思って、4月はブルエンの稼働が少なかったので音楽を聴かないという1カ月を過ごしてみたんです。それで自分の中で気持ちをリセットさせて、そこからは忙しい毎日になりましたね。5月はフォーリミのアリーナツアーに僕がサプライズ出演みたいなのがあったり。いきなりそれが仕事始まりだったんですけど、それからは春フェスで、泉谷しげるさん主催の熊本の阿蘇ロックフェスもあり。当日は大雨だったのが、ブルエンが『もっと光を』をやった瞬間に一気に晴れたり、あと、泉谷しげるさんが突然ステージの真ん中に出てきまして、「お前ら、もう1曲歌って帰れ」って、まさかの本編中にアンコールをいただいて。「えぇ!?」ってなって会場のみんなもヒートアップして、とにかく奇跡的な一日だった気がします。そして6月、いよいよアルバムの『VECTOR』ツアーが始まりまして。上半期はこんな感じですね。でも、4月に音楽から離れていましたが、オフってたらダメだと思いましたね。

 

—どうしてですか?

田邊:全然曲が出なくなったんですよ。その後すぐに曲作りの合宿に行ったんですけど、曲は出ても良いものにありつけないというか。足踏みしたのはおぼえてますね。「これからは絶対音楽を絶やさない方がいいな」と思いましたよ。動きまくってから休んだことで、自分は音楽のスイッチがやっぱりずっと入ってるんだなって。どっちかと言うとそっちの自分の方が好きなんだなというのがわかった上半期でした。

 

—なるほど。夏以降はいかがですか? フェスにたくさん出られたと思いますが。

田邊:7月以降はもう…とてつもなく忙しかったですね。ワープしましたもん。7月から今まであっという間すぎて。ホテルで目が覚めるたびに「ここどこだっけ?」という生活で。ツアーに並行してフェスも出させていただいて。その間に新譜のレコーディングもしたりで、久々にガツンと目まぐるしい中で音楽やってたなという気がします。ただ、下半期に至っては感慨深いことがたくさん起こりまして。

 

—どんなことでしょう?

田邊:僕の中で“奇跡の一週間”と読んでいるんですけど、初日がback numberの初のドームツアーの東京ドーム公演に遊びに行きまして。back numberとはもうインディーズの頃から先輩後輩の仲で良くしていただいていて、福岡や熊本で一緒にライヴをしてもお互い10人ずつぐらいしかお客さんを呼べないバンド同士で。その先輩の晴れの舞台で、開場中にBGMが流れているんですけど、色んなバンドの曲が流れていて、まさかの僕らの『もっと光を』が流れ出したんですよ。で、曲がフェードアウトする流れで本編が始まっていったんです。「う〜わ、やべぇ」と思った時にストレイテナーのホリエさんからメールが来て、「ヤバい! 今ドームでお前らの曲が鳴ってる!!」って。「いや、先輩、いますよ俺も」と思ったんですけど(笑)。今度はその数日後に、僕が今テレビ東京さんで『音流~On Ryu~』という番組でレギュラーコーナーのMCをやらせていただいておりまして、そこにゲストで森山直太朗さんに来ていただいたんですけど、森山直太朗さんは僕が音楽を始めるきっかけの人なんです。その人にお会いできて、喋りもお互いに止まらなくなっちゃって。お仕事の後に森山さんが「あの子は凄い。昔の自分を見ているようで親近感が湧く」って言ってくれていたらしくて。その次の日が千葉のZOZOマリンスタジアムで、エルレガーデンの復活ライヴ。僕はもうエルレの大ファン…というかマニアなので。その数日前にラジオのエルレガーデン特番に呼んでいただきまして、フォーリミのGENとキュウソネコカミのセイヤと、同世代3人でセットリストを予想したんですけど、ほとんど当たったんですよ。めっちゃマニアックな曲も当たったし演出まで当たってヤバいなと思ったんですけど、熊本にいる時からエルレを見てきた人間としては、その日は死んでもいいなと思えるぐらい感慨深かったと言うか。そう思っている人があの場にはたくさんいたと思うし、一曲一曲やる度に涙が零れて。軽い打ち上げにも参加させていただいたんですけど、細美さんがまた謙虚なんですよ。「めっちゃ最高でした」って伝えたら「いやいや、こんなオッサンをこれからもよろしくな」って言ってくれて。ライヴの申し込みに何十万もの応募がきたモンスターバンドの方にこんなに謙虚にされたら、後輩はなにも言えないじゃないですか。これが全て一週間の中の出来事ですよ?

