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【インタビュー】小曽根真「自分が楽しまないと、お客様には伝わらない。だからいつまでも挑戦を続けていくんです」

取材・文・撮影/本田珠里(編集部)

ジャズピアニストとして、ジャンルを超えたメディアや舞台に立ち「ジャズ」という言葉を手の届く音楽として伝え続けている小曽根真さん。ソロピアノ、ビックバンド、海外著名ミュージシャンとの共演と毎回違う“小曽根ワールド”を楽しめるスタイルで国を超え全世界を飛び回っている。次回の福岡公演はジャズとクラシックを同時に楽しめる『小曽根真ピアノソロ“クラシック×ジャズ”2018』。これまで取り上げなかったバッハの演目にチャレンジするという。

近年の演奏では、年間4分の1を占めているというクラシックについて「父親がジャズ音楽家で、家にあったハモンドオルガンを弾いてたんですが、5歳の頃にピアノを習ってクラシックが大嫌いになったんです(笑)。その後、12歳の頃にオスカー・ピーターソン(ジャズピアニスト)のコンサートを見て、“ピアノでジャズを弾いてもいいんだ!”と、ピアニストになる決心をするんですが、デビューしてからもクラシックを弾くことになるなんて自分の人生設計の中で微塵もなかった(笑)」。

 

ところが2003年に運命が変わる。「札幌交響楽団の定期演奏会からお声がかかって、そのコンダクターを務める尾高忠明さんが「いつか小曽根真と『ラプソディーインブルー』をやりたい」と言っていたとファンの方から聞いた事があったんですよ。これもご縁と思って、もちろん演目はラプソディーインブルーだと思い込んで引き受けた後に「モーツァルトです」と言われて「俺、弾けないよ〜!」って(笑)。その足でCDショップへ行って全集を買って、10日間かけて聴きました(笑)。その演奏会を尾高先生が色々なところで面白かった、良かったとおっしゃってくれたおかげでオーケストラからオファーがきはじめたんです。しかもガーシュウィンではなく、モーツァルトで(笑)!光栄ですが怖い状況が続いています(笑)」と、笑いを交えながら語る。

 

「ジャズは即興音楽なので日常会話のようにテーマだけもらって音を使って話すんですが、楽譜で音が与えられている状態のクラシックを演奏することの楽しさや深さを発見して、ハマってしまったんです。どうやったらこの楽しさを、もっと一般の人たちに伝えられるのかなという想いが常にあります。Jポップだろうがジャズだろうが、お客さんが幸せにならないと意味がないと思うんです。でもそのためには演者が楽しんでないと。僕たちの奏でる音楽という言語を感じて感情を共有する2時間の運命共同体みたいなものですから」。

今回ゲストとして参加してくれるトロンボーン奏者・中川英二郎氏と、バッハについては「バッハの作品は譜面を逆から弾いても、ひっくり返して弾いても音楽になるので一音ずらしたらその後のつじつまが合わなくなってしまう。でも今回、超絶技法のトロンボーン奏者の中川君と一緒にバッハの楽譜に問いかけながら、僕らの色に変えられるのか、それともクラシックのままお客様に提出するのか、それはこれからのテーマになります」とワクワクした表情で語る小曽根さんは、続けて「“怖いところに行く”が僕のモットー。ジャズはアドリブといえども会話と同じで、同じ内容を繰り返し話すと流暢になる。それが実はとても危険で、演者のワクワク感の有無はお客さんも敏感に感じるものなので、どんなに慣れても段取らない演奏を心がけてます」と話す。

 

ジャズとクラシックの垣根を超えることで伝えたいことを問うと「クラシックは今の時代だからクラシックになっただけで、モーツァルトがいた時代は彼の音楽はポップスだったんです。僕がジャンルというボーダーを越えていくことで、1人でも多くの方にハッピーになってもらう音楽ができれば、そこに意味があるのかなと考えています」。

 

しかしコンサート“魔物が住んでいる”という。「コンサートを“ライヴ”というように、どんなに練習をしてもミスタッチをすることもあれば、静かな独奏のタイミングに限って客席から思いがけない音が出ることもある。「あ〜今その音が鳴るか!」みたいな(笑)。でもそんな空気感も含めて楽しんで欲しいです。素晴らしい演奏には素晴らしい受信機が必要。この世のものとは思えない良い音楽をやっても、それを良いと思ってくれる受信機がないと成立しない。料理だって最高のものを作ったってうまいと思ってくれる人がいないと意味がないのと同じですよ。だから皆さんの力が必要なんです。」

 

「世界の小曽根」と言われていても、常に怖いところに向かってチャレンジする、それは自分が楽しむ為、そしてお客様にその“JOY”を感じてもらう為という、ライフワークの大半を占めるコンサートにかける想いが伝わってきた会見は気づけば1時間を超えていたが、まるで楽しい演奏会のようにあっという間の時間だった。

クラシック、そしてジャズと両方の小曽根ワールドを一度に楽しめる今回の公演、是非足を運んでみて欲しい。

今回ポスターに使用している篠山紀信さん撮影の写真と同じポーズに応えてくれるお茶目な小曽根さん。

小曽根真ピアノソロ ”クラシック×ジャズ”

日時 2018年11月29日(木)19:00
会場 福岡シンフォニーホール
料金 前売り S席6500円(残席僅か)、A席5000円、学生(Aエリア)2000円※学生券はアクロス福岡、ヨランダオフィスのみで対応
チケットぴあ(Pコード:114-172)、ローソンチケット(Lコード:82551)、ヨランダオフィスチケットセンター
問合せ ヨランダオフィス(10:00〜18:00):0570-033-337(ナビダイヤル)、092-406-1771

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