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〈インタビュー〉『3月のライオン』大友監督&ぼくのりりっくのぼうよみ

映画『3月のライオン』の大友啓史監督と、前編の主題歌を書き下ろした〈ぼくのりりっくのぼうよみ〉。キャンペーンで来福時に2人一緒に話を聞く機会に恵まれたものの《シティ情報Fukuoka(4/20発売5月号)》の誌面はスペースに限りがあり、かなり割愛せねばならなかったので、その愛にあふれる全文をwebでご紹介!

—ぼくりりさんに主題歌をオファーしたきっかけは?
大友:Youtubeで見てて好きだったんですよ。意外と曲も全部聞いていて、MVも良かったし。主題歌どうする?とプロデューサーと話した時に、ぼくりりさんで!と意見が一致しました。

—初の映画主題歌の依頼、どう思いました?
ぼくりり:映画の主題歌で、僕の作品ではないぞ、と。監督さん、俳優さん、スタッフの皆さんで作り上げた最後の4分間で、映画全体の評価に繋がることなので、「失敗しても自分の責任だけで終わる」とかじゃない、いつもと違う緊張感がありました。

—何かオーダーしました?
大友:アーティストなので下手に言わない方がいい、映画を観てそこから感じたものをアウトプットして欲しいと思いました。桐山零という17歳の子が見た、ある種特殊な世界を描いた作品だから、彼と同世代の空気感とか呼吸を作品の中に欲しい、今を生きている10代の感覚がこの映画に必要だな、と思っていたので、その中でも独特の、僕らではつかめない何かをこのアーティストはつかんでいて、零くんが見ているものと共通点があるぞと。あのリバーサイドで暮しながら感じているものを、細いラインを探り当ててくれると思っていたの。マジで。俺、言いたがりだけど、余計なことは言わないようにしました。主題歌文化は日本独特で、劇場を出ていく時にお客さんはその曲で印象が決まることもあるので、僕がこだわったのはそこです。自由にやってもらっても、僕らではつかめないものをつかんでくれている、という確信がありました。

—いわば全幅の信頼をもってオファーされたわけですね。
ぼくりり:ええ。唐突に(笑)。あら〜みたいな。


—ぼくりりさんだからわかる主人公の心情はあります?
ぼくりり:年齢は不可逆なので、有利は有利というか、ない側からしたらうらやましいことかもしれないけれど、反対にある側からしたら、若いは若いで大変で、年齢があれだからいいでしょ?何歳だからすごいね!とかそういう言葉はつきまといますよね。僕はあまり意識はしていないんですが、彼としてはもどかしさとかもあるんじゃないかなと思います。スタンスとして桐山零くんと僕は違う部分があって、生い立ち的に彼は将棋をするしかなかった。他は真っ暗闇で将棋という道が1本しかなくて、その細い命綱をたどって生きて来た人だと思うんです。僕はバスケ部に入ってたんですけど、1日でやめて、ヒマだからなんか音楽を作ろうって音楽始めたので、温度感がめっちゃ違う。数ある道の中から適当に選んだら、なぜかこんなことになってる。気付いたら映画の主題歌をやっていた!という感じなんです。

—とは言え、映画の主題歌をお願いされるってすごいことだと思うんです。
ぼくりり:オファーしてくださる側もすごいですよ。
大友:いやいや〜(笑)。なんて、互いにヨイショしてもね〜(笑)

—映画館を出る時の印象を決めてしまうという大切な4分間をご自身で体験された感想は?
ぼくりり:めっちゃいいな〜(笑)! 歌詞と曲は僕が作っているんですが、アレンジはササノマリイさんという方の力をがっつり借りていて、映画のエンドロールだから僕だけの作品ではないし、僕の曲も僕とササノさんとで作って、映画をみんなで作るってすごいことなんだと思いました。