 

—音楽人生の伏線を回収しまくった週でしたね。

田邊:『ONE PIECE』ぐらい回収してますよ。だからこそ、そこからのブルエンのライヴのやり方もパワーみなぎるというか、なによりも学生時代に憧れていた先輩方と今こうやって普通に接することができているというのが…。エルレのZOZOマリンスタジアムに行く時も、家から会場に行くまでずっとホルモンのダイスケはんとラインしてるんですよ。「ヤバイよね、今日!」みたいな感じで。ホルモンだって大好きな先輩ですからね。去年から今年にかけてかなりウルトラCなことが起きていて、去年は感動しかできなかったんですけど、今年はしっかりと吸収して自分たちに活かせた1年だった気がします。

 

結局、自分本位だけど誰かに受け入れられるものがロックなのかな

 

—今のお話を聞いて凄く腑に落ちたのが、最新シングルの『FREEDOM』の3曲全てから渇望や向上心が感じられたんですね。それは満たされていない故の渇望ではなく、さらに上の景色をイメージしているからこそで。たとえば『それでも、君は走り続ける』の中の「ゴール たどり着く それでゴールか?」という言葉は特に象徴的であるし、そういった経験が反映されたのが『FREEDOM』の3曲ではないでしょうか。

田邊:本当にそうで、この激動の一週間がなかったらできなかったと思います。あの頃の自分たちに見せたい今があるから、今からの未来をどう作っていくかを自問自答できたからこそ『それでも、君は走り続ける』の歌詞が書けたんだと思います。

 

—『VECTOR』の時から自由さというのはキーワードに挙がっていて、『FREEDOM』というタイトルの時点でなるほどと思いましたが、今回は『BANANA FISH』のアニメの主題歌ということで、作品にも寄り添いながら自分たちのこともバランスよく描けていますよね。

田邊:そうですね、バランスは1:1だと思います。今回はビックリするぐらい『FREEDOM』の歌詞を一瞬で書けたんです。『FREEDOM』はメロディも構成も凄いスピードで全てできたんですけど、それだけ自分たちが今作りたいことと、作品の物語の波長や波動が合った気がします。こんなにも自然とアウトプットできることって意外となくて。一回作って制作サイドの方とやり取りしていくのが一般的なタイアップ曲のイメージだと思うんですけど、ブルエンって作品を噛みしめないで作り出すんですよ。たとえばアニメだったら『銀魂』とか『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』もやらせていただきましたけど、凄く壮大なストーリーじゃないですか。原作を読めば読むほどインスピレーションが湧くと思うんですけど、僕の場合はそれに没入しちゃうと曲ができない場合が多いんですよ。良い意味で浅く広くなものが作品をデコレーションする時もあると思っていて。ただ、今回は個人的に『BANANA FISH』を第1シーズンからめっちゃ好きで観ていて、その途中でオファーをいただいて願ったり叶ったりで、リアルタイムで生まれた愛を楽曲にしようと思ったからこそすぐにできたんだと思います。その裏には激動の一週間を経験したからこそ、ブルエンとして吐き出したい言葉があったんでしょうね。

 

—「憧憬の火は燃え続ける」という言葉であったり、『ミュージック』だと「早く俺ら(の音楽)と出会おうや」という言葉はバンド自身のことを歌っていますよね。

田邊:そうですね、「『VECTOR』のツアーを経ての俺らのリアルは今これですよ」という経過報告をできる作品になったと思います。

 

—そこで「自分たちはもっと上へ行きたい」「上へ行ける」という自信が高まったのでは?

