【インタビュー】雨のパレード
「自分たちにしかできない独特の表現方法をもっと探っていきたい」

取材・文/福島大祐(編集部)
写真/占部千尋

(左から)是永亮祐(Ba)、山崎康介(Gt&Syn)、福永浩平(Vo)、大澤実音穂(Dr)

ポストダブステップ、ポップス、R&B、エレクトロハウスなど、様々なジャンルの音楽性を内包している雨のパレード。バンドをフォーマットにして細部まで作りこんだクリエイションに注目が集まる彼らに、最新シングル『Shoes』の話を交えながら、その創造の源泉となるものはなんなのか、そしてどのようなビジョンを描いているのかを尋ねた。

—皆さんは鹿児島出身ですが、是永さんだけ大分出身ですよね?
是永:はい、そうです。
大澤:福岡は都会ですね、鹿児島から見ると。今なら新幹線で1時間半ぐらいで来れると思いますけど。
福永:亮ちゃんは福岡に住んでいたんですよ。
是永:箱崎辺りですね。

—それは知りませんでした! 次回は箱崎ロケで取材させていただきたいですね。さて、遡って最新シングルの話から伺えたらと思います。4曲それぞれサンプラーやシンセなどデジタルな感触もあるんですが、同時に温かみやノスタルジーなども感じられました。サウンド面ではどのようなことを意識されたんですか?
福永:リード曲の『Shoes』以外は前のアルバムの段階で完成していた3曲です。『Shoes』に関しては自分たちの中にあったノスタルジックな要素をより強く出してみようと思って制作に当たっていく中で、シンセの音だったり、レコーディングのドラムやベースの音は凄くこだわって作り込んだ音色になっています。

—どのように音を作りこんだのでしょう?
福永:狙いとして「CDを買っていた世代を振り向かせたいな」というのがありました。宇多田ヒカルさんだったり、CDが売れていた頃の方々が音源をリリースすると今でも相当な枚数が動きますよね。それに対してバンド界隈というのは凄く低いセールス枚数なので、そこの人たちを自分たちの方向に持っていきたいという思いがあって、今回はノスタルジックな音を強めに作ってみたり、上の世代にも響くような歌詞のアプローチだったりとか、ミュージックビデオに関してもちょっと引っかかりがあるようなものに作ったつもりです。

—たしかに’80〜’90年代のようなサウンドだと思うんですけど、その時代の音楽をどのように捉えていますか?
福永:実際に僕らがその辺りの音楽をリアルタイムで通ってきたわけではないので、なんとなく思う懐かしいイメージを表現しました。その中で、シンセは露骨に年代が出るんですよ。機材が好きなので、自分たちの中では「あ〜、この年代のシンセはこの音色だよね」とか、「ドラムの聴き心地とかもこんなだよね」って、共通認識としてはスムーズにいった感じです。

—『Shoes』はドラマ主題歌のタイアップもありましたが、意識された点はありますか?
福永:紙資料でこんなドラマを作りますというのを最初にいただいたり、プロデューサーの方とお話しさせていただいたりして、それで書き下ろしという形で制作に当たったので、もちろんドラマの印象とかイメージは反映されていると思います。最初にいただいたテーマは「希望」とか「街」だったので、それも意識して制作に当たったんですけど、作品を見させていただいて青春や少年心みたいなものも凄く感じたので、今回はそういう歌詞になっています。

—正直、これまでの雨のパレードはあまり「青春」と結びつかないというか、そういったものも表現の一つとして持っているバンドということが意外に思えました。
福永:常に新しい表情は見せていきたいなとは思っているので、それを新鮮に捉えてもらえたら嬉しいですね。

—ひと言で青春と言っても色々あると思うんですけど、音楽で表現するときにどんな青春を思い浮かべますか?
山崎:音楽的な内容での青春ということですよね。ひと言で言えば「潔い」。特にバンドとかになると最初のうちってがむしゃらじゃないですか。変に小手先じゃないというか、その頃のクオリティってその時にしか出せないと思うんですけど、良い意味でローファイな感じですよね。

—なるほど。是永さんと大澤さんはいかがですか? 是永さんはなにか考えているようなお顔をされていましたが。
大澤:アハハハ(笑)。
是永:なんですかね。中2で楽器を始めたんですけど、シンプルに“楽しい”というあの頃の気持ちとか、初期衝動ですね。さっき、「初期微動」というのを…。
一同:

—その言葉を考えていたんですね。
大澤:地震の最初のちょっと揺れるやつね(笑)。私は青春は今ではない気がして、結構昔のイメージで。だから『Shoes』もそうですがノスタルジックな音をイメージしますね。変に難しいことはせず、真っすぐな音という印象です。

