トップに
戻る

【福岡ラーメン物語 のぼせもん。】 博多区博多駅前『麺屋たいそん』

「自分の作る豚骨ラーメンで、多くの人を笑顔にしたいです。」

夢もなくフラフラと遊んでいた若者が一杯のラーメンと出会った。「格好いい大人になりたい」その一心でラーメンを作り続けてきた。そして自分のラーメンで多くの人を笑顔にしたいという夢が出来た。博多で愛されて、いつかは海外で愛される味へ。27歳の青年の夢はまだ始まったばかりだ。

『麺屋たいそん』
店主:松尾 亮太(RYOTA MATSUO)
1993年、福岡県福岡市生まれ。高校時代に好きだった「博多新風」にアルバイトで入りラーメンの世界へ。新風の支店や別店舗の立ち上げなどを経験後、2019年に独立。

豚骨ラーメンが日常にあるからこそ、福岡で新しく豚骨ラーメン店を出すのは難しい。福岡の人ならば、誰もが自分が好きな豚骨ラーメン店がある。子供の頃から通い続けている店がある。その中で同じ豚骨ラーメンという土俵で勝負するためには、相当の覚悟が必要だ。2019年、博多駅前にオープンした『麺屋たいそん』は豚骨ラーメンの専門店。「脱豚骨」がトレンドになりつつある博多で、敢えて王道の豚骨ラーメンで勝負を挑むのは、27歳の若き店主、松尾亮太さんだ。

「豚骨ラーメンで生まれ育っていますから、豚骨以外は興味がありませんでした。というよりも、豚骨ラーメン以外知らないんです」

松尾さんは高校生の時、自分が好きなラーメン店でアルバイトを始めた。それが『博多新風』だった。これといった夢はないままに高校を卒業し、工場に就職したものの友達との遊びの方が楽しく仕事にも身が入らなかった。そんな時にかかってきた一本の電話が運命を変えた。電話の相手は『博多新風』店主の高田直樹さんだった。

松尾さんの近況を聞いた高田さんは「遊んでいるならウチで本気でやってみないか」と声をかけた。松尾さんは再び社員として『博多新風』で働くこととなった。しかし、新風でも仕事に本気になることが出来ず、高田さんに叱られた。

「『今のままでは格好いい大人になれないぞ』と言われたんです。格好いい大人になりたいと思って、そこから気持ちを入れ替えて、自分なりにがむしゃらに働きました」

真剣に仕事に向き合うようになった松尾さんをみて、高田さんは大阪の支店立ち上げや地方の催事などの仕事を任せた。そこで多くの経験を積む中で、自分の店を持ちたいという夢が生まれた松尾さん。その後、新風を離れて立ち上げを手伝ったラーメン店で、ニューヨークのラーメンコンテストに出場し優勝。アメリカの人たちに自分が作った豚骨ラーメンを美味しいと言われたことが自信となった。

そして25歳で独立開業。屋号の『たいそん』は自分のニックネームからつけた。もちろん作るのは豚骨ラーメン。場所も出すなら地元の博多と決めていた。

「地元ということもありますが、やはり豚骨でやる以上は福岡、博多で勝負しなければ意味がありません。県外でお店をやるのは逃げなのではないかと思ったんです」

濃厚でこってりとしていながらも、豚骨特有の臭みがなく旨味をしっかりと抽出したスープに、自分が大好きな『博多新風』の麺を合わせたい。師匠の高田さんも麺を使うことを快諾。松尾さんが理想とする豚骨ラーメンが出来上がった。

「ラーメン屋さんはとても楽しいです。お客さんが目の前で笑顔になってくれる仕事ですから。まだオープンして一年ですが、これから地元に長く愛され続けるお店にしていきたいと思っています」

「濃厚豚骨ラーメン」(700円)/頭骨、ゲンコツ、背ガラをじっくりと炊き上げたスープは、深い旨味をたくわえて後を引く味わいに。パツンと歯切れの良い細ストレート麺は修業先『博多新風』製。店主が考える豚骨ラーメンの理想の形がここにある。

一つ一つの仕事を手を抜かず丁寧に。スープは豚骨の3種の部位を使い、こってりな「濃厚」とあっさりの「屋台」の2種類を提供。チャーシューに豚トロを使うのも、脇役であったチャーシューも主役として食べて欲しいという思いから。

「たいそんの焼飯」(550円)/待望の焼飯がついに登場。夜の部限定のメニューながら、早くもファンがつく人気メニューに。

「豚トロ入り屋台豚骨ラーメン」(850円)/自慢の豚トロチャーシューがたっぷり乗ったメニュー。サラッとしつつ旨味が十分の屋台スープは、濃厚スープとは違った魅力が。

『麺屋たいそん』
住所 福岡市博多区博多駅前3丁目12-3 玉井親和ビル 1-B
TEL 092-710-5887
時間 11:00~15:00/17:30~24:00
休み 日曜
席 23席
P なし
カード 不可

—–

〇取材を終えて

『非豚骨の潮流に逆らう正統派博多ラーメン』

ここ数年、福岡で話題になる新店といえば「非豚骨」「脱豚骨」と呼ばれるラーメンばかりで、白濁した豚骨スープに低加水細ストレート麺を合わせた、いわゆる「博多ラーメン」の新店が少なかった印象がありましたが、久々に正統派の博多ラーメン店が登場したなと嬉しく思っています。修業先である『博多新風』の高田さんにもお話を伺いましたが「若い頃はやんちゃしていたけれど、今は素直で真面目にやっているので嬉しいです」と目を細めます。博多ラーメンに新たな風を吹かせた師匠に負けないように頑張ってくださいね。

ラーメン評論家 山路力也 (Rikiya Yamaji)

テレビ・雑誌・ウェブなど様々な媒体で情報発信するかたわら、ラーメン店のプロデュースなど、その活動は多岐にわたる。「福岡ラーメン通信」(fukuoka-ramen.themedia.jp)でも情報発信中

法人様・自治体様向け情報サイトはこちら