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【福岡ラーメン物語 のぼせもん。|四十七杯目 イナヅマラーメン】

「地元の人や働く人たちに愛されて毎日でも食べられる一杯でありたい。」

長浜ラーメンと博多ラーメンは違う。市場で働く人の日常食として生まれた長浜ラーメンは、決して気取ることなく人々の生活の一部になっている。長浜ラーメンとしてのプライド。それは地元の人に愛され、毎日のように食べて貰えるラーメンであること。そんな一杯がまた福岡に生まれた。

イナヅマラーメン
店主 綾戸大樹 (TAIKI AYATO)

1977年、福岡県福岡市生まれ。バンドマンからラーメンの世界へ。『長浜ナンバーワン 長浜店』での修業を経て、2020年7月に独立して那珂川市で『イナヅマラーメン』を開業。

博多ラーメンと長浜ラーメンの違いを語ることは難しい。元来別のラーメンであったはずが、今ではその区別が出来なくなりつつある。しかしある店は博多ラーメンを名乗り、ある店は長浜ラーメンと看板に掲げる。その違いはラーメンの姿形や味というよりも、作り手の生き様やラーメンへの想いに依るところが大きいのかもしれない。


福岡市に隣接した那珂川市を貫く国道385号線沿いに、2020年オープンしたばかりの『イナヅマラーメン』は、博多ラーメンではなく長浜ラーメンの店だ。店主の綾戸大樹さんは若かりし頃にバンドのドラマーとして音楽の夢を追いかけていたが、30歳になってこれからの人生を考えた時に、何かしら「手に職」をつけようと決めた。
「当時酒屋さんでアルバイトをしていたのですが、その時にあるラーメン屋さんと知り合ったんです。『ラーメンはいいぞ』と言われて、私自身もラーメンは身近な食べ物で大好きだったので、しっかりとそのラーメン店で修業をして、いずれは自分の店を持とうと決めました」

しかしその店はちょうど弟子がいっぱいで働くことが出来ず、自分が好きだったラーメン店が従業員を募集していることを知り、ラーメンの世界へと足を踏み入れた。それが長浜で人気の『長浜ナンバーワン長浜店』だった。
「修業先は仕事に厳しい店でした。お客様に出す替え玉を茹でるのですら一年半はさせて貰えません。それまでは賄いなどでひたすら練習。悔しかったし辛かったですが、初めて替え玉を茹でて良いと言われた時は嬉しかったですね。あの日のことは一生忘れません」
長浜は老舗や屋台をはじめ、数多くのラーメン店がひしめき合う激戦区。そこで人気を保ち続けているナンバーワンで、綾戸さんは多くのことを学んだ。


「長浜の中でも材料をたくさん使って濃厚なラーメンを出しているお店でしたが、その分コストもかかって利益が減ることになります。それでもそうしていたのは、美味しいものを出したいという強い信念があったからで、私もそのスタンスに惚れて修業をしていました」
そして数年の修業を経て、ついに念願の独立を果たす。スープの材料や麺などは修業先と同じだが、味のバランスなどはオリジナル。那珂川の人たちに食べてもらうことをイメージした。

「地元の人や働く人たちに愛され、毎日でも食べられるラーメンこそ『長浜ラーメン』だと思っています。まだ一店舗しかないのに『那珂川総本店』と看板に書いたのも、この場所に愛される店になりたいという思いを地元の方たちに伝えたかったんです」
博多ラーメンと長浜ラーメンの違いを語ることは難しい。しかし、綾戸さんの生き様や想いが詰まったこのラーメンは、間違いなく『長浜ラーメン』そのものなのだ。

 


「ラーメン」(600円)/豚の頭と大腿骨を炊き上げたスープはクリーミーな口当たりと優しい味わい。ザクッとした食感が心地よい低加水の細ストレート麺は硬めに茹でると美味しい。しっとり柔らかなチャーシューも乗った、シンプルながらも奥深い長浜ラーメン。


「餃子(8個)」(380円)/野菜がたっぷりと入った手包みの餃子も修業先譲りの完成度。みずみずしくサッパリとした味わいが濃厚なラーメンと合う

「野菜いため盛りラーメン」(850円)/たっぷりの野菜とスープを一緒に炒めたラーメンは、ちゃんぽんがヒントになった修業先にはないオリジナル。スープも濃厚でボリューム満点


清潔感に溢れた細長い作りの店内はカウンターの他にテーブル席も完備。街道を走るドライバーから地元の家族連れまで、老若男女幅広い客層に対応している。


豚の頭と大腿骨で取る濃厚なスープは、熟成したものとフレッシュなものをブレンドして深みを出している。看板やTシャツなどに描かれている、ラーメン店らしからぬスタイリッシュな稲妻マークなどのデザインは綾戸さんの奥様が担当

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『イナヅマラーメン』

住所 那珂川市片縄東1-12-2
☎ 092-408-3645
営業時間 11:00~15:30/17:00~23:00
定休日 不定
席数 18席
P 10台
カード/不可

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【取材を終えて】

「長浜ラーメン」の矜恃に満ちた一杯

かつては豚骨しかなかった福岡のラーメンシーンですが、ここ数年で一気に多様化し、今ではあらゆるラーメンが食べられるようになりました。それ自体は喜ばしいことですが、同時に戦後からの長い歴史を持つ「長浜ラーメン」や「博多ラーメン」の系譜が途絶えかねない危険性もはらんでいます。そんな中で老舗のスタイルをしっかりと守り、堂々と「長浜ラーメン」の看板を掲げた「イナヅマラーメン」の登場は、一ラーメンファンとしても実に嬉しいこと。どうかこれからもずっと地元の人に愛される、息の長い店になりますように。そして「長浜ラーメン」の歴史を未来に繋いでいくような店になって欲しいと心より願っています。

ラーメン評論家 山路力也 (Rikiya Yamaji)

テレビ・雑誌・ウェブなど様々な媒体で情報発信するかたわら、ラーメン店のプロデュースなど、その活動は多岐にわたる。「福岡ラーメン通信」(fukuoka-ramen.themedia.jp)でも情報発信中

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