田邊:むしろ初めて自信が身についたかもしれないですね。今は怖さが全くなくて、色んなものを生み出せるようになったと思います。結局ライヴもそうなんですよね。今年の下半期のライヴは上半期と比べて格段に違うと思います。

 

—そういうモードじゃないと、自身の楽曲に『ミュージック』と名付けないのかなと思ったんですが、でも聴いてみるととても衝動的な楽曲ですよね。

田邊:これは初めて酒を飲みながら歌詞を書いたんです。すると、まぁ〜言いたいこと言えるというか。初期のプロトタイプはもっとひどかったんですよ。翌朝見てみたら「なに書いてんだ、俺」みたいな感じで。タイアップでもないのに何度も書き直しましたよ(笑)。

 

—結果的に収録曲3曲ともA面のような、強度の高い楽曲が並びましたね。

田邊:まさにそういったものを作りたかったし、back numberの依与吏さんから「カップリングも絶対に手を抜くな。世が世ならシングルになる曲がカップリングだ」とインディーズの頃から教わっているので。それを他のところで話すとめっちゃ恥ずかしがるんですけどね(笑)。

 

—では、しっかり書いておきますね(笑)。今日お話を聞かせていただいて、今本当に音楽を楽しんでいるんだなというのが伝わってきました。そのマインドがしっかり楽曲に反映されていて。

田邊:楽しくなったからこそ、より面倒臭い人間になりそうなんですよね。人に対して「好かれよう」と思わなくなったので、より言いたいことが言えるようになってきているかもしれないです。音楽に対してもそうだし、もう31ですから、人に迎合し過ぎてもどうかなと多くのロックの先輩方が教えてくれているので。そう思った時に色々曲が出てくるんです。結局、自分本位だけど誰かに受け入れられるものがロックなのかな。「ロック」という言葉に凄く恩恵を受けている気がするんですけど、改めてロックバンドで良かったなと思います。

 

—気持ち的に身軽になって、年齢の話もありましたが30代としてこれからどんなロックバンドになっていくんでしょうか。

田邊:今のスタンスでいけば凄く良いものができそうな気がしますね。今は楽しいけど、僕の中で納得はしていないので。今年は『VECTOR』というアルバムがリリースできて凄く良かったんだけど、それに納得する人生を送りたくないというのは30代だからこそ思います。上の世代を見たら40代の先輩みんな凄いから。全く衰えないですからね。なんとかしてほしいんですけど(笑)、その人たちがいなくなってもその人たちが作った音楽は残り続けるから、俺らも頑張らないといけないなと思います。

◎BLUE ENCOUNT http://blueencount.jp/

リリース情報

Single『FREEDOM』発売中

初回生産限定盤(CD+DVD)1759円+税/通常盤(CD)1204円+税

ライヴ情報

「BLUE ENCOUNT HALL TOUR 2019」

日程 2019年6月9日(日)
会場 熊本市民会館シアーズホーム夢ホール
開場 17:00/開演 18:00
料金 前売 5300円
問い合わせ:キョードー西日本 0570-09-2424

LIVER’S CREW(モバイルサイト)先行 ※抽選方式
※こちらの先行で購入者のみオリジナルラバーバンド付き(同行者様も)
※受付期間:12月7日(金)22:00~12月13日(木)23:59
※枚数制限:お1人様につき1申込のみ、最大2枚まで(複数公演申込可)
※3歳以上チケット必要。3歳未満は保護者1名様につきお子様1名のみ膝上で鑑賞可能

BLUE ENCOUNT http://blueencount.jp
LIVER’S CREW(要登録/一部コンテンツ有料) https://lc.blueencount.jp/

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