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【福岡ラーメン物語 のぼせもん。|四十二杯目 麺屋 波のおと】

「毎日でも食べたくなるような、 塩ラーメンで一番を目指したい。」

美味しいラーメンは美しい。スープの色、油の輝き、麺の表情、具の配置。無限の組み合わせの中から、自分にしか表現出来ない一杯を探し出す。ラーメンは丼というキャンバスに描かれた作品だと言ってもいい。そして、その美しさがラーメンの美味しさをさらに引き上げてくれるのだ。だから、美しいラーメンは美味しい。

『波のおと』
店主 難波英雄 (HIDEO NAMBA)
 1976年、福岡県福岡市生まれ。高校時代、近所のラーメン店でアルバイトを3年間経験。社会人を経たのち、アルバイト先のラーメン店に就職し、21年のキャリアを積んで、2020年独立。

新しいラーメン店が出来た時、味も接客も未完成であることがほとんどだ。ラーメン店などで経験を積んで独立したとしても、やはり初めてのことばかりなのだから、未完成であるのは至極当然のことだ。しかし、この2020年にオープンしたばかりであるにもかかわらず、圧倒的な完成度で私たちの前に現れた店が『麺屋 波のおと』だ。清潔感にあふれ居心地が良く明るい店内。物腰の柔らかな接客。流れるような所作の調理。そして艶やかで美しく、美味しいラーメン。まるでこの場所でこうして何年も営まれていたかのように、次々と地元の客がやってくる。しかしここはオープンしたばかりの新店なのだ。

「前職では全国各地で仕事をしてきましたが、生まれも育ちも福岡なので、自分の第二の人生はやはり故郷の福岡でと思っていました。」念願の独立を果たし、晴れて一国一城の主となった、店主の難波英雄さんは、1976年生まれの44歳。20代で独立開業する人も多いラーメン業界の中では、やや遅咲きとも言えるデビューだろう。

難波さんは高校生の時に家の近くにあった豚骨ラーメン店で3年間アルバイトをし、高校卒業後に福岡を離れてサラリーマンとなったが、阪神淡路大震災で仕事がなくなり福岡へ戻り、再び以前のアルバイト先だったラーメン店へ戻り、その後社員となった。難波さんが就職した時には、福岡市内に数店舗しかなかった小さなラーメン店は、その後日本全国に出店を重ね、さらには海外にも店舗展開をするまでに大きくなっていった。その激動のど真ん中にいたのが難波さんだった。

「アルバイト時代も含めれば26年お世話になりました。飲食の面白さを知り、ラーメン作りはもちろん、人生観も含めて全てを教わった場所です。1店舗の時代から店舗が増え海外にも進出して、上場を果たすところまで働くことが出来たことで、何となく僕の役目は終わったのかなと。次の人生に進んでみようかなと思えたんです」

四半世紀の豚骨ラーメン人生。だからこそ第二の人生は豚骨以外のラーメンと決めていた。自分が作らなくても、福岡には美味しい豚骨ラーメンがたくさんある。しかし、自分が美味しいと思える塩ラーメンは思い浮かばなかった。ならば、福岡で一番の塩ラーメンを作ろう。地元の人に愛される店を作ろうと決めた。

難波さんが作るラーメンは、インパクト重視の昨今の流行に迎合するような軽薄さがない。どっしりと肝が据わった風格や気品が感じられる。だから、いつ食べても美味しい。

「蘊蓄も能書きも言わずシンプルに美味しいと思ってもらえるようなラーメン。毎日でも食べられる美味しさを目指しているんです。地元の人に愛されている、安くて美味い店というのが僕のラーメン店の理想形。そういう店の方が福岡らしい気がするんです」

「塩らーめん」(700円)/鶏ガラと豚骨を濁らせないように丁寧に取ったスープと、魚節や煮干しなどの魚介系素材の出汁を別々に取ってブレンド。4種類の塩を使った塩ダレが、塩の持つ旨味や甘味、そして苦味と塩味を立体的にスープの中へ現出させる。塩ダレには14種類の食材と4種の塩を、スープには鶏ガラ、豚ゲンコツ、鯖節、鰹節、香味野菜などをふんだんに使う。麺は歯応えと喉越しを併せ持つオリジナル麺。ラーメンを知り尽くしている難波さんならではのハイスペックな設計の一杯が生まれる。

「肉味噌ご飯」(200円)/ついつい後を引く味わいのサイドメニューは、もちろん塩ラーメンにも醤油ラーメンにもピッタリ合う。

「醤油ワンタン」(800円)/塩ラーメンに負けず劣らずの完成度の醤油味は、古き良き中華そばのニュアンスと最先端の醤油ラーメンのエッセンスが融合した、老若男女に愛される味わい。

 

『波のおと』
福岡市博多区上牟田3-11-7
092-402-0566
11:00~21:00 ※スープがなくなり次第終了
休 日曜
席 26席
P あり

【取材を終えて】

業界屈指のベテラン職人がついに動き出す

難波さんとの付き合いは彼の前職時代からなので、随分長いこととなります。会社が加速度的に大きくなっていき、職人よりもサラリーマンが求められるような中、凛とした姿で厨房に立ち、職人を貫き続けていた難波さんが作るラーメンは、サラリーマンが作るラーメンよりも遥かに美味しかった。そして彼が店長として立つ店は、他の店舗よりも活気と笑顔にあふれていました。同僚からの信頼も厚かった難波さん。「波のおと」のオープン初日には、たくさんの仲間たちが集まってきました。これからも身体にだけは気をつけて、職人道を極めてくださいね。

ラーメン評論家 山路力也 (Rikiya Yamaji)

テレビ・雑誌・ウェブなど様々な媒体で情報発信するかたわら、ラーメン店のプロデュースなど、その活動は多岐にわたる。「福岡ラーメン通信」(fukuoka-ramen.themedia.jp)でも情報発信中

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