大友:
32歳でアメリカの大学で映画づくり学んで、USCの「ウエルカム・トウ・シネマ」っていう映画を勉強する学生はみんな最初に受けなきゃいけない授業があって、そこで最初に見せられる映像が『ターミネーター』のエンドクレジットなの。映画はこんな人数が関わる芸術ってことだよ、ここにクレジットされることを目指して勉強する人がたくさんいるんだよって言われる。クレジットが流れる最後って、僕は余計な情報を出さずにこうやって映画はできあがったんだよってお客さんに噛み締めてほしい時間なんですよ。観ている人はバックグラウンドなんてわからないし、こちらも主張すべきじゃないけれど、そこにとんでもない人数関わっているんだよ、いろんな人の努力、知恵と工夫があるわけで、そこに署名をしていくのは貴いものだと思う。そこをどんな気分で観てもらうかというのはすごく大事なんですよ。そういう点で、今回はいい4分間になっています。エンドロールで立たない人が多い映画になっています。そこで浸っていたい映画に音楽がしてくれていて、恵まれていると思います。ホント,詩がいいよね〜!

—映画版とリリース版と書き分けてるとか?
ぼくりり:作り始めてみたら、わりと攻撃的なものになったので、これエンドロールか?と思って。絵で例えると油絵のような感じ。絵の具の質感とか毒々しいくらい感じられるものになったんですが、エンドロールなら別のタッチがいいのかな、となり、水彩画みたいな淡いタッチに変えてみました。中身とか伝えたいテーマは変えずに。手法が変わって、絵の具とペンが変わったんです。

大友:あの歌詞ね、後編まで観て歌詞を見直してほしいね。盤上に広がる森羅万象を描こうとしているんですよ、本当に。盤上に森羅万象が起きることを描くための4時間半だから。

ぼくりり:4時間半!!


大友:
最後の後藤との戦いが終わったあとに、俯瞰で盤を見せることで、映画全体を知ることができるカットを1つ用意しているんですよ。この歌詞で言っていることがそのカットを見ると立ち上がってくるんです。後編は藤原さくらさんの主題歌が、観ている僕らの感情を包んでくれるんだけれど、この映画の中で何があったかをフォローしてくれるのは、この前編主題歌の「Be Noble」だと思うんですよね。「Be Noble」って、ずいぶん強い言葉が来たなと思ったんですが、今映画をちょっと引いて観ると、棋士たちが侍に見えるんですよ。着物を来て盤上で刀を持たずに斬り合う姿が見えてきて、見えない血が流れていく感じ。その姿は気高く美しく、覚悟がある。だからその「Be Noble」が生きてくる。彼にはその辺の直感力があるから凄い。「nobles oblige」という、「高貴なるものには義務がある」という言葉があるんですが、それは僕が意識しているところなので、貴族たちはいざという時、武器を持ち本気で戦う。まさにBe Nobleなんですよね。それを連想させるものが10代の彼から出てきているというのが面白いですね。この映画のコアなテーマを10代が拾ってきたってのが面白い。真面目な話、あまり2人で語る機会がなかったので、マジマジと語っちゃうけど(笑)。

ぼくりり:うれしいです!

大友:そういう刀を彼は持っているんだと思う。見えない刀を。この映画って将棋のプロの少年の成長物語なんだけれど、侍同士の斬り合いのような鋭さもあれば、それを通して成長していく話なんだけれど、人が成長していく要素って、それだけじゃないよね。毎日食べているご飯が成長させていく、季節の移り変わり、人がどういう風に向き合ってくれるのか、彼が棋士として成長していく豊かな物語を描いたつもり。時間の流れも含めて豊かに描きたいと思っていた。会話のテンポも、劇場で楽しんで欲しい。イケメンの俳優が着物を着ているという要素もあるし。豊かさを感じてほしいな。

ぼくりり:観終わったタイミングで思い浮かぶ景色が人それぞれ違うんじゃないかな、と思ったので、いろんな感情を思い浮かべられるような曲を作りました。同じ曲で思い浮かぶ景色は違うように作ったので、振り返りながらいろんな感情を想起してもらえたらなと思います。

『3月のライオン』後編は4月22日(土)より全国ロードショー!

© 2017映画「3月のライオン」製作委員会

映画『3月のライオン』HP ⇨http://www.3lion-movie.com/index.php

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