〈MOVIE〉『美しい星』吉田大八監督&リリー・フランキーの漫談会見

 

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吉田大八監督『美しい星』公開にあたり、監督はお忙しいのでプロモーションの為の来福はないだろう、と宣伝担当には言われていた。『桐島、部活やめるってよ』『パーマネント野ばら』『紙の月』と、原作モノを映像に転化することに長けていて、尊敬する監督さんなので、ちょっとがっかりしたけれど、舞台「クヒオ大佐の妻」の演出をしているということだったので、仕方ない…と思っていたら!「来ますよ、福岡に。主演のリリーさんと一緒に!」というニュースに喜びは二倍。

リリー・フランキーさんも不思議な魅力にあふれている人だ。イラストレーター、小説家、俳優、音楽。どんなことでも力まず飄々とやっているようで、でもどれもすごい。『凶悪』(’13)の怪演も鳥肌モノだし、『そして父になる』(’13)も自然すぎて演技に見えない。『SCOOP!』(’16)なんて、ヤク中の演技が真に迫りすぎていた。

舞台挨拶にベレー帽をかぶって登壇したリリーさんは「2人並ぶと藤子不二雄って言われたのでメガネを外してきました。メガネかけてると今度、オレ手塚治虫になっちゃうから(笑)」と場内を沸かせ、「これから先舞台挨拶をする機会があるかどうか…。もしかしたら最後の舞台挨拶かもしれないから、もうちょっとしゃべりたいな」と子どものように無邪気に司会者を困らせる。不敵な53歳。これはモテるはずだ。

今回、舞台挨拶でも記者に囲まれての取材でもまるで漫談のように、息が合うお2人。聞けば同い年なんだとか。

舞台挨拶でもなぜか同じポーズの2人

監督:大学時代に原作を読んで、映画化したいとずっと思っていて、機会があれば「やりたい」って言い続けていたけれど、三島さんの原作はハードルが高いのか、なかなか前に進まなかったんです。

リリー:獣医学科を作るのと同じくらい大変だったんじゃないかと。

監督:エラい人と友だちじゃなかったから(笑)。今回、いろんなご縁が味方してくれて、前に進めそう!ってなった時に、気づけば自分が原作の主人公の重一郎と同じ52歳になっていました。そして前から仕事をしたいと思っていたリリーさんを誘ってみたら、これまた偶然同い年という、不思議な巡り合わせでしたね。

リリー:ジョニー・デップも同い年。ブラッド・ピットもタメですよ。マイケル・ジョーダンは学年1コ下だけど。

ー今回、舞台を現代に移して映画を作っていますが。

監督:当時とは世界を巡る情勢も、家族そのもの形もだいぶ違う。地球の未来を扱うという意味ではSFであり、同時に家族の話でもあるので、現代の観客にリアリティをもって観てほしかったんです。

ーリリーさんが演じる重一郎は、お天気キャスターでお父さんで、火星人という役。役作り…って?

リリー:お天気キャスターとしてはTBSの森田さんのスタジオに見学に行ったり、実際に読み方を教えてもらったりしましたけど。火星人の役作りはどうしていいかわかりませんから、こればっかりは役作りしようがない。だけど普通に仕事している家庭人というのは、オレにとっては火星人より遠い存在(笑)。火星のクレーターの映像を観ながら故郷を思い出して泣けって監督に言われて。さすがにそこでオレ泣いたら情緒不安定じゃないですか。だからここで泣ける自信がないからって、メイクさんに目薬を用意してもらってたら、監督がツカツカツカとやってきて、「目薬で泣くんだったら泣かないでください。ちゃんと火星を見ながら自分の涙で泣いてください」って。そこはトム・ハンクスでも泣けないと思うよ!でもふりしぼって泣かないと撮影終わらないと思ったから泣いたよ!

監督:現場では無理をお願いしてたんだなって、今こうやって一緒に取材を受けているとわかりますね(笑)。

リリー:監督はカメラを回していても映像の全部は使わなくて、わかりやすいところほどカットしてる。あ、UFOを見たんだなっていう表情とか。お客さんに気付きの階段を撮ってはいるんだけれど、最後に平地(ひらち)にしてる(笑)。

監督:そこはちゃんと、編集しながらバランスを見るわけですよ。

リリー:でもその分だけテンポが良くなってるんですよね。説明してるところが少ないから。

監督:わからないところで立ち止まらないで、最後まで音楽を楽しむように観てもらえたらいいなって思います。

リリー:監督の演出は指揮者っぽいですね。語尾の上げ方とか、音を全体で一音下げるとか、まるで調律しながら演出している感じ。その時はすごくこまかいなって思ってたけど、試写で観て、ああ、こういうことか!って。

監督:リリーさんも、亀梨くんも、音楽をやる人だから、「理詰めの感情はおいといて、もう少し、最後のひと文字だけ強く言ってほしい」って話が通じるので、今回はラッキーでした。

リリー:蔵之介さんには、「今のセリフはちょっとネイティブすぎる」とか「宇宙人すぎる」とか。意味不明の言葉ですもん(笑)。

監督:映画が好きになる前に音楽を好きになったから、映画ファンだという自覚はなくて、どちらかというと音楽ファンで。だから、音楽を感じる映画が好きです。別に音楽をたくさん使ってる、とかじゃなくて、たとえば『ストレンジャー・ザン・パラダイス』とか、ああいう映画にあこがれますね。

リリー:三島由紀夫の原作でってなってくると、若い方には難しい話じゃないか?って思われるかもしれないけど、ご覧になってもらったらわかるけど、相当ポップな映画だし。この映画なんかカッコイイと思ってもらえるといいな。でも三島自身がそいういう人だと、再認識してもらえるといいですね。ありがたいことに、ファンが増えていっているんですよ。

監督:何かしら感じていただけた人が口コミで広げてくれているのでは。

リリー:これは監督の『桐島』パターンなんです。

監督:『桐島』も公開後に、少しずつ観た人の熱が広がっていって、結果ロングラン上映になったので、『美しい星』もそうなればいいなって思います。

リリー:珍しい日本映画ができたなって実感があります。若い時にこういう映画を観て映画って面白いなって思ってそこから映画が好きになったので、自分が生きている間になかなかない映画をよく作ってくださった、と思います。

T・ジョイ博多のスタッフ手作りのポップの前で、UFOを呼ぶポーズ!

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