—ミュージシャンとしてアーティスティックな方向を突き詰めると難解な音楽になったり、アンビエントな音楽性に向かいそうですが、雨のパレードはポップさもあって、アートとポップのバランスが凄くいいなと思います。そのバランスは音楽を作る上で考慮しますか?
福永:メジャーという言い方はちょっと違うのかもしれないですけど、あくまでも歌物が好きだし、歌物の上で新しいアプローチや自分たちの好きな楽曲などを落とし込んでいくというスタイルはやっていますね。その中でより振り幅を見せたい。ポップに振り切ったものもやってみたいし、自分たちがもの凄く好きなこともやってみたりして。

—そこは意識せずとも自然にできる?
福永:そうですね、その気持ちはある上で、前回のアルバムが『Change your pops』というタイトルだったんですけど、「自分たちでみんなのポップスに対してのイメージを変えたい」みたいな気持ちの作品になっていると思います。あくまでポップスというカテゴリーの中で自分たちが見せられる新しい表現を模索してたかなという感じですね。

—芸術性の高い雨のパレードの世界を表現する上で、明確な美意識や美的感覚みたいなものがあるんじゃないかと思うんです。完璧主義な部分もきっと持たれているのではないかと。
福永:それは凄く強いと思います。違和感があるものには音色も音使いもアプローチも全部良くなるまで詰めますね(笑)。全部の楽曲、気になるところ全部詰めますから。メンバーが出したフレーズに対して、なんかしっくりこないなという時は絶対理由があるので、「それがなんなのか気付ける」というのがみんな養えてきているかなぁと思います。「これをこうしたらしっくりくる」みたいな。細か〜いところなんですけどね。

—その感覚がどんどん共有されていっているんですね。自分の感性に刺激を受けるものって、皆さん音楽以外にもありますか?
福永:あります(笑)! 僕は映画も大好きですし、それこそ『Shoes』に関しては青春映画とかを詰め込んだ形になっていたりします。漫画も大好きですし。読書も時々したり、写真もファッションも大好きです。ありとあらゆるものが大好きなんですけど、中でも僕は美しい景色を見ることが一番感性を磨けることだと思ってます。

—絶景とか…、日常の中でも?
福永:そうですね、一緒に見る人とかも関わってくると思いますけど。鹿児島にいた頃、先輩とかと夜の海に行って泳いだりしていて。吹上浜というところがあるんですけど、めちゃくちゃ星が綺麗に見えるところで、ず〜っと小高い丘があって、砂浜が広がってザ・水平線!みたいなところで。その景色は凄く糧になってますね。

—順々に他の皆さんも教えてください。

大澤:私も映画も観ますし、写真も好きなので写真集を買ったりとか。音楽になってしまうんですけど、最近だと観に行ったフジロックにも刺激を受けましたね。景色もそうですし、私もなにか感じる場所に行くことが一番かな。

—山崎さんはいかがですか?
山崎:感性に関しては気の利いたこと言えないんですけど。
一同:
山崎:モノが好きなので。マテリアル…プロダクトというか。感性というよりは、どっちかというと感性の尖った人がなにかを求めてきた時に、すぐ自分のカードを切れるようにしているというのが大きいですかね。僕の普段の生活で言うと。

—モノというのは、具体的にはありますか?
山崎:一番好きなのは音楽に関わる機材全てです。他にメカメカしいものだったり、でかい規模になれば、それこそ工業地帯とか、ああいうのを真夜中に高速走ってライトアップされているのを見たりして。楽器にしても、そこには必ず人の意志が介在しているわけですから、音を自分の中に蓄えているような感じですかね。抽象的なイメージで「こういう音が欲しい」と言われた時にすぐ出せるようにしたいなと思ってます。

—最後に、是永さん。
是永:趣味がお散歩なんですけど、「あ、この通り、好き」とか、「あ、綺麗な建物」って歩きながら思っています。写真は下手なのでそんなに撮らなくて、味わうみたいな。たまに小説とかも読みます。

—先ほどセールスのお話しをされていましたが、CDが売れない時代でもライヴの動員は数字で見ると全体的に増えていますよね。雨のパレードはもちろん音源も大切にされていると思うんですけど、音楽をフォーマットにした多角的な表現を特に大事にされているのかなと思って。ライヴハウスで色んな表現をやる、そういった可能性を持っているというのはとても現代的なバンドだと思います。
福永:規模感が大きくなったら自分たちにしかできないような独特の表現方法をもっと探っていきたいなと思っています。

—具体的な展望はありますか?
福永:コンセプチュアルなイベントはやりたいと思っていて。『漂白する都市』というイベントを以前やったんですけど、その時は、都市に選択肢がありすぎて人々自体の個性がなくなっていくという設定で。ラウンジに白い布で装飾をしたりして、ライヴが終わって戻ってくる時にそれが綺麗な色に染まっているという、みんなで染まって帰るというイベントにしたんですけど。そういった表現を突き詰めてやっていけたら、また僕らの立ち位置も面白くなるのかなと思っていますね。楽しみにしていてください。

 


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雨のパレード http://amenoparade